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8月その他Ⅱ [美術]

8月は展覧会もけっこう行ったけど、記事にする時間がなく。

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吉田博展
昨年、千葉で見たがやっと東京に巡回してきたので再見。やっぱり好きだわ、この人の作品。

ベルギー奇想の系譜
Bunkamuraザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/17_belgium/
ボスやブリューゲルから、20世紀のマルグリッドまで。
前半のボス、ブリューゲルとその後継者の当たりは、ちょっと前に見たブリューゲル展と重なる部分も多く、流してしまった。面白かったのは後半19世紀末以降の、クノップフからアンソール、マルグリッドなどの方。
それにしてもどうしてベルギー地方でこういう画家が輩出されたのか、不思議。

沢田教一写真展
ベトナムなどの戦場写真家として知られ、カンボジアで襲撃されなくなった沢田教一。ピューリッツァー賞受賞の写真や、若い頃の故郷青森で撮った写真など。
アメリカ兵にもベトナム市民(兵)にも公平な眼差しを送った沢田の写真は半世紀を経てなお胸に迫る。

深澤直人がデザインする生活の周囲展
https://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/17/170708/
パナソニック汐留ミュージアム
深澤直人の名前は知らなくても、作品を見れば、あ、これ知ってる。と思うものがいっぱい。
家電、家具、食器、照明器具。。。生活を彩るスマートで出しゃばらないデザインが素敵。
こういうのばっかり家にあったら良いだろうなあ。。。


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8月その他 [舞台]

もう9月に入ってしまって、書き切れなかった8月の観劇記録。

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8月11日(金)
音の会
国立劇場の歌舞伎音楽既成者研修発表会だが、目当ては最後の吉野山。梅乃さんの静と蔦之助さんの忠信。竹本だけの伴奏で、振りも見慣れたものと少し違ったような。

8月21日(月)
歌舞伎座納涼歌舞伎第三部
野田秀樹 作・演出
  野田版 桜の森の満開の下(さくらのもりのまんかいのした)

感想がまとまらず、書けなかった。
所々にぶっ込まれてる歌舞伎要素(勘九郎の毛振り(毛ないけど)とか、耳男と夜長姫が花道を走って入る時、二人の位置がくるっと変わって夜長姫が先に立つとこは曽根崎心中のパロだよなとか)がツボで、普通の歌舞伎公演で二人のこれらが見たいなあ。

勘九郎と猿弥の文字通り体を張った演技が凄い。特にほとんど出ずっぱりの兄。流され振り回され自分を見失う中での最後の覚醒。そして七之助は無邪気な童女のような笑みから鬼女の凄味まで、表情も声色も幅広く見せて圧倒的。二人に圧されてやや影の薄い染五郎は損したかも。

普段野田の芝居を見ないのでこれがどういう位置づけの演目なのかわからない。これを歌舞伎でやる意義も正直言ってわからない。題材的には歌舞伎向きなのかもしれないけど、それならもっと歌舞伎らしい演出というのもあっても良いのでは、と言う気もしないではない。でもそうしないのが野田流なんだろう。

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8月28日(月)
研の會

一、神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)

娘お舟:尾上右近
新田義峯:尾上松也
傾城うてな:市川蔦之助
下男六蔵:澤村國矢
渡し守頓兵衛:片岡市蔵

二、上 羽根の禿(はねのかむろ) 
        禿梅野:尾上右近
  下 供奴(ともやっこ)
        奴菊平:尾上右近

尾上右近の自主公演、三回目。
カテコで「悔しさ一杯」と言うとおり、三回目にしていちばん壁に当たってる感じはした。というか意外に難しい役であり踊りだったな、と見えた。特に踊り。技術は素晴らしい。でも大真面目にやられると見る方は楽しくない。とはいえ、真摯に取り組む姿は清々しい。来年も楽しみだ。

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8月31日(木)
松竹大歌舞伎 巡業西コース

猩々は梅花の酒売りが品があって綺麗。巡業とは言えこういう役で梅花さんを見られるのが嬉しい。猩々は松緑と橋之助。ゆったりとした動きが美しい松緑とキビキビした橋之助の対比が楽しい。

芝翫型の熊谷も回を重ねてすっかり自分のものにした様子。単に珍しい型だからやるではなく、自分に合った型になったのだろう。相変わらずの熱演型なのはおいといて。梅玉の義経がさすがに気品と貫禄で魅せた。
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ボストン美術館の至宝展 [美術]

