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ジャン=ギアン・ケラス リサイタル [音楽]

6月22日(水) 杉並公会堂
ケラス2016a.JPG

プログラム
バッハ : 無伴奏チェロ組曲全曲

ケラスの演奏会、ちょっと久しぶりかな?アルカント・カルテットもすっかりメジャーになって前回はチケットが取れなかったし。
今回の来日では、他の会場では中東の楽器との珍しいアンサンブルなどをやるようだが、無難な(?)こちらのプログラムを選んだ。

無難と言っても、チェロの作品として至高の名曲、それも全曲を一晩でと言うから大変である。10年くらい前王子ホールでやった時は3曲ずつ二夜に分けてだったはず。
演奏は作品番号順に、2曲ずつやって休憩を入れるパターン。もちろん、全て暗譜。

重厚長大とは無縁。軽やかで浮遊感がありながら深遠で鋭いバッハ。
何度も聴いてる曲のはずが、聞き逃していた部分に光が当たるような新鮮さ。軽やかな1番にはじまり、4番なんて現代音楽のかけらが混ざるような面白さ。後半、5番の晦渋が滲む深み。そして最後の6番のひたすら高みを目指すような、バロック建築のような構築性。
あざやかでありながらあくまでも端正で、真っ直ぐに心に届く。

ふうう。やっぱり凄いの一言。ちょっと遠い会場だったけど、聴きに行ってよかった。

こんなプログラムの後、アンコールなんてやらないよね、と思ったのに
クルターク : シャドウ
デュティユー : ザッハーの名による3つのストローフェ より

と2曲もやってくれた。バッハの後でバリバリの現代曲をやるところがケラスらしい。そしてそれがまたさらっと絶品で。アンコールと言うにはもったいないような贅沢すぎる口直しでした。
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五嶋みどりヴァイオリン・リサイタル [音楽]

6月20日(月) サントリーホール
ヴァイオリン:五嶋みどり
ピアノ:オズガー・アイディン

リスト(オイストラフ編曲) : 『ウィーンの夜会』S427から「ヴァルス・カプリース第6番」(シューベルト原曲)
シェーンベルク  : ピアノ伴奏を伴ったヴァイオリンのための幻想曲 op. 47
ブラームス  : ヴァイオリンとピアノのためのソナタ第1番 ト長調 op. 78 「雨の歌」
モーツァルト  : ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 変ロ長調 K454
シューベルト   : ピアノとヴァイオリンのための幻想曲 ハ長調 D934 op. posth. 159

アンコール
クライスラー   :愛の悲しみ 愛の喜び

今回のプログラムは、ウィーンつながりと言ったところだろうか。とは言っても、どの曲も表情が違う。
シェーンベルクの激情、ブラームス「雨の歌」の繊細な歌い回し。モーツァルトのギャラント、シューベルトの機知。と見事に弾き分けた。

美音とテクニックの完璧さは当然として、しなやかでかつ強靭な精神を感じさせ、なお甘さも優美さもあり。脱帽。

惜しむらくは伴奏。いつもの人なんだけど、剛腕で繊細さに欠ける。モーツァルトやシューベルトのメロディとかもうちょっと粒の綺麗さがほしかった。特にモーツァルトとブラームスは一昨年庄司紗矢香とプレスラーでも聴いた曲だけに、ついプレスラーと比較してしまった。

ともかく、常に王道を行くみどりちゃん。これからもついていきます!

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六月大歌舞伎 第三部 [舞台]

6月21日(火) 歌舞伎座
1606忠信2.JPG
今月、第三部だけ再見した。一回目観て良かったから、と言うのもあるが、実は一回目の時、前の席の人が大きくて、舞台が半分しか見えなかったのだ(>_<)。なので、悲しくてリベンジ。運だから仕方ないけど、一階じゃなくて3階だったのよ。どんだけ大きい人なんだ。。。

