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六月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

歌舞伎座

一、鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
絹川村閑居の場
佐々木高綱   幸四郎
時姫       雀右衛門
三浦之助義村   松也
阿波の局    吉弥
讃岐の局    宗之助
富田六郎    桂三
おくる    門之助
長門    秀太郎

雀右衛門の時姫、去年の初演から一年あまりで一回り存在感を増し、つややかさとおっとりしたお姫様らしさは十分。松也と並んでおかしくない若々しさもあり、くどきの情のこもった様子が素敵。その一方、藤三郎に対する位取りの高さも立派。赤姫役者としての地位を確立した感がある。

それにしても京屋さんの袂芸の凄さよ。両手で袂を握ったり、袂をちょっと振ったりするだけで、いじらしさや可愛らしさがあふれんばかり。他の女形も同じ所作をやってるんだろうけど、そんなには感じないのに、あれは一体何なんだろう。なんか見ててキュンキュンするのよ。

松也の三浦之助が大健闘。凛々しい見た目はもちろん、母を慕う若者の心の弱さと気優しさがある一方で、時姫への冷淡さもあり、武将としての非情さがあってなかなか。幸四郎、雀右衛門に交じって見劣りしなかったのは立派。

幸四郎の高綱はさすがの貫禄。前半の藤三郎の方はもう少し愛嬌や軽さがほしいところだが、高綱とあらわすと舞台を圧する大きさがあり、ラスボス感いっぱい。

秀太郎の長門が気丈な老母で、短い出番ながらさすがに見せる。しかしせっかく秀太郎が出るなら、本行通りにやってほしかった。もったいないわ。

二、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
御所五郎蔵
御所五郎蔵   仁左衛門
傾城皐月     雀右衛門
子分 梶原平平  男女蔵
同  新貝荒蔵   歌昇
同  秩父重助   巳之助
同 二宮太郎次   種之助
同 畠山次郎三   吉之丞
花形屋吾助    松之助
傾城逢州     米吉
甲屋与五郎    歌六
星影土右衛門    左團次

仁左衛門の五郎蔵は、ただひたすらかっこいい。若々しい男伊達。頭領としての貫禄もありながら、一方で気が短い、浅はかさもちゃんとある。どの場面を切り取っても絵になる。反則だわ。

雀右衛門の皐月はしっとりと美しく儚げ。心にない縁切りをする胸の痛みがひしひしと伝わってくる。
京屋さん、今月は吉右衛門、幸四郎、仁左衛門と三人の大幹部に付き合う売れっ子ぶり。それだけ女形不足という事実は置いても、女形の第一人者の一画を占めるようになったのはうれしい限り。

左團次の土右衛門は手に入った様子で、ふてぶてしく憎らしげ。敵役ながら貫禄十分。

米吉の逢州が健闘。仁左衛門を止めに入って、皐月を助ける重要な役。お殿様の寵愛を受ける傾城の華と気立ての良さを見せた。最後も仁左衛門に殺される、歌舞伎ならではの殺しの場の美しさを見せる。もちろん余裕はないが、しっかりきちんと務めていて上々。

松之助の花形屋吾助が良い。仁左衛門の五郎蔵との掛け合いの間の良さ、引っ込みの剽軽なおかしさと、さすがに上手いベテランの味。
歌六の甲屋はごちそう。


三、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)
駒形茂兵衛   幸四郎
お蔦    猿之助
堀下根吉   松也
若船頭   巳之助
船戸の弥八   猿弥
酌婦お松   笑三郎
お君     市川右近
庄屋    寿猿
老船頭   錦吾
河岸山鬼一郎   桂三
清大工   由次郎
船印彫師辰三郎   松緑
波一里儀十   歌六

幸四郎の茂兵衛は前半の朴訥とした取的から後半の凄味のある男への変化が10年の歳月を物語る。それでも忘れなかった、忘れられなかったお蔦の恩に報いる茂兵衛の、姿は変わっても変わらなかった心の奥底が悲しく優しく心にしみる幕切れ。

猿之助のお蔦は、どこかで本人が薄情な人、といっていたがそんなことはないと思った。刹那的ではあっても人に優しくできる人は薄情じゃない。ただその後の生活の苦しさの中で忘れただけ。やけっぱちで自暴自棄で酒に溺れても、辰三郎だけを愛して待ち続けたお蔦の情の深さをむしろ感じた。
前半、安孫子屋の2階で見せるやるせなさと、茂兵衛への親切にのぞく心根の良さ。背中ににじむ生活苦。どれもがお蔦の真実。
一転、10年後の堅実で娘思いの良き母親ぶり。辰三郎へ尽くす実。この10年、どうやって暮らしてきたのか、ただいつかきっと亭主が帰ってくるだろうと心の底で信じていたに違いない女の切なさが見える。

松緑の辰三郎が意外にまっとうな亭主と父で、お蔦さん、帰ってきてくれて良かったねえ、と思える。

猿弥の弥八が、乱暴者で、粗忽な男を面白おかしく見せてさすがに上手い。
松也の根吉も、ちょっと頭の切れるヤクザの鋭さを見せる。
歌六の儀十が、悪人ながら貫禄があって渋くてかっこいい。

錦吾と由次郎が、のどかな田舎の風景を感じさせる。

寄せ集め感のある顔ぶれだったが、意外にこれが今月いちばんの見ものだったかもしれない。

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