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四月大歌舞伎夜の部 [舞台]

1704歌舞伎座.jpg

一、傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
土佐将監閑居の場
浮世又平後に土佐又平光起  吉右衛門
女房おとく     菊之助
狩野雅楽之助   又五郎
土佐修理之助   錦之助
土佐将監     歌六
将監北の方     東蔵

吉右衛門持ち役の一つ又平、もう何度目だろう。今回は女房おとくが初役の菊之助で、月初は手探り感もあり、嫁は嫁でも嫁と舅みたいな感じもしたが千穐楽にはすっかりなじんでお互いを信頼し合う絆の強い夫婦になっていた。

これまで、師匠に絵の功がないから名字はやれないと拒絶され、おとくが「どもりに産み付けた親御を恨みなされ」と言うのを、だからそうじゃないでしょ、どもりだからもらえないんじゃないんだよ、って不思議に思っていた。でも又平夫婦はそれは重々承知の上だったんだ。
でも又平にすれば、絵で手柄を立てようにも「どもりの又平」ではその機会さえない。たとえどんなに腕が良くても大津絵の仕事しかもらえない。だから、名字をもらって一人前の絵師として扱ってもらえれば、ちゃんとした絵も描ける。と、師匠の考えとは鶏と卵みたいなことになっていて、だからこそ名字をもらうには師匠の情けにすがるしかないのに、師匠はやっぱり絵で功を立てないとだめという。だから「さりとてはつれないお師匠様じゃ」となるわけなのね。

そして名字がもらえない以上、一生大津絵描きで終わるしかない。貧苦も抜け出せない。もう生きていく甲斐もない。だから「死にたい」となる。
これまでは、又平が名字をほしがるのは、一人前の「人間」として扱われたいからだと思っていた。でも今回のを見て、単に人間ではなく「一流の絵師」として生きていきたいと言う又平の自負を感じた。何が今までと違うのかはよくわからないけど。

もしかしたら菊ちゃんのおとくが、ただ夫を愛しているだけではなくて、夫の絵師としての力を信じている、信頼している、と言うのが感じられたからかもしれない。夫に世に出てほしい、そのために尽くしたい、と言う愛情の強さ。夫婦の絆の強さがひたひたと胸に迫るあたたかさ。

今回の播磨屋の又平は、かわいそうな人、ではない気がする。気の毒とか哀れではなくて、又平夫婦の一途さや必死さがひたすら愛おしい。そして師匠夫婦もおそらくそう思っているのがわかる。芝居全体を貫く人間の存在の愛おしさに泣く。

歌六と東蔵が先月の「岡崎」に続いて師匠夫婦というのも面白い。
歌六の将監ももはや鉄板で,厳しくも,心の底では又平を気にかける懐の深さを十分に見せる。
東蔵はもう少し北の方の威厳があってもと言う気もするが,気立ての良さそうな奥方。

錦之助の修理助が,前髪の若者が無理なく似合う。凜々しくて行儀の良い弟子。
又五郎の雅楽之助もキビキビとして颯爽。

いやあ、やっぱりチーム播磨屋の義太夫狂言は安定感抜群。菊ちゃんもすっかり溶け込んでうれしい限り。
   
  
二、桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
帯屋
帯屋長右衛門    藤十郎
信濃屋娘お半/丁稚長吉   壱太郎
義母おとせ   吉弥
隠居繁斎    寿治郎
弟儀兵衛    染五郎
長右衛門女房お絹     扇雀

昨年1月の松竹座以来の帯屋。
藤十郎は,時々台詞が不明瞭なことがあったが、まだまだ達者なところを見せる。前半の義母のいじめにじっと耐える苦しさ、妻への申し訳なさ、いずれも本来は律儀な性格からのことと思われる風情。だが圧巻はお半が現れてからで、つい成り行きでできてしまった関係とはいえ、以前から可愛がっていた娘への複雑な感情を見せ、書き置きを見て驚き慌て、すべてを観念して後を追っていく姿に悲しみとともに、男盛りの色気がにじむのに目を見張る。はあ、若いわ、山城屋。

壱太郎が前半は長吉で三枚目のコメディアンぶりを懸命に、後半は打って変わって14歳の娘お半で,可愛らしさといじらしさ、しかしすでに男を知った体から隠しようもない女が覗く。
犯罪もののカップル。

扇雀がよくできた女房。こういう頭の良さそうな役は似合うのね。
吉弥のおとせと染五郎の儀兵衛は二人ともニンでない。ごうつく親子だが笑いも取る役なのにさっぱり笑えない。特に染五郎は可哀想なくらい。

三、奴道成寺(やっこどうじょうじ)
白拍子花子実は狂言師左近  猿之助
所化  尾上右近
同    種之助
同    米吉
同    隼人
同    男寅
同   初舞台龍生
   
文句なしに猿さんのキレッキレの踊りが楽しい。幕開きの能掛かりの荘厳な様子から一変、男と表しての軽妙さ。特に三つの面をとっかえひっかえの踊りでは外連の味も混じり、切れ味の良い踊りを堪能。
所化との踊りで右近、種と絡むのもうれしい。
初舞台の桂三さんの息子龍生君、最初の所化の並びのところで台詞もあり、一踊りもさせてもらいしっかりした様子。特に紹介はなかったけど、大向こうもかかってた。楽しそうにやってるのがなにより。
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