道行初音旅
三代猿之助四十八撰の内
川連法眼館 市川猿之助宙乗り狐六法相勤め申し候

〈道行初音旅〉
佐藤忠信実は源九郎狐   猿之助
逸見藤太    猿弥
静御前     染五郎

猿之助は襲名以来狐忠信をやり続けていて、今公演中に四の切りは300回を超えたそう。スーパー歌舞伎と狐しかやらんのか、と内心毒づいていて、今月も「あ~あ、また狐なの?もういいわ」と正直思っていた。
でも改めて見ると、やっぱり凄いの一言。ぐちゃぐちゃ言ってすいませんでした、はは~<(_ _)>って感じ。

道行の忠信は、精悍で狐の本性を割と露骨に見せながら、でも忠信としての戦物語の颯爽とした踊りや静へのお仕えの仕方がきっちりしていてスマート。襲名の頃は、踊りがもっとこれ見よがしな巧さがあって、そこが見物でもあり、一方で義太夫狂言の品を下げる面もあったように思うが、そういうギラギラ感が抑えられるようになって格が上がった。素直に格好いい忠信。最後はぶっ返って引っ込む派手な澤瀉屋の型がよく似合う。

染五郎の静、浅葱幕が落ちると板付きで舞台に立つ姿が実に美しい。え、こんなに別嬪さんだったっけ。女形は今までにも何度かやってるけど、今回は特に綺麗に見えた。猿さん相手だから?(笑)

猿弥の藤太が傑作。愛嬌溢れて、おかしみもたっぷり。お馬鹿で憎めない、可愛い藤太。役者の名前を盛り込んだ口上も上手くて聞かせる。猿弥さん、好きだわ~。


〈川連法眼館〉
佐藤忠信/忠信実は源九郎狐   猿之助
駿河次郎    松也
亀井六郎    巳之助
川連法眼    寿猿
飛鳥      吉弥
静御前    笑也
源義経    門之助

まず本物の忠信が、武士らしく落ち着きのある様子をきっちり。
でもやっぱり眼目は源九郎狐の方。ケレンの動きの見事さに目を見張り、狐言葉や小首を傾げる仕草などが本当に可愛らしい。鼓を貰い受けての嬉しそうな様子に胸が熱くなる。宙乗りでは大きくゆらしたり、愛嬌たっぷりサービス満点。
一部からずっと見てきても、最後の狐に全部持って行かれた。染ちゃん気の毒なくらい。

門之助の義経がさすがに品と悲哀があり、御大将の貫禄。
笑也の静は可憐で美しいが、義太夫味が薄いのがなんとも。

寿猿と吉弥がでるのに、始めの小芝居がなくて残念。もったいないわ。
巳之助の六郎が荒々しくて元気いっぱいで良い。
松也の駿河もすっきり。だが正直言って、松也を三部とも出す必然性を感じない。この駿河くらい歌昇でも良かったのでは、と思う播磨屋贔屓ですいません。

澤瀉屋の四の切りは、最後の化かされ荒法師が6人も出てきて、動きもアクロバティックでここも見所。文句なしに楽しい一幕で、通し狂言を気持ちよく打ち出し。

猿さん、と言うか澤瀉屋一門にはスーパー歌舞伎よりもっと古典をやってほしい。と言うのを痛感した。
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六月大歌舞伎 第二部 [舞台]

6月20日(月)
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木の実 小金吾討死 すし屋

〈木の実・小金吾討死〉
いがみの権太  幸四郎
主馬小金吾   松也
鮓屋弥左衛門  錦吾
猪熊大之進   市蔵
若葉の内侍  高麗蔵
小せん    秀太郎

〈すし屋〉
いがみの権太    幸四郎
弥助実は三位中将維盛    染五郎
お里    猿之助
若葉の内侍    高麗蔵
鮓屋弥左衛門   錦吾
おくら      右之助
梶原平三景時   彦三郎
小せん    秀太郎

第二部は幸四郎の権太。
う~ン、ちょっとどう評して良いか迷う。見る前は権太には重いんじゃないかと思っていたが、そこは意外とクリア。前半、木の実の段でのたかりの場面はふてぶてしさも見せながら、存外軽妙に事を運ぶ。でもワルな顔がくっきりしているので、後の戻りとの対比が生きる。ただ、その肝心の戻りの後がいつもの癖で口跡がはっきりせず、"血を吐くような"独白が届いてこないので、もどかしく、入り込めない。ここで泣かせてくれなきゃ、この芝居やる意味ないだろう。

