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七月大歌舞伎夜の部 [舞台]

歌舞伎座

先月夫人が亡くなった海老蔵が座頭、その上長男の勸玄君も出るとあってチケットは早々に売り切れ。
夜の部は復活と言うより事実上の新作の通し。

通し狂言 駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)

日本駄右衛門・玉島幸兵衛・秋葉大権現 = 市川海老蔵(11代目)
月本円秋 = 市川右團次(3代目)
月本祐明 = 市川男女蔵(6代目)
奴浪平 = 中村亀鶴(2代目)
月本始之助 = 坂東巳之助(2代目)
傾城花月 = 坂東新悟(初代)
寺小姓采女 = 大谷廣松(2代目)
奴のお才・三津姫 = 中村児太郎(6代目)
白狐 = 堀越勸玄
駄右衛門子分早飛 = 市川弘太郎(初代)
長六 = 市川九團次(4代目)
逸当妻松ヶ枝 = 市川笑三郎(3代目)
馬淵十太夫 = 片岡市蔵(6代目)
東山義政 = 市川齊入(2代目)
玉島逸当・細川勝元 = 市川中車(9代目)

白浪五人男にも出てくる大盗賊の日本駄右衛門とお家騒動を絡めた話。駄右衛門が主人公と言うから、義賊なのかと思っていたらそうではなくてほんとの悪人だったのが意外といえば意外。
正月の国立の復活狂言をパワーとスピードをアップして、一段品は落としたといった感じ。サービス精神はたっぷりで、忠臣蔵四段目や落人、伊勢音頭などの場面のパロディらしきものが次々に出てきてまずまず楽しめる。でも普段歌舞伎見てない人はどうかね。

海老蔵は早替わりも含め三役(事実上四役)の大車輪。いつもながら悪人ではふてぶてしさとドスのきいた様子で存在感たっぷりだが、善人側の幸兵衛では例によって所在なげというか影が薄くなるのはどうしてなんだろうね。
途中では勸玄君を抱いての宙乗り。カンカン、怖がるどころか両手振り振りまでして余裕の大物ぶりで客席はこの時がいちばん沸いていた。

児太郎が抜擢とも言える重要な役をしっかりこなす。駄右衛門の一味で、でも元は幸兵衛の女で、幸兵衛のために金を稼ごうとしていたという複雑な役を、側室に化けたり、茶屋の女将かつ傾城の姿だったり、様子を変えながら最後は幸兵衛に尽くして死んでいく純粋さが良い。悪婆っぽいところなどお父さんを思い起こさせてなかなかのもの。いやあ、よく頑張ってる。

ただ、お才の死に際の場面での海老蔵の台詞には、プライベートとかぶって、聞いてる方もつらい気持ちになってしまった。もちろん本は奥さんが亡くなる前にできあがっていたんだろうけど。。。

右團次が貫禄あるお殿様で、忠臣蔵四段目の判官のもどきも見せる。
中車が忠臣逸当と勝元で裁き役。テレビでの顔芸は封印してすっかり地に足がついた歌舞伎役者ぶり。もっとも後半の逸当のゾンビ(!)ではさすがの怪演。ただ、青隈がのらないんだなあ。
巳之助と新悟が若殿と恋人で初々しいカップルぶり。落人もどきで一場面踊るのもうれしい。
他の役者もちょっとずつ見せ場をもらって、その辺が新作、作者の苦心もうかがえる。
もうちょっと整理した方がとは思うがまあ娯楽作品としては悪い出来ではない。もちろん突っ込みどころも満載だが。
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タイ展 [美術]

東京国立博物館
http://www.nikkei-events.jp/art/thailand/index.html
日タイ修好130周年記念 特別展「タイ〜仏の国の輝き〜」