東京都美術館
http://boston2017-18.jp/

一応章立てとして、古代エジプト、中国、日本、フランス、アメリカ、現代、、、などとなっているのだが、エジプトがあってギリシャやローマがない、とか、フランスといっても19世紀以降ばっかりとか、なんか妙に偏ってるな、と思ったら、作品を寄贈したコレクターごとの特集なのだという。こういう切り口は初めて聞いた。ふうん、なるほど。とはいえ、こちらはコレクターになぞ興味がないので、その辺の説明はさっと流す。

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陳容
《九龍図巻》(部分)
中国美術から。巻物なのでそんなに大きくはないのにこのド迫力。この正面向いた顔、珍しい。
この展覧会でいちばん気に入った作品。

日本画のコーナーでは、曾我蕭白や、酒井抱一、喜多川歌麿など。
英一蝶の巨大な涅槃図が目玉。

フランス絵画は19世紀。ゴッホやモネ、セザンヌなど印象派、ポスト印象派が中心。

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最大の売りはゴッホの「ルーラン夫妻」が揃って出品されていること。
背景も違うし、最初から対になった作品ではなさそう。ルーラン夫人の背景がゴッホらしくて素敵。

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ジャン=フランソワ・ミレー
《編み物の稽古》
貧しいけれど温かな母子の情景。ミレーが農民に注ぐ眼差しが優しい、大好きな一枚。

もちろんご当地アメリカ絵画のコーナーも。オキーフ以外はあまり知らない名前が多かった。
むしろその後の版画、写真のコーナーでホーマー、ホッパー、アンセル・アダムスらが並んでいた。

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エドワード・ホッパー
《機関車》

最後は現代作品。ウォーホール、ホックニーは当然として、並んで村上隆もあった。

ボストン美術館ほどの規模のコレクションから選ぶのだからどれを持ってくるかも決めるのは大変だろう。見る方も、あれが見たかったとか、またこれかとか、贅沢を言い出したらきりがない。
十分に素晴らしい作品が並んでいる。日本で見られるんだからありがたいと思わなくっちゃ。



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藝「大」コレクション パンドラの箱が開いた! [美術]

東京藝大美術館
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2017/collection17/index.html#top

藝大創立130周年記念の展覧会だとか。藝大が所有する美術品、卒業生や教授らの作品などを集めた、「大」コレクション。

第一部は名品として資料として集められた古美術が並ぶ。古くは奈良時代の仏像から江戸時代の絵画まで。

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尾形光琳 槇楓図屏風
よく見ると不思議な絵。一本だけ真っ直ぐな槇。構図的に均整が取れてなくてバラバラな感じもするけど、でも綺麗。(色がクリスマスっぽいとか思ってしまって、なんかすいません)

近代編では明治から昭和にかけての作品が並ぶ。
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高橋由一 鮭
明治の洋画といえば真っ先に頭に浮かぶ一枚。ただし由一は藝大卒でも教えたこともなく、芸大とは縁がないそうだが、それでも明治の油絵の代表作としてここに展示とのことだった。

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小倉遊亀 径
これは前にもどこかで見たな。なんてことない光景だけど、見ているとうきうきしてくる。お母さんと子供、それに犬も歩調を合わせて行進しているような。

第二部はテーマ編としていくつかの特集展示。
ここには比較的新しい卒業生の作品などもあったが、やはり惹かれるのは昔のものの方なのは申し訳ないが仕方ない。

平櫛田中の作品もいくつかまとめて展示。

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平櫛田中 活人箭
明治41年にはじめ石膏で作ったものを昭和37年木彫で再制作したものだそう。凄い迫力。
どの作品だったか、下の台に「芸大がくれというからやる」みたいなことが書いてあって、面白い人だなあ。

卒業制作のコーナーでは、横山大観、山口蓬春、高山辰雄と言ったそうそうたる名前が並んで壮観。

また、現代作家の若き日の自画像では、千住博、村上隆、山口晃など現代の売れっ子作家の自画像がずらりと並んで楽しい。千住博の人物画なんて初めて見たし。

その他、岡倉天心や藤田嗣治に関する写真や資料などもあったり、まさに藝大の歩みを展示する展覧会。
まあ、そういうことに興味がなくても、コレクションの名品だけでも見に行く価値十分にあり。
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佳人礼讃展 [美術]

ホテルオークラ
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毎年夏にホテルオークラで開かれるチャリティー展覧会。今年のテーマは「佳人礼讃」。古今東西の女性を描いた絵を集めて展示。