染五郎の弥助実は維盛は、知盛と違ってニンにはまって良い。契りをせがむお里に(妻子がいるから)二世の契りは、、、とわびを入れるところが誠実そうで微苦笑。ただ、弥助から維盛に戻るところはぎこちなさが見える。戻るぞ、戻るぞ、はい戻りました~、みたいな(笑)段取り感が。ちょっと海老の羽織落としを思い出した(まあ、あれほどではないが)。

猿之助が第一部に続いて、このお里も好演。もっと癖の強い感じになるかと思ったら、可愛らしくて一途な娘。いやほんと、なんでも出来るんだな。だからもっと古典やろうよ。

秀太郎の小せんは、木の実でのこっくりとした情のある様子が良い。そしてすし屋での目だけの別れの演技で泣かせる。

松也の小金吾が、真面目で物堅い前髪の若侍。権太にたかられる悔しさが痛々しく、立ち回りからの死に際まで悲壮さを滲ませて、今月三役でこれがいちばんの出来。
錦吾の弥左衛門、前身をうかがわせる一徹な老人。でもほんとは息子も可愛い、孫も気にかけてた、と言うのがしっくり来る。錦吾さんはこういう心の暖かい役が似合う。
右之助のおくらも人がよくて、息子にころっとだまされちゃうおっかさんで、そのへんに普通にいるおっかさん。それがこんな悲劇に巻き込まれてしまう切なさを感じさせた。


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六月大歌舞伎 第一部 [舞台]

6月21日(火)
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今月の歌舞伎座は三部制で、義経千本桜の通しという変則な興行。
三部制はまだ良いとして、料金が二部制よりずっと割高になるのは納得がいかない。

第一部
渡海屋
大物浦

渡海屋銀平実は新中納言知盛 染五郎
源義経    松也
入江丹蔵   亀鶴
亀井六郎   歌昇
片岡八郎   巳之助
伊勢三郎   種之助
駿河次郎   宗之助
銀平娘お安実は安徳帝   初お目見得 武田タケル(右近長男)
武蔵坊弁慶  猿弥
相模五郎   市川右近
女房お柳実は典侍の局   猿之助

座頭は、二部で権太をやる幸四郎だが、実質的には染五郎と猿之助を中心とした花形公演。これで大歌舞伎と言われてもね。

その二人とも初役のこの段。猿之助に軍配が上がる。
雀右衛門の型を学んだと言うが、まずお柳はしっとりとした女房の様子で、石持ちの衣装がよく似合う。化粧も似せているのか、三階からだとハッとするくらい先代雀右衛門の面影が宿る。
だが良いのは衣装を変えて局となってからで、位取りの高さがあり、帝の乳母という気位の高さを凛としたたたずまいに見せる。宮廷の女性と言うより、武家の女のような強さを感じさせてしまうのはどうかという気もするが、帝を守り抜こうとする意志の強さが出て、「八大龍王」からの台詞も堂々として聞かせた。

安徳帝は、初お目見えの右近の息子タケル君。台詞も多い難役だが、しっかりこなしていたし、可愛らしい。来年には右近を継ぐことが決まっている。楽しみ。

銀平実は知盛の染五郎は、すっきりとした二枚目で、花道から傘をさして登場するところは颯爽として格好いい。でも銀平にしては優男な感もぬぐえない。衣装を変えて能がかりのところは気品があって魅せる。眼目の手負いとなってからは、ううん、なんだろう、やっぱり線が細いのか。義経への恨みも、六道も、「あら嬉しや昨日の敵は今日の味方」も、もう一つ胸に届いてこないもどかしさを感じてしまった。

知盛に関しては、去年ニンじゃない菊ちゃんがあれだけやっちゃったというのは、この先やる人のハードルを上げた気はする。少なくとも私にはそうで、染ちゃんには菊ちゃんを凌いでほしかったがそうでもなかったのが残念。

右近の相模五郎が、この人にしては口跡が良く、前半のコミカルさも良く出して魚尽くしも上手く聞かせ、注進としては悲壮感を見せて結構な出来。息子のお目見えで張り切ったところを見せた。
亀鶴の入江もきっちり。