古くは7世紀頃からの仏教美術を中心とした展覧会。
タイの歴史を絡めながらの展示だが、いかんせん聞き慣れない地名や王国名が並ぶのであまり頭に入ってこず、その辺は素通りに。
前に行ったアンコールワットもそうだが、あのあたりはインド文化の影響も強く、仏教だけでなくインド神教やヒンズー教の影響も入っている。
また大乗仏教が主流である日本と違い、タイでは上座仏教が主流で、仏像にもそこが反映されているとか。

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アルダナーリーシュヴァラ坐像
ウボンラーチャターニー県
プレ・アンコール時代 8 ~ 9世紀初
ヒンドゥー教の男神シヴァとその妃パールヴァティーが半身ずつ組み合わされて一体になったもの。カンボジアのクメール文化の影響が見られるという。唇の厚い顔もクメール族の特徴の一つ。

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ナーガ上の仏陀坐像
スラートターニー県チャイヤー郡ワット・ウィアン伝来
シュリーヴィジャヤ様式 12世紀末~13世紀
悟りを得た仏陀が瞑想をする間、竜王ムチリンダが傘となり、仏陀を雨風から守ったという説話に基づいてつくられたもの。日本の仏像ではあまり見ない題材。東南アジアでは、水と関係する蛇の神ナーガをとても大切にしており、このテーマの像もたいへん好まれました、とのこと。仏陀のお顔がシュッとしたイケメン。

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仏陀遊行像
スコータイ県シーサッチャナーライ郡ワット・サワンカラーム伝来
スコータイ時代 14 ~15世紀
亡くなった母のマーヤー夫人に説法するために三十三天に昇った仏陀が、地上へ降りてくる場面をあらわすとも考えられています、とのこと。
そういえば、日本の仏像で歩いてる仏陀って見たことあるかな。大体じっと座ってるかまっすぐ立ってるか、なような。
軽やかに足を踏み出す仏様、新鮮な感じ。

展示の後半では、日本とも交易があったアユタヤの工芸品や、日本との交流から生まれた日本風の刀なども。
修好は130年かもしれないが、実際の付き合いはもっとずっと昔からあったことがわかる。シャムという言葉も久しぶりに目にしたような。

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金板装拵刀
ラタナコーシン時代 19世紀
上級貴族だけが佩用するのを許された豪華な装飾の日本式の刀。
これとは違うが、日本の刀を模したような造りの太刀もあった。

各地の寺院などの写真も展示されて、中にはアンコール・ワットで見たものによく似たのもあって懐かしくなった。タイにはまだ行ったことがないが、いつか行ってみたい。
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アルチンボルド展 [美術]

国立西洋美術館
http://arcimboldo2017.jp/

ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593年)は、16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍した、イタリア・ミラノ生まれの画家。
といわれても、正直これまであまりよく知らず、果物や動物を組み合わせて人物像にした「変な絵」の画家くらいの認識だった。
確かにこの奇想天外な発想は今観ても驚きなのだが、今回実物を初めてちゃんと見ると、そのモチーフの一つ一つが実に正確に写実的に描かれていることに驚く。またこういう動植物を目にすることができたのは、ハプスブルグ家の富と権威によって集められたものを間近に観ることができた宮廷画家だったから、というのには納得。こういった絵には、皇帝賛歌の意味も含まれており、単に奇抜な絵ではなく、知的な寓意を込めた刺激的な作品だった。

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《春》 1563年
四季連作の一枚。画面を埋め尽くす花、花、花。何でも80種の花が描き込まれているという。そのどれもが特定できる、実在の植物である。そういう図鑑的な面も備えているのか、とにかく正確なだけでなくて美しい。

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《大地》 1570年頃
こちらは四大元素シリーズから。動物をモチーフにした一枚。羊や牛、うさぎなどはもちろん、象やライオンなど当時ヨーロッパでは普通は目にすることのない動物もいる。
《春》の花以上に無理矢理並べた感はあるけど、一つ一つの動物はとても写実的で表情もリアル。