第一章は肖像画。
と言っても、特に有名な人をモデルにした絵ばかりではない。モディリアーニ、キスリングなどの個性的な美女も並ぶ。
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岡田三郎助《支那絹の前》
画家の妻をモデルにした作品。着物も豪華。この着物と、背景の裂も高島屋資料館に保存されているというのも驚き。

第二章は美人画。
佳人というんだから当然美人画が中心。チラシは松園の「うつろふ春」。
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上村松園《三美人之図》
三人といっても三人目はほとんど見えないんだけど。姉妹なのか綺麗に着飾った女性達が優美。三つの傘が画面に動きを出して面白い。

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鏑木清方《さじき》(1945)
これ、歌舞伎座所有の絵なんですよね。以前公演の筋書きの表紙にもなってた。桟敷席で感激する母子。うきうきした様子が伝わってくる。

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伊東深水《楽屋》(1959)
同じ劇場が舞台でもこちらは出演者の方。女優なのか芸者なのか。玄人らしい艶な雰囲気が。

第三章は人物画の魅力。
いや、ここまでだって人物画なんだけど。と思わないでもなかったけど、物語性のある絵というくくりのような。
挿絵ではないが清方の「金色夜叉」や「雨月物語」などが並んで面白い。
このコーナーは西洋画も多かった。シャガールとかローランサンとかの夢の中の物語のような絵。

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ミレイ「聖テレジアの少女時代」(1893)
佳人というには幼い少女だが弟を連れて荒野に行こうとする聖女テレジア。ラファエル前派らしい繊細な描写が美しい。

ここでは多田北鳥による昭和20年代のキリンビールのポスター数点もあり、面白かった。

この展覧会、会期がいつも短くて油断してると行き損なう。今年ももう終わっちゃった。あまり宣伝してないのかな、いつ行っても空いててゆっくり見られるのは良いけど、もったいない気も。
図録的な冊子がたったの300円とか、太っ腹すぎる展覧会です。
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不染鉄展 [美術]

東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201707_fusentetsu.html

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不染鉄(ふせん てつ)(1891年 - 1976年)。初めて聞いた名前。没後40年記念の展覧会だが、回顧展は21年前の一回きりで幻の画家と言われているらしい。と言うのも中央画壇から離れて活動していたからだとか。経歴もかなり変わっていて、20代の初め写生旅行に行った伊豆大島に住み着いて3年漁師をしたかと思うと、戻ってから京都絵専(現・芸大)に入学、帝展に入選するなど才能を高く評価されながら、戦後は奈良に住み着いて校長先生をやっていたそう。
「芸術はすべて心である。芸術修行とは心をみがく事である」とし、「いヽ人になりたい」と願ったという。
なんだかちょっと仙人のような人柄を想像してしまう。

初期の画風は、文人画のような南画のような、暖かみのある風景画が多い。
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《林間》大正8(1919)年頃
これは彩色だけど、水墨画にいい味わいの絵がたくさんあった。
また絵日記風の絵巻には字がびっしり書き込まれ、その文章もまた飄々として面白い。
絵の中の家々にはほとんどが人が描かれて生活が匂う。その眼差しが温かい。

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《山海図絵(伊豆の追憶)》大正14(1925)年
鉄の代表作とみなされる一枚。よく見ると遠近感とか比率がおかしい。手前に伊豆の海、富士を越して遙か日本海まで描かれるという奇抜さ。だが細部はあくまで写実。奇想と言うべきか。

1952年に校長の職を辞した後は画業に専念。この時代には、漁師をしていた頃への郷愁か、海の絵をたくさん描いているという。

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《南海之図》昭和30(1955)年頃
海の絵と言ってもそんじょそこらの海とは違う。一体どういう視点から描いているのか。まるで爆発しているような島に押し寄せる果てしない波。見ていると海の底に引きずり込まれそうな感覚になる。

晩年は奈良の景色や、日常や思い出を絵と文で綴った絵はがきも多く描いた。ほっこりとするユーモアと、ひたすら芸術を追究する純粋な人柄が重なり合う。

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《落葉浄土》 昭和49(1974)
田舎びた風景の中に立つ寺。よく見ると中にも外にも仏像が小さくもしっかり描き込まれて、周りの人家とともにひっそりと、しかし山村の暮らしに溶け込んだ信仰が見えるよう。