松也の義経は二枚目振りは良いが、御大将としての貫禄に欠けて存在感が薄い。
猿弥の弁慶もやや軽め。法螺貝、がんばって。ドキドキした(笑)。
四天王も含めて義経一行が若いので浅く、そのせいもあって終盤の芝居に染五郎共々深みが欠けた。


所作事 時鳥花有里

源義経     梅玉
傀儡師染吉   染五郎
白拍子園原   笑三郎
白拍子帚木   春猿
鷲の尾三郎   東蔵
白拍子三芳野   魁春

時間を埋めるためにどこかから引っ張り出してきたんだろうけど、なんでここでやるのかさっぱりわからない。これをやるんなら、鳥居前を付けるべきだと、誰でも思うわ。

とは言え、そういうことを忘れてこの演目だけ見ると、意外に楽しい。
まずなんと言っても梅玉の義経が、出てくるだけで御大将の気品と貫禄。はあ、義経ってこれだよな、と思う。
染五郎の人形遣いがお面を取っ替え引っ替えして踊るのもとても面白く楽しい。
魁春が品のある美しさで華がある。
笑み三郎と春猿も綺麗で、三人揃って目の保養。
そして近頃老女役の多い東蔵がきりっとした様子で、意表を突く。ほんと幅の広い人だ。

大物浦の口直しと言ってはなんだが、ほんわかしてゆったり見られて、短いけど良い演目だった。
でも、梅玉魁春の無駄使いなのは否定できない。どうして大物浦の義経を梅玉さんにしなかったのか、理解不能。


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開館50周年記念 美の祝典 II 水墨の壮美 [美術]

6月12日(日) 出光美術館

三期にわたる美の祝典の第二部、最終日に駆け込みで拝見。
第一部はやまと絵で第二部は水墨画の名品を展示。
日本だけでなく中国の画家の名品もあるところに出光コレクションの奥行きを感じる。

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能阿弥 四季花鳥図屏風 (1469)
四季図というと琳派の色とりどりの華やかなのを思い浮かべるけれど、墨一色で描かれたものも不思議な清潔感と優美さがある。何種類も描かれた鳥が可愛い。

3a.JPG
長谷川等伯 松に鴉・柳に白鷺図屏風
松と柳、鷺と鴉の対称性が強調された絵。黒鳥なら中国の叭々鳥を描くのが一般的だったのにあえて鴉を描き、しかも巣作りをするつがいと雛という一家で生き物の普遍的な姿を表す。等伯の新しさと優しさを感じる。

2a.JPG
浦上玉堂 雙峯挿雲図 (江戸時代)
水墨画と言えば、文人画も忘れちゃいけない。
上の二点に比べるとずっとくだけた感じ。のびのびと自由に筆を走らせてる様子が楽しい。

この他新しいところでは大正の富岡鉄斎あたりまで。色がなくても色を感じさせる水墨画の面白さをじっくり鑑賞できた。

もちろん今期も「伴大納言絵巻」も展示。これもまた楽しかった。
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博多座大歌舞伎・昼の部 [舞台]

6月7日(火) 

一、君が代 松竹梅(きみがよ しょうちくばい)
松の君    友右衛門
竹の君    錦之助
梅の姫    廣松

平安貴族風で踊る短い一幕。まあ正直言ってどうってことない踊りだが、錦之助がさすがに公達の雰囲気がよく似合って美しい。こういう拵えが似合うことでは梅玉さんに次ぐ。
廣松がお化粧がだいぶ上手くなって可愛くなってた。踊りの方は、頭の中で「しゃなり、しゃなり」と唱えながら動いてるんじゃないだろうか、と思うぎこちなさだったが。

二、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)
粂寺弾正    松緑
小野左衛門春道   團蔵
八剣玄蕃    亀三郎
民部弟秀太郎   尾上右近
小野春風    米吉
錦の前    廣松
玄蕃一子数馬    廣太郎
秦民部    亀寿
百姓万兵衛   権十郎
腰元巻絹    孝太郎