時代的にまだ静物画というジャンルは興っていないらしく、その点でも先駆者と言える。

他の作品も、どのモチーフもそれだけ取り出してみると、奇抜どころかとてもリアルで、この技術と、発想との組み合わせがなんとも異才。

他には、ダ・ヴィンチの影響が見える素描なども。
アルチンボルドの作品は油彩が10点ばかりと数は多くないのだが、四季と四大元素だけでもお腹いっぱいな感じ。でもこれがわりと初めの方の部屋で観られるので、個人的には尻すぼみな気もしてしまった。でも最後の方でまたアルチンボルドのだまし絵みたいなのが出てくるので、油断できない。

思ったよりずっと刺激的で面白かった。
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水墨の風 ―長谷川等伯と雪舟 [美術]

出光美術館
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/

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中国から伝わった水墨画がいかに日本で発展していったかを、室町時代の雪舟から、独自の画風を屹立した等伯を中心に、江戸時代の文人画までの流れを俯瞰する展覧会。

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牧谿『叭々鳥図』中国 南宋時代
牧谿は中国の画家で、特に日本で好まれた。
素早い筆致で描かれた鳥の羽がちゃんと羽に見えるのが素晴らしい。

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画・雪舟、賛・景徐周麟『破墨山水図』室町時代
中国に渡って絵の勉強をした雪舟は、牧谿らの絵に学びながらも自分の画法を確立。
この絵の岩の描き方など、ほとんど抽象画かと思うくらいの大胆さ。

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長谷川等伯『松に鴉・柳に白鷺図屏風』桃山時代
等伯の特徴は、画面に描かれていない空気や湿り気までが見えるような気がするところ。かすれや墨の濃淡であらわされるそういった微妙な表現が面白い。

他の出品作では、この春の展覧会が面白かった雪村があったのがうれしかったし、今回初めて目にした(ような気がする)一之という画家(室町時代)の作と伝わる観音像も楚々とした姿で美しかった。

等伯から時代が下って江戸時代になると、探幽らの狩野派が王道を行くのに対し、池大雅、田能村竹田らの文人画が自由な境地を見せていくのも興味深い。

墨だけで書かれた白黒の世界だが、ある意味彩色画よりもイマジネーションを刺激する部分もあり、見飽きない。ただ、同じ白黒でも版画ではそうは思わないのは、やはり筆の運びが生み出す力なのだろうか。
とても充実した展覧会だった。
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6月その他 [舞台]

6月に見たその他のもの。備忘録として。

歌舞伎鑑賞教室
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能楽鑑賞教室
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文楽若手会
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感想はツイッターにはつぶやいたけど、ここでは省略します。m(_ _)m
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六月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

歌舞伎座

一、鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
絹川村閑居の場
佐々木高綱   幸四郎
時姫       雀右衛門
三浦之助義村   松也
阿波の局    吉弥
讃岐の局    宗之助
富田六郎    桂三
おくる    門之助
長門    秀太郎

雀右衛門の時姫、去年の初演から一年あまりで一回り存在感を増し、つややかさとおっとりしたお姫様らしさは十分。松也と並んでおかしくない若々しさもあり、くどきの情のこもった様子が素敵。その一方、藤三郎に対する位取りの高さも立派。赤姫役者としての地位を確立した感がある。

それにしても京屋さんの袂芸の凄さよ。両手で袂を握ったり、袂をちょっと振ったりするだけで、いじらしさや可愛らしさがあふれんばかり。他の女形も同じ所作をやってるんだろうけど、そんなには感じないのに、あれは一体何なんだろう。なんか見ててキュンキュンするのよ。

松也の三浦之助が大健闘。凛々しい見た目はもちろん、母を慕う若者の心の弱さと気優しさがある一方で、時姫への冷淡さもあり、武将としての非情さがあってなかなか。幸四郎、雀右衛門に交じって見劣りしなかったのは立派。