好みから言うと、若い頃の山水画がいちばん好きだったけど、他の絵もとてもインパクトが強くて、しかしどこか清々しさも感じる。こんな画家がいたんだ、と驚き。
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色絵の器展 [美術]

日本民藝館
http://www.mingeikan.or.jp/events/
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実は初めて訪問した日本民藝館。
今回の展覧会は、館所蔵の器から、天啓赤絵・呉州赤絵・古伊万里赤絵と、中国、日本の色絵を見せてくれる。

色絵はどれを見ても楽しい。形より柄がどれも凝っていて豪華なものも、素朴なものもそれぞれに工夫があって見飽きない。

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色絵丸文繋鉢〔天啓赤絵〕  明時代 17世紀前半
あら、可愛い。と思わず声が出そうに。今でもこんな絵付けの器ありそう。

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色絵赤玉花卉鳳凰文皿〔呉州赤絵〕  明時代 17世紀前半 径37.8㎝
呉須赤絵ってもっと地味な印象があったけどこれは華やか。祝い事の席などで使えそう。

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色絵蓮池翡翠文皿 伊万里 江戸時代 17世紀中葉 径36.4㎝
色合いは九谷っぽいかと思ったけど伊万里なのね。

よくある器展だと、名人の手になる絢爛豪華な絵付けや、青磁の洗練された器が並んだりするが、民藝館だからか、なんとなく普段使いされていたような、それでいて絵付けの美しい器が並んでいて、こんなのほしいなあ、と思うものがいっぱいあった。

また、併設展示として、河井寛次郎や濱田庄司ら民芸運動にかかわった作家の絵付け作品もあった。
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赤絵黍文角扁壺 濱田庄司 1938年 高15.0cm

面白かったのは、棟方志功や芹沢銈介のような陶芸家ではない作家のものがあったこと。絵付けだけをしたのだろうが、どれも志功らしい、銈介らしい色柄で楽しい。

他にも朝鮮の染付などもあり、器好きにはたまらない展覧会。
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杉本文楽 女殺油地獄 [舞台]

8月11日(金) 世田谷パブリックシアター

数年前に「曽根崎心中」を取り上げた杉本博司による文楽。第二弾として「女殺油地獄」を上演した。
と言っても、野崎参りの段も河内屋の段もなく、豊島屋の段だけ。それがわかった時点で既に期待薄だったのだが。

冒頭に近松門左衛門の人形を出し、そこまでのあらすじなどを語らせる。と言ってもナレーターは太夫ではなく杉本本人だったらしい。まずそこでのこの話の解釈に疑問がある。与兵衛がお吉を殺すのは、自分を好いてくれていると思っていたのに裏切られたから、みたいなことを言っていて、呆れた。そんなの聞いたことないわ。まあ杉本がそう思うのは勝手だけど。近松を出すのも三谷文楽のパクりみたい。

その後、まず「序曲」として三味線の清治による独奏。清治が作曲したという新曲は現代音楽のようなモダン・ジャズのようなフラメンコ・ギターのような気さえする、ちょっと不思議な不協和音を感じさせる曲。その後の展開を予感させる。

次に「豊島屋内」の前半、お吉と与平衛の両親のくだりは素浄瑠璃。期待した千歳太夫と藤蔵だったが、残念なことに千歳が不調で声が出ていない。字幕もないので、初めてこの演目を見る人にはわけがわからなかったのでは。
後半、与兵衛が訪ねてくるところからやっと人形が登場。前回同様、手摺りがないので特に足遣いは大変。普通の公演と違い照明がスポットライト的に当たるので、人形の顔に影ができて凄絶さは感じられる。だが手摺りがないせいか、舞台が狭いせいか、殺しの場面での立ち回りが小さく見える。油でつーーーっと滑っていく感じも今ひとつ迫力がない。チラシではこの場面の「殺しにこだわった」とのことだが、どこが?と思ってしまった。普段の公演の方がよっぽど恐ろしくて凄惨だと思う。観る前は、ひょっとして歌舞伎みたいに油まみれにしたりするのかしら、なんて思ったがもちろんそれもなし。

床は、与兵衛を呂勢と清治、お吉を靖と清志郎で分け、曲はここも清治の新曲。序曲同様不思議な響きだが、さすがに聞かせる。でも太夫は語りにくそうな気がしたがどうだろう。
熱演の呂勢と安定の靖、三味線の二人はもちろん熱のこもった演奏で、特に清治は自作とあってあくまで表情はいつものようにクールだがしびれる演奏。

