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六月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

歌舞伎座

襲名だの初舞台だの賑やかだった5月に比べ、これといった話題のない今月の公演ではあったが、案外見応えのある演目が並んだ。

一、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)
縮屋新助     松緑
芸者美代吉    笑也
藤岡慶十郎    坂東亀蔵
魚惣       猿弥
魚惣女房お竹   竹三郎
船頭三次    猿之助

松緑初役の新助。
純朴で生真面目で、ただただ美代吉に惚れ込んで。手が届かないと思っていたのが、金さえ工面できれば一緒になれると思い込んでしまう男の悲しさ哀れさ。あそこの舞い上がって有頂天になるところがもっと出ると、後との落差がよくわかるようになる。最後の狂気ももっと怖さを出しても良い。すべてを失った慟哭があまりにも生々しく痛々しく、胸に突き刺さるようだった。

笑也の美代吉は、う~ん、荷が重かったかねえ。それでも月初よりはかなり上げてきたけど、気のきつい、馬鹿で嫌な女になってしまっていて、もうちょっと勝ち気ではあっても藤岡の旦那にも気に入られるような女の可愛げ、芸者の粋がほしかったなあ。

猿之助の三次は性悪だけど格好良くて、そりゃ新助がかなうわけないわなという説得力。あれで金にだらしなくなければいい男だよなあ。美代吉に金をねだって「姐はん」と甘えかかるところなんて、小ずるさ満開。

亀蔵さんの藤岡はすっきり二枚目だが若々しくて貫目に欠け、遊び慣れたお殿様という感じではない。百両ぽんと出すように見えないのが難。
猿弥の魚惣が懐深い様子。竹三郎のおかみが舞台に深みを出す。

幕切れ、上の階から見ると、昇った月が舞台の床の水に映って二重になるのがなんとも美しい。惨劇のあとの無人の舞台に月が昇る。歌舞伎の舞台として屈指の幕切れだと思う。
とはいえ、朝一に見たい演目じゃないよな。なんとかならなかったのかしら。

二、澤瀉十種の内 浮世風呂(うきよぶろ)
三助政吉   猿之助
なめくじ    種之助

初見。なめくじって何よ、なめくじって!?と思ったらほんとになめくじで。いや、なりは女なんだけど、頭になめくじのかぶり物つけてるし、着物にはなめくじって字が入ってるし、もう笑っちゃう。そしてその種ちゃんの可愛いことと言ったら。三助にスリスリすりよってくるのがまたなんとも。ピタッとくっついて踊るけど、ネチっこさはなくてむしろふわふわしてポワンとしてて。あああ、可愛い可愛い。でも最後は三助に塩をまかれて退治されてスッポンに消えちゃう。いや~ん。

猿之助の三助は、粋で格好良くて。幕開き、真っ暗な舞台に朝日が差し込み、後ろ姿の三助が浮かび上がる演出の秀逸さ。テキパキと桶を片付けたりする仕草が小気味良い。なめくじを気味悪がりながらもあしらった後は、仕方噺で那須与一や定九郎などを次々に踊りわけ、最後は若い者達が絡んで派手になる。実にキビキビとした動きが気持ちよく、いなせで惚れ惚れとさせる。20数分があっという間で、もっともっと見たいと思わせる。ほんとに猿之助は嫌になるくらい上手いなあ。

三、御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)
弁慶上使
武蔵坊弁慶    吉右衛門
侍従太郎    又五郎
卿の君/腰元しのぶ   米吉
花の井    高麗蔵
おわさ    雀右衛門

弁慶上使はこれまでおわさが中心と思っていたが、今回播磨屋弁慶でその印象は一変。登場からの姿の大きさ立派さが舞台を覆うようで、しのぶを斬ってからも、おさわの嘆きにじっと耳を傾ける姿、不運な巡り合わせへの慟哭と、人間味を見せながらもひたすら大きい播磨屋に圧倒される。娘と夫の死に嘆くしかないおわさと花の井を置いて、二つ首を抱いて、それでも先へ行かなければならない弁慶の胸の内のつらさ。すべて自分一人に引き受けて進む幕切れは、播磨屋ならではの孤独の陰と心の強さを見せて息をのむ。 いやはや、弁慶上使ってこんな演目だったっけ。とにかくでっかくてでっかくて圧倒された。

雀右衛門のおわさはやや遠慮がち。もうちょっと突っ込んで、弁慶があのお稚児さん、とわかって一瞬瀕死の娘のことも忘れる様子が強く出ると面白くなると思う。でも優しいお母さんな様子はぴったり。

米吉のしのぶが可憐で行儀良く。でも弁慶が父とわからないまま、母を案じて死んでいく姿が哀れ。

侍従太郎の又五郎が、非情さを見せるつらい立場の悲しさ苦しさをしっかり。こういうハラのいる役がしっくりくるようになってきた。
高麗蔵の花の井も武家の妻女らしい手堅い様子。


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