松緑の弾正がおおらかで愛嬌たっぷり。謎解きをする知恵者と言うよりは、エロ兄という感じだけど。理屈抜きに楽しい。

亀三郎の玄蕃がなかなかの悪人面で律儀者の亀寿と好対称。亀三さん上手いんだよね。それだけにこういう役が割り振られるのがちょっともったいない気がする。
右近の秀太郎が色気たっぷりの若衆。エロいわ~、けんけん。
廣太郎の数馬が乱暴者の三枚目敵を一生懸命。
米吉はあほぼんの若殿で、でも腰元に手を出してるっていうのが「おいおい」という感じで笑える。可愛い馬鹿若殿。
若手が多い中で孝太郎がさすがに所作の美しさと落ち着きで先輩格を感じさせる(が、この日はちょっと台詞が怪しかった。。。)
團蔵、権十郎は鉄板の余裕。

一谷嫩軍記
三、熊谷陣屋(くまがいじんや)
熊谷次郎直実    仁左衛門
源義経     時蔵
経盛室藤の方    菊之助
梶原平次景高    松之助
堤軍次    錦之助
白毫弥陀六実は弥平兵衛宗清   歌六
熊谷妻相模     芝雀改め雀右衛門
    
仁左様の熊谷は、播磨屋とは似て非なるものがあるのだがその違いは上手く説明できない。いつもながら繊細に緻密に構築された芝居は目線一つまで計算されていて、熊谷の苦悩と悲嘆を台詞だけでない仁左様の存在全てで表していく。ただただ圧倒されて見入るのみ。息子への哀惜、妻へのいたわり、主君への忠誠を全て呑み込んで口には出さず、ただ一人去っていく姿の悲痛さに言葉もない。

雀右衛門の相模は、控えめで情が深い優しい母。息子の安否が知りたくて、一里、二里と歩んで来てしまった、と言うのが不思議でない。その母がいきなり息子の首を見せられての驚愕と嘆きがそれは深くて、切なくて、クドキでしっかり泣かされた。襲名披露としてはどうかと思ったが姫とは違う面が見られて良かった。

でもいちばん京屋さんらしいと思ったのは、はじめの、軍次に行かないでとすがる様子のうじうじした感じがいかにもと思え、さらに軍次が去ってその閉まった襖の方をまだ見やっている時の背中のラインが先代そっくりで、ハッとした。こんなところも似るものなのか。 

菊之助の藤の方はこけらの時とは格段に良くなって、位取りの高さ、母親の情をしっかり。
歌六の弥陀六も前回より手強さが増した。

時蔵の義経は気品あり情もあるがやや芝居をしすぎか。あまり情けある様子を出し過ぎると、「そんなんだったら始めからこんなこと命じるなよ」と思ってしまう。ある意味義経は非情の人であり、でも冷酷一徹ではない相反する人物像を何もしないことで見せる存在感がいる役なのだなと改めて難しさを感じた。

岡村柿紅 作
四、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)
山蔭右京    菊五郎
太郎冠者   松緑
侍女千枝   尾上右近
同 小枝    米吉
奥方玉の井   左團次

菊五郎と左團次の鉄板夫妻。悪かろうはずもなく、理屈抜きに楽しい。菊五郎の右京は奥方に頭が上がらないが可愛くて愛嬌あって、ちょっとスケベで、でも憎めないお殿様。歌舞伎座でやる時より、わずかに大袈裟にわかりやすくやってる気もして、とにかく可笑しい。
左團次の奥方も強面だけど、旦那様大事が高じての焼き餅ぶりが可笑しくも可愛げもあり。

松緑の太郎冠者も剽軽さがあり、軽やかで笑わせる。
右近米子の千枝小枝が可憐でかわいい。

昼夜とも古典たっぷりでとても充実。遠征して良かった~!
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博多座大歌舞伎・夜の部 [舞台]

6月6日(月)
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この博多座公演も雀右衛門襲名披露。播磨屋さんが予想に反して出ないのでどうしようか迷ったけど、顔ぶれと演目がいいのでやっぱり行くことに。

一、双蝶々曲輪日記 引窓(ひきまど)
南与兵衛後に南方十次兵衛   仁左衛門
女房お早   孝太郎
母お幸    竹三郎
三原伝造   権十郎
平岡丹平   友右衛門
濡髪長五郎   左團次