だが、前回の曽根崎心中では、映像を使ったり、本物の仏像を出したり、と杉本の演出がわかりやすかったが、今回は冒頭に近松を出したのと清治の新曲以外目につくものがなかった。後で聞けば、序曲を弾く清治の後ろにあった金屏風や、豊島屋のセットにあった樽が本物の骨董品らしいが、それが見せたかったのだろうか。
これで正味80分の公演でチケット代が9000円。
まあ結局この杉本文楽って、前もそう思ったけど、杉本のアートに関心がある人が見に来るもので、文楽ファンが聞きに来るものじゃないんだね。

人形も床も技芸員のみなさんは真摯に一生懸命やっておられただけに、なんだかいろいろ残念な気持ちだけが残った。

しかし清治さんがこんなイベントに手を貸しておられるのを見ると、普段の公演で切場を弾けないので欲求不満がたまってるんではないかと勘ぐってしまう。本公演でももっと良い場面で弾かせてほしい。

【口上】
◎人形役割
(近松門左衛門)吉田玉佳

【序曲】
◎三味線
鶴澤清治、鶴澤清志郎、鶴澤清馗

【下之巻・豊島屋】
≪前≫
◎太夫・三味線
竹本千歳太夫・鶴澤藤蔵

≪奥≫
◎太夫・三味線
(河内屋与兵衛)豊竹呂勢太夫・鶴澤清治
(女房お吉)豊竹靖太夫・鶴澤清志郎

◎人形役割
(河内屋与兵衛)吉田幸助
(女房お吉) 吉田一輔

◎囃子:望月太明藏社中

◎人形部:※以下、五十音順
桐竹紋臣 吉田玉翔 吉田玉勢 吉田玉延
吉田玉彦 吉田玉路 吉田玉誉 吉田簑悠


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八月納涼歌舞伎第二部 [舞台]

歌舞伎座

一、修禅寺物語(しゅぜんじものがたり)
夜叉王   彌十郎
姉娘桂   猿之助
源頼家   勘九郎
春彦    巳之助
妹娘楓   新悟
下田五郎   萬太郎
金窪兵衛   片岡亀蔵
修禅寺の僧   秀調

彌十郎の父と兄の追善狂言。
苦手な新歌舞伎の中でも特に嫌いな作品。誰がやっても面白いと思えないんだよな。
彌十郎の夜叉王は仕事に誠実な人と言う様子で、もっと気難しさや芸一筋の一徹さが見えると良いなあ、と思う。
猿之助の姉娘、気位が高く上昇志向の可愛げのなさがぴったり。
勘九郎の頼家に孤独な将軍の哀愁と気品がある。「頼朝の死」の頼家をやったらどうだろう、とふと思った。

新悟の妹娘が気立ての良い、姉と対照的な優しげな様子。
巳之助の春彦も真面目で実直な青年。似合いの夫婦。
萬太郎の五郎が武士らしい颯爽とした様子。

しかしこの演目、ずっと舞台が暗いし話も重いしで、睡魔と激闘。


東海道中膝栗毛
二、歌舞伎座捕物帖(こびきちょうなぞときばなし)
弥次郎兵衛 宙乗り相勤め申し候
喜 多 八   

弥次郎兵衛   染五郎
大道具伊兵衛   勘九郎
女医羽笠     七之助
座元釜桐座衛門    中車
天照大神又は町娘お笑   笑也
瀬之川伊之助   巳之助
中山新五郎    新悟
玩具の左七   廣太郎
芳沢綾人   隼人
女房お蝶   児太郎
舞台番虎吉   虎之介
伊之助妹お園   千之助
伊月梵太郎    金太郎
五代政之助    團子
瀬之川亀松    鶴松
芳沢小歌     弘太郎
瀬之川如燕    寿猿
芳沢菖之助     宗之助
芳沢琴五衛門    錦吾
若竹緑左衛門      笑三郎
同心古原仁三郎    猿弥
同心戸板雅楽之助   片岡亀蔵
鷲鼻少掾     門之助
関為三郎   竹三郎
喜多八   猿之助 