幸四郎の高綱はさすがの貫禄。前半の藤三郎の方はもう少し愛嬌や軽さがほしいところだが、高綱とあらわすと舞台を圧する大きさがあり、ラスボス感いっぱい。

秀太郎の長門が気丈な老母で、短い出番ながらさすがに見せる。しかしせっかく秀太郎が出るなら、本行通りにやってほしかった。もったいないわ。

二、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
御所五郎蔵
御所五郎蔵   仁左衛門
傾城皐月     雀右衛門
子分 梶原平平  男女蔵
同  新貝荒蔵   歌昇
同  秩父重助   巳之助
同 二宮太郎次   種之助
同 畠山次郎三   吉之丞
花形屋吾助    松之助
傾城逢州     米吉
甲屋与五郎    歌六
星影土右衛門    左團次

仁左衛門の五郎蔵は、ただひたすらかっこいい。若々しい男伊達。頭領としての貫禄もありながら、一方で気が短い、浅はかさもちゃんとある。どの場面を切り取っても絵になる。反則だわ。

雀右衛門の皐月はしっとりと美しく儚げ。心にない縁切りをする胸の痛みがひしひしと伝わってくる。
京屋さん、今月は吉右衛門、幸四郎、仁左衛門と三人の大幹部に付き合う売れっ子ぶり。それだけ女形不足という事実は置いても、女形の第一人者の一画を占めるようになったのはうれしい限り。

左團次の土右衛門は手に入った様子で、ふてぶてしく憎らしげ。敵役ながら貫禄十分。

米吉の逢州が健闘。仁左衛門を止めに入って、皐月を助ける重要な役。お殿様の寵愛を受ける傾城の華と気立ての良さを見せた。最後も仁左衛門に殺される、歌舞伎ならではの殺しの場の美しさを見せる。もちろん余裕はないが、しっかりきちんと務めていて上々。

松之助の花形屋吾助が良い。仁左衛門の五郎蔵との掛け合いの間の良さ、引っ込みの剽軽なおかしさと、さすがに上手いベテランの味。
歌六の甲屋はごちそう。


三、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)
駒形茂兵衛   幸四郎
お蔦    猿之助
堀下根吉   松也
若船頭   巳之助
船戸の弥八   猿弥
酌婦お松   笑三郎
お君     市川右近
庄屋    寿猿
老船頭   錦吾
河岸山鬼一郎   桂三
清大工   由次郎
船印彫師辰三郎   松緑
波一里儀十   歌六

幸四郎の茂兵衛は前半の朴訥とした取的から後半の凄味のある男への変化が10年の歳月を物語る。それでも忘れなかった、忘れられなかったお蔦の恩に報いる茂兵衛の、姿は変わっても変わらなかった心の奥底が悲しく優しく心にしみる幕切れ。

猿之助のお蔦は、どこかで本人が薄情な人、といっていたがそんなことはないと思った。刹那的ではあっても人に優しくできる人は薄情じゃない。ただその後の生活の苦しさの中で忘れただけ。やけっぱちで自暴自棄で酒に溺れても、辰三郎だけを愛して待ち続けたお蔦の情の深さをむしろ感じた。
前半、安孫子屋の2階で見せるやるせなさと、茂兵衛への親切にのぞく心根の良さ。背中ににじむ生活苦。どれもがお蔦の真実。
一転、10年後の堅実で娘思いの良き母親ぶり。辰三郎へ尽くす実。この10年、どうやって暮らしてきたのか、ただいつかきっと亭主が帰ってくるだろうと心の底で信じていたに違いない女の切なさが見える。

松緑の辰三郎が意外にまっとうな亭主と父で、お蔦さん、帰ってきてくれて良かったねえ、と思える。

猿弥の弥八が、乱暴者で、粗忽な男を面白おかしく見せてさすがに上手い。
松也の根吉も、ちょっと頭の切れるヤクザの鋭さを見せる。
歌六の儀十が、悪人ながら貫禄があって渋くてかっこいい。

錦吾と由次郎が、のどかな田舎の風景を感じさせる。

寄せ集め感のある顔ぶれだったが、意外にこれが今月いちばんの見ものだったかもしれない。

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六月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