ニザ様の与兵衛は切ない。根は甘えん坊な与兵衛が母を実子に取られたような気持ちの寂しさを押し隠して母への孝行を尽くす優しさ。始めに二本差しに取り立てられて戻って来た時の浮き浮きした様子のかわいさとの対比がくっきり。情があって爽やかで、本当に素敵な与兵衛。

孝太郎のお早は手に入った役で、気立てが良く、夫と姑に尽くす優しくて良い女房。元は廓勤めの色気もさらりと見せる。
竹三郎のお幸が、実の息子と継子との板挟みの辛さ悲しさを十分に見せて泣かせる。
左團次の長五郎は実直で誠実な様子を見せた。
全体のアンサンブルが良くて、気持ちの良い舞台。

二、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)
芝雀改め雀右衛門
    藤十郎
    幹部俳優出演

仕切りは3月同様藤十郎。3月は出ていなかった孝太郎、菊之助、左團次らが加わった。時蔵も孝太郎も立ち役の拵えだったのが珍しかった。

三、本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)
十種香
八重垣姫   芝雀改め雀右衛門
腰元濡衣   時蔵
原小文治   松緑
白須賀六郎   菊之助
長尾謙信   左團次
花作り蓑作実は武田勝頼   菊五郎

3月の時姫、雪姫に続いてこの八重垣姫で赤姫三役制覇。襲名とは言え、この短期間に三姫やるとは、大変だろうな。
だがこの八重垣姫は大当たり。可憐で、少女らしい初々しさと、恋に突っ走る怖いもの知らずの強さがある。そしてなにより堂々とした華があって、惹きつけられた。
芝雀時代は、綺麗だけど万事控えめで押し出しが弱い感じがあったのに、すっかり貫禄が出てきてちょっとびっくり。3月の時姫雪姫は、まだまわりに立ててもらってる感じがしたが、この八重垣姫では文句なしのヒロイン。本当に立派で感心した。

菊五郎の勝頼、赤の着付けに紫の裃というど派手な衣装に負けない二枚目振り。幕開き一人で舞台にたたずむ姿の美しさに息を飲む。歌舞伎役者って恐ろしい。
時蔵の濡衣、哀れさ寂しさと、芯の強さも同時に見せる。時蔵さんは、かしずかれてるお姫様より、自立してる女が似合う。

左團次の謙信が老獪さを見せ、菊之助と松緑がきびきびした武者ぶりで颯爽とした様子を見せる。特に菊ちゃんのこういう役は珍しいので、御馳走な雰囲気。

    
四、女伊達(おんなだて)
女伊達木崎のお菊   菊之助
男伊達淀川の千蔵   亀三郎
同  中之島鳴平    亀寿

打ち出しは、すっきりと楽しく肩のこらない舞踊で。
菊之助の女伊達、ひたすら綺麗で格好いい。前半は黒の着物で芸者のような色っぽさ。後半は白地に墨絵のような着物が大人っぽくてあだな雰囲気。いや~、もう惚れ惚れするくらい素敵。

亀三郎と亀寿も鯔背な男伊達できりっとして格好いい。
お決まりの傘を使った立ち回りも楽しくて、気持ちよく打ち出し。
    
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ルノワール展 [美術]

国立新美術館
http://renoir.exhn.jp/

正直、また?と思わないでもないくらい、しょっちゅう開催されてる気がするルノワール展。今回はオルセーとオランジュリー美術館の名品を呼んであるとのこと。

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ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会
最大の呼び物はこの1枚。意外にも初来日とか。あら、そうだったっけ~?
意外なくらい、ルノワールにしては色数は少ない。男性はもちろん、女性の衣装もほとんどブルー系。でも絵から受ける印象はとても華やか。それはきっと描かれてる人々の顔が生き生き楽しそうだから。
この絵を見ると、いつもプッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」の第二幕を思い浮かべる。あれがミミ、あそこで踊ってるのがムゼッタ、あの山高帽の爺さんがムゼッタのパトロン。。。

展覧会の構成はほぼ年代順。若い頃の絵はクールベやマネの影響かしらと思う人物画があったり、モネっぽい風景画も。
でもやっぱりルノワールは人物画がいい。特に若い女性、あるいは少女。