去年に続いての染猿の弥次喜多もの。でも今回は舞台は歌舞伎座。大道具として働く二人が歌舞伎座で起きた殺人事件の謎解きに一役買う、いわばバックステージもの。
と言うわけで去年のように旅もしないし、ましてやラスベガスの外人も出てこないので、破壊力は去年ほどではない。言い換えれば、歌舞伎味は濃かった。
幕開きに、去年の舞台をダイジェスト映像で見せるので、去年見ていない人にも入りやすい。と言っても、見てなくてもどうってことないけど。
ストーリーを言っても仕方ないので省くが、劇中劇で四の切が上演される。そこで忠信を演じるのが巳之助。これがキビキビしてなかなか良かった。近いうちに本公演でも、と期待。

びっくりが静を竹三郎が。劇中でも50年ぶりとかいじられていたが、なんのなんのお綺麗なこと。いや、驚いた。
寿猿との長老コンビが笑わせる達者ぶり。

金太郎と團子が今年も大人びた子供のコンビで場をさらう。
門之助と笑三郎が竹本のコンビに扮し、口パクかと思ったらちゃんと演奏していたのでこれもびっくり。役者って偉い。
猿弥の”古原仁三郎”がいかにもパロディで笑わせる。
中車の座元もキンキラの衣装で、今やすっかり有名になった昆虫博士の面を披露する場も。ここでは顔芸もたっぷり。
出色が児太郎のお蝶。わがまま女房の身勝手さ可笑しさをオーバー気味に。わ~お父さんの血だわ~!

他もいちいち上げてたらきりがない。多くの役者にそれぞれ役と台詞を割り振った作者の努力には頭が下がるが言い換えればそれで終わってるという気もする。

劇中、四の切の仕掛けを解剖して見せる下りがあって、へええ、こんな風になってるのかあ、と感心しきり。いや、でもこんなのお客に見せて良いの、と思っちゃったけど。

結末部分が二通りあり、お客の拍手でどちらか選ぶという趣向。私が見た日はAだった。両方覚える役者は大変。

染五郎と猿之助は狂言回し的な役回りでちょっと損してたような。でも幕開きと幕切れ二回の宙乗りの大サービス。ご苦労様。


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八月納涼歌舞伎第一部 [舞台]

歌舞伎座

8月は恒例の三部制。まず第一、二部を見てきた。

一、刺青奇偶(いれずみちょうはん)
半太郎    中車
お仲    七之助
赤っぱの猪太郎   亀鶴
従弟太郎吉    萬太郎
半太郎母おさく    梅花
半太郎父喜兵衛   錦吾
荒木田の熊介    猿弥
鮫の政五郎    染五郎

配役を見た時は、え、中車と七之助?勘九郎と七じゃなくて?と意外だった.今まで組んだこともなかったと思うし。
だが蓋を開けてみれば想像以上にしっくりきて良いコンビ。
まず中車が良い。博打好きだが根は真っ直ぐな男の影のある様子と、お仲への一途な思いがストレートに伝わる。少なくともこうした新歌舞伎ではもう立派な歌舞伎役者と言って良いと思う。大詰めの政五郎へのお仲を思う台詞が胸に響いてぼろ泣き。

七之助は玉三郎写しが濃すぎて、いや良い芝居なんだけど、玉様の影がつきまとう感じがなんだかなあ。後半にはもっと七の個性が出るだろうか。でも前半のやけっぱちな女が半太郎に救われて、生まれ変わったようになり、ひたすら半太郎を思う女のいじらしさと優しさ哀れさが胸を打つ。

染五郎は残念ながら大親分と言うには貫禄不足。
猿弥の熊介が三枚目敵のような味でコミカルさもあって笑わせる。

前に観たときは記憶に残らなかった半太郎の両親とのすれ違いが悲しい。でもきっと半太郎が最後の勝負に勝てたのは、両親が祈ったお地蔵さんの盃のおかげでは、と思えてまた泣けた。


二、 上 玉兎(たまうさぎ)
    下 団子売(だんごうり)
〈玉兎〉
玉兎    勘太郎
〈団子売〉
お福    猿之助
杵造    勘九郎

小1になったばかりの勘太郎が一人で踊る。それだけでも驚きだが、ちゃんと体を使って音楽に乗って踊ってみせる。ただ可愛いだけでなくしっかり踊れていることに感動。おばちゃん、泣けるわ。

団子売りは踊りの名手二人が揃って悪かろうはずがない。粋な勘九郎、あだで可愛い猿之助。二人が軽妙に息もぴったりに踊る楽しさときたら。はあ、眼福。短すぎて不満。もっともっと二人の踊りが見たい。

しかし玉兎から団子売への流れって、勘太郎ちゃんがついたお餅を勘猿が売ってるのね~wwとなった。


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