歌舞伎座

襲名だの初舞台だの賑やかだった5月に比べ、これといった話題のない今月の公演ではあったが、案外見応えのある演目が並んだ。

一、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)
縮屋新助     松緑
芸者美代吉    笑也
藤岡慶十郎    坂東亀蔵
魚惣       猿弥
魚惣女房お竹   竹三郎
船頭三次    猿之助

松緑初役の新助。
純朴で生真面目で、ただただ美代吉に惚れ込んで。手が届かないと思っていたのが、金さえ工面できれば一緒になれると思い込んでしまう男の悲しさ哀れさ。あそこの舞い上がって有頂天になるところがもっと出ると、後との落差がよくわかるようになる。最後の狂気ももっと怖さを出しても良い。すべてを失った慟哭があまりにも生々しく痛々しく、胸に突き刺さるようだった。

笑也の美代吉は、う~ん、荷が重かったかねえ。それでも月初よりはかなり上げてきたけど、気のきつい、馬鹿で嫌な女になってしまっていて、もうちょっと勝ち気ではあっても藤岡の旦那にも気に入られるような女の可愛げ、芸者の粋がほしかったなあ。

猿之助の三次は性悪だけど格好良くて、そりゃ新助がかなうわけないわなという説得力。あれで金にだらしなくなければいい男だよなあ。美代吉に金をねだって「姐はん」と甘えかかるところなんて、小ずるさ満開。

亀蔵さんの藤岡はすっきり二枚目だが若々しくて貫目に欠け、遊び慣れたお殿様という感じではない。百両ぽんと出すように見えないのが難。
猿弥の魚惣が懐深い様子。竹三郎のおかみが舞台に深みを出す。

幕切れ、上の階から見ると、昇った月が舞台の床の水に映って二重になるのがなんとも美しい。惨劇のあとの無人の舞台に月が昇る。歌舞伎の舞台として屈指の幕切れだと思う。
とはいえ、朝一に見たい演目じゃないよな。なんとかならなかったのかしら。

二、澤瀉十種の内 浮世風呂(うきよぶろ)
三助政吉   猿之助
なめくじ    種之助

初見。なめくじって何よ、なめくじって!?と思ったらほんとになめくじで。いや、なりは女なんだけど、頭になめくじのかぶり物つけてるし、着物にはなめくじって字が入ってるし、もう笑っちゃう。そしてその種ちゃんの可愛いことと言ったら。三助にスリスリすりよってくるのがまたなんとも。ピタッとくっついて踊るけど、ネチっこさはなくてむしろふわふわしてポワンとしてて。あああ、可愛い可愛い。でも最後は三助に塩をまかれて退治されてスッポンに消えちゃう。いや~ん。

猿之助の三助は、粋で格好良くて。幕開き、真っ暗な舞台に朝日が差し込み、後ろ姿の三助が浮かび上がる演出の秀逸さ。テキパキと桶を片付けたりする仕草が小気味良い。なめくじを気味悪がりながらもあしらった後は、仕方噺で那須与一や定九郎などを次々に踊りわけ、最後は若い者達が絡んで派手になる。実にキビキビとした動きが気持ちよく、いなせで惚れ惚れとさせる。20数分があっという間で、もっともっと見たいと思わせる。ほんとに猿之助は嫌になるくらい上手いなあ。

三、御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)
弁慶上使
武蔵坊弁慶    吉右衛門
侍従太郎    又五郎
卿の君/腰元しのぶ   米吉
花の井    高麗蔵
おわさ    雀右衛門

弁慶上使はこれまでおわさが中心と思っていたが、今回播磨屋弁慶でその印象は一変。登場からの姿の大きさ立派さが舞台を覆うようで、しのぶを斬ってからも、おさわの嘆きにじっと耳を傾ける姿、不運な巡り合わせへの慟哭と、人間味を見せながらもひたすら大きい播磨屋に圧倒される。娘と夫の死に嘆くしかないおわさと花の井を置いて、二つ首を抱いて、それでも先へ行かなければならない弁慶の胸の内のつらさ。すべて自分一人に引き受けて進む幕切れは、播磨屋ならではの孤独の陰と心の強さを見せて息をのむ。 いやはや、弁慶上使ってこんな演目だったっけ。とにかくでっかくてでっかくて圧倒された。

