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壽 初春大歌舞伎 昼の部 [舞台]

1月24日(火) 歌舞伎座

大政奉還百五十年
真山青果 作
真山美保 演出
一、将軍江戸を去る(しょうぐんえどをさる)
徳川慶喜   染五郎
山岡鉄太郎   愛之助
土肥庄次郎   廣太郎
吉崎角之助   男寅
間宮金八郎   種之助
天野八郎    歌昇
高橋伊勢守   又五郎

大政奉還150年記念とやらでの上演らしいが、それにしたって正月の幕開きにやる演目じゃないよなあ。私が見たのは正月明けてからだったけど、初日とか初芝居の最初の演目がこれだったらいやだ。何を考えて演目決めてるのかとどんよりする。
まあそれはともかく。
染五郎の慶喜は一人の人間としての慶喜の苦悩や、悔しさが真っ直ぐに感じられた。一度は不戦を決めながら、諦めきれない怒りと苛立ちが胸を突く。台詞もところどころ播磨屋写しを感じさせる。歌い上げる名調子ではなくほどほどに抑えた口跡がむしろ好感。

愛之助の鉄太郎は熱血漢で自分の信じる道を突き進む。相手が将軍でも臆することなく持論を訴える。口跡のいい人なので気持ちよく聞いていられるが、内容は慶喜でなくても鬱陶しい(苦笑)。尊王と勤王の違いとか、どうでもいいとか思っちゃう。青果がこれを書いた時代ですかね。

又五郎の伊勢守が実直で沈着な管理の様子。ほかの登場人物がみんな熱弁をふるってるので、貴重な存在。

幕開きの彰義隊の面々は歌昇、種之助、廣太郎、男寅ら若手を中心に、血気盛んな様子を見せる。歌昇がちょっとお兄さん格になってるのが胸熱。

二、大津絵道成寺(おおつえどうじょうじ)
愛之助五変化
藤娘
鷹匠
座頭     愛之助
船頭
大津絵の鬼

弁慶   歌昇
犬    種之助
外方   吉之丞
矢の根の五郎   染五郎

愛之助が五役を踊り分ける変化舞踊。久々に見た女方はちょっといかついけどそれほど違和感なく、きれいだった。でも踊りはやっぱり立ち役のほうが様になっている。
見台抜けや早変わりなどもあって楽しい。やっと正月気分。
歌昇の弁慶がなかなか大きくて立派。
種之助の犬、ほんとに犬。かわいいったらありゃしない。あれは反則。
最後に染五郎が押し戻しで颯爽とした五郎を見せる。こういうの好きなんだろうな、本人も楽しそう。


伊賀越道中双六
三、沼津(ぬまづ)
呉服屋十兵衛   吉右衛門
お米       雀右衛門
荷持安兵衛   吉之丞
池添孫八    又五郎
雲助平作    歌六

吉右衛門当たり役の一つ。歌六、雀右衛門とそろって悪かろうはずがない。
今回の沼津は、特に前半が軽やかにトントンと進む。若々しい吉右衛門の十兵衛と歌六の平作の道行が明るく楽しい。お決まりの客席降りでは、平作が「歌舞伎が好きでんねん」十兵衛「へえ、で贔屓は?」平「中村吉右衛門!」十「あんなん大したことない、わしは中村歌六」といったやり取りがあって、ほっこりした。今までの沼津でこんなやり取りなかったよなあ。

その後の安兵衛を巻き込んでのやりとりもチャリ場めいてのどか。それがお米が印籠を盗もうとしたところから暗転するのが、気がついたらそうなっていたというような自然な空気の変化なのに驚く。

播磨屋は前半と後半で口跡が変わるわけじゃない。最初から最後まで町人。でも変わらない中で心の動きがはっきり伝わる。父と妹と知っての動揺、敵味方と知っての苦悩、父の死に報いるため自分も死を覚悟して股五郎の居所を知らせる絶唱とも言うべき声。言葉の意味だけでなく声のト-ンそのもに泣く。

歌六の平作も正直者で,ちょっと剽軽なところもある老人。娘思いで、その夫の敵討ちを助けるために自らの命を投げ出す。前半と後半のコントラストが効いて、娘と、初めて対面した息子への情の深さに涙々。
雀右衛門のお米は元は傾城の華やぎを保ちつつも今は貧しい生活の中で夫を思う女の悲しさを見せる。誠実な人柄ゆえに、夫志津馬の怪我の責めを負う辛さ。志津馬の怪我を直したい一心で十兵衛の印籠を盗み、訳を語る口説きが切々として真情がこもり泣かせる。
十兵衛が去った後、平作とお米が抱き合って泣くところに親子の切なさがあふれていた。

二時間近い芝居なのに、まったく長さを感じさせない、とても緊密した空気の舞台で、それでいて前半の軽さもあってさらさらと進んでいって、なのに目が離せないという、それはそれは充実した芝居だった。
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nori

ご無沙汰しております。私のブログは記事は書いていますが、公開していなくて、近い内にまとめて公開するつもりです。正月として初めて上京して、NHKニューイヤーオペラコンサートと歌舞伎座昼の部を見ました。吉右衛門の沼津が目当てで、初めてではなかったですが、よかったです。若手の出演機会が多い中で、吉右衛門や仁左衛門には、まとまった演目を見せた欲しいものです。紀香さんを近くで見られて喜んでいるミーハーでもあります。
by nori (2017-02-03 04:08) 

mami

noriさん、お正月は上京されてたんですね。私は大阪で、行き違いでしたね。
大御所はだんだんお年を召して出演時間が減ってくる中、歌舞伎座では吉右衛門さん、松竹座では仁左衛門さんが充実した舞台を見せてくださり、ありがたかったです。今年も楽しみです。
by mami (2017-02-04 00:59) 

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