雀右衛門のおわさはやや遠慮がち。もうちょっと突っ込んで、弁慶があのお稚児さん、とわかって一瞬瀕死の娘のことも忘れる様子が強く出ると面白くなると思う。でも優しいお母さんな様子はぴったり。

米吉のしのぶが可憐で行儀良く。でも弁慶が父とわからないまま、母を案じて死んでいく姿が哀れ。

侍従太郎の又五郎が、非情さを見せるつらい立場の悲しさ苦しさをしっかり。こういうハラのいる役がしっくりくるようになってきた。
高麗蔵の花の井も武家の妻女らしい手堅い様子。


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ファッションとアート 麗しき東西交流展  [美術]

横浜美術館

明治以降、急速に日本に入ってきた洋装文化。反対に、西洋には日本の着物や工芸品が伝わり、ジャポニスムとしてブームともなり、洋服のデザインに取り入れられるようになった。
このようなファッションにおける和洋のデザインの交流に注目する展覧会。衣服だけでなく、アクセサリーや食器といった工芸品、さらに洋装の婦人を描いた絵画などもあって、多岐にわたる展示はどれも美しく楽しい。

明治の洋装と言えば鹿鳴館。というように洋装は上流階級から取り入れられた。特に皇室は正装が洋装に規定されて、皇后以下急速に洋装化した。

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「昭憲皇太后着用大礼服」1910年頃(明治末期)
大礼服だからいちばん正式なドレス。このマントの豪華さときたら、目を見張るもので、デザインと言い刺繍の細やかさといいため息もの。

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月岡芳年「風俗三十二相 遊歩がしたさう 明治年間 妻君之風俗」1888(明治21)年
こちらは庶民が洋装を始めた頃の絵だろうか。背景や技法は浮世絵そのままなのに風俗が洋風なのが楽しい。

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シャネル「イヴニング・コート」1927年頃 
こちらは反対に日本の着物にインスピレーションを受けてシャネルがデザインしたもの。色合いや、蒔絵のような織りが繊細で素敵。

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ルネ・ラリック「チョーカーヘッド《菊》」1900年頃
ジャポニスムの影響が見えるラリックの作品。そういえば西洋美術ではあまり菊って見ないかも。

このように、一方的に日本が西洋から輸入したのではなく、日本のモチーフや技術が西洋のファッションにも影響を与えたんだなあ、と感心。
まあそれにしてもああいうドレスは一体お値段はどれくらいだったのかしら、などと下世話なこともつい考えてしまった。刺繍とかビーズとか手の込んだ逸品もの、庶民には手が届かなかっただろうなあ。

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この一画のみ撮影可能でした。奥のドレスが好きだったな。



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はじめての古美術鑑賞 紙の装飾展 [美術]

根津美術館
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/
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日本美術の展覧会で書の作品が出てくると、読めないので大抵さっさと通り過ぎてしまう。歴史上の有名人直筆とかも、はあこういう筆跡なのか、と思う程度。百姓上がりの秀吉が思いがけずちゃんとした字を書いてたりとかすると、へええ、と思ったりはするけど。
なので書の展覧会にはほとんど行かない。
という私のような人間向けに、字ではなく、書かれた紙の方に着目した展覧会。

紙と言っても、もちろんただの白い紙ではない。古くから日本では紙に様々な装飾を施して、その上に字や絵を描くことをしてきた。

まず代表的なのはきら刷り。雲母(きら)を膠や布海苔に溶いて紙に刷る。見る角度によって紙がキラキラと光って見えるからきら刷り。

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尾形切 伝藤原公任筆 日本・平安時代 12世紀 
具引き(ぐびき)・雲母摺り(きらずり)・銀泥下絵(ぎんでいしたえ)
装飾は一種類ではなく、このように数種組み合わせたものも。手が込んでる。

さらに豪華なのは金を使った装飾。これは絵画でもおなじみ。金箔、切箔(きりはく)・砂子(すなご)・野毛(のげ)・金銀泥下絵(きんぎんでいしたえ)など、金の形状で種類が分かれる。

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百人一首帖 智仁親王筆 日本・江戸時代 17世紀
具引き(ぐびき)・切箔(きりはく)・砂子(すなご)・野毛(のげ)・金銀泥下絵(きんぎんでいしたえ)
金を使った装飾をこれでもかという程施した豪華版。こうなると、書なのか絵なのか。というくらい。

染色もある。紙全体を染めるものもあれば(これも染方がいろいろ)、「飛び雲」といって所々に色が散るようなものや、「墨流し」のように全体にマーブル模様のようなものを染める技法も。

普段、何気なく見ていた書が、こういう様々な技法で装飾されていたのを改めて見ると楽しい。挿絵や表装ではなく、あくまで下地でありながら、書と調和したり、浮き上がらせたりする料紙の美しさ、そういう美を愛でてきた感性にため息。

書に興味なくても楽しめる展覧会。
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六月花形新派公演 黒蜥蜴 [舞台]

三越劇場
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原作 江戸川乱歩
脚色・演出 齋藤雅文

明智小五郎 喜多村緑郎
黒蜥蜴 河合雪之丞
雨宮潤一 秋山真太郎 (劇団EXILE)
岩瀬早苗 春本由香
片桐刑事 永島敏行

元歌舞伎役者の市川月之助が 喜多村緑郎に、同じく市川春猿が河合雪之丞となって新派に移籍してから初めて舞台を見に行った。普段新派ってあまり関心が持てなくて、今までほとんど見ていなかったんだけど、これはなんだか面白そうと思って。

とにかく、主演の二人が素晴らしく役にはまっていた。
緑郎の明智はダンディでスマート、とにかく現実にはいなさそうなかっこよさ。見ていて思ったのは、歌舞伎の二枚目と言うより宝塚の男役。女から見た理想の男。そういう明智を緑郎が嫌みなくすっきりと演じてみせる。

一方の雪之丞の黒蜥蜴も、妖しさと艶やかさで舞台を支配し、時には冷酷に、時には素顔を覗かせて女のかわいさも見せ、役にぴったり。女形ならではの造形になっていたように思う。衣装も着物からドレスまでゴージャスでよくお似合い。

二人がお互いに挑発し合い、敵対しながら惹かれ合う、メロドラマとしても見られて、最後は切ない。

乱歩の耽美的で退廃的な世界の雰囲気も良く出ていて、一方で展開はスピーディで飽きさせない。派手なアクション・シーンもあり、筋を知らないせいもあって、次はどうなるのかとわくわくしながら見ることができた。また客席通路を役者が頻繁に通ったり、歌舞伎の見得やだんまりのような演出もあって楽しい。これも二人以外にも歌舞伎から移籍した役者さん達の影響かしら。

秋山真太郎という人は初めて見たけど、一見クールで、しかし黒蜥蜴を慕う一途な男を演じてこちらもかっこいい。
春本由香は歌舞伎の尾上松也の妹で去年新派から女優デビューしたばかりらしいが、富豪のお嬢さんのかわいさと小生意気な感じがあってなかなか。
テレビではおなじみの永島敏行の刑事も存在感。

会場の三越劇場にもクラシカルな雰囲気が良くマッチしていて、最後の場面などは劇場の内装がそのまま舞台のセットのようになっていて、観客がその場にいるような錯覚にもなる素敵な美術。

普段の新派の舞台とはもしかするとずいぶん雰囲気が違うのかも。少なくとも私がイメージしている新派の古くささは全くない、とてもスタイリッシュで、まるで小劇場の芝居のようなのりの良さ。新しい新派の財産になりそう。
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