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《ジュリー・マネ》あるいは《猫を抱く子ども》
ベルト・モリゾとウジェーヌ・マネ夫妻の娘のジュリー。両親が亡くなった後、ルノワールはマラルメと共にこの少女の後見人になったと言うから、親しい間柄だったのだろう、慈しむような愛情が感じられる。

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《ピアノを弾く少女たち》
ブルジョワのお嬢さんたちがピアノに向かっている、幸せそうな日常のワンシーン。こういうルノワールが好き。
この絵もレコードのジャケットなどでもお馴染み。

晩年の裸婦像など、いささかぶくぶくした体型のモデルの絵を見ると妙な安心感を覚えたりする(笑)が、それはさておき、生涯を通じて観る人が幸せを感じる絵を描き続けたルノワールはやっぱり凄いなと思う。取り立てて好きな画家ではないが、観るとやっぱり見に来て良かったと思える。
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團菊祭五月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

5月24日(火) 歌舞伎座

一、勢獅子音羽花籠(きおいじしおとわのはなかご)

寺嶋和史 初お目見得

鳶頭 = 尾上菊五郎(7代目)
鳶頭 = 中村吉右衛門(2代目)
鳶頭 = 尾上菊之助(5代目)
鳶頭 = 寺嶋和史

鳶頭 = 尾上松緑(4代目)
鳶頭 = 市川海老蔵(11代目)

鳶頭 = 市川團蔵(9代目)
茶屋女房 = 市村萬次郎(2代目)
茶屋女房 = 坂東秀調(5代目)
鳶頭 = 河原崎権十郎(4代目)

鳶の者 = 坂東亀三郎(5代目)
鳶の者 = 坂東亀寿(初代)
鳶の者 = 尾上松也(2代目)
芸者 = 中村梅枝(4代目)
鳶の者 = 中村萬太郎(初代)
鳶の者 = 坂東巳之助(2代目)
芸者 = 尾上右近(2代目)
芸者 = 中村種之助(初代)

鳶頭 = 中村錦之助(2代目)
鳶頭 = 中村又五郎(3代目)
芸者 = 中村雀右衛門(5代目)
芸者 = 中村時蔵(5代目)
芸者 = 中村魁春(2代目)

世話人 = 坂東彦三郎(8代目)
世話人 = 市川左團次(4代目)
鳶頭 = 中村梅玉(4代目)

若い鳶(亀亀萬)と芸者(梅右種)の踊りが楽しいとか、音羽屋播磨屋両御大が二人で踊るのが珍しいとか、海老と松のぼうふら踊りが面白いとか、松也と巳之助の獅子舞が上手い(特に足の巳之助)とか、魁春雀右衛門時蔵の芸者がさすがに綺麗だとか、いろいろあるんだけど、じゅふたんこと和史君の登場で全部かき消される。

本当は花道を歩いてくる予定だったけど、初日で転んで以来歩こうとせず(笑)、パパ菊ちゃんに抱かれて登場。
音羽屋播磨屋の両ジイジが挨拶している間はパパに抱かれて、後ろに並ぶ役者さんたちを興味津々の様子で見つめ、パパのご挨拶中は吉ジイジに抱かれ(またこの時の吉ジイジのデレデレと嬉しそうなこと!)、パパに「和史、ご挨拶は」と促されると拒否するようにお目々に手を当てて顔を隠す。
そして梅玉さんが「それじゃあ、皆で手を締めようじゃありませんか」というと、さっと手を前に出してスタンバイ。しっかり手締めに加わり、最後はお手振り。それも三方、1階から3階までまんべんなく。くっ、かわいすぎる。あざといくらい可愛い。挨拶できなくても、お扇子を放り投げても(それも吉ジイジに向かって)、誰にも叱られないどころか、むしろみんなが喜んじゃうのをわかってるとしか思えない。でも可愛いから許す。ジイジだけじゃなく、舞台に出てる役者さんもお客さんもみんなニコニコ、幸せ。

20年、30年後、花形に成長したじゅふたんを見て、このお目見えの時を思い出すんだろうな。今から楽しみ。長生きしなきゃ。

二、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)
大川端庚申塚の場
お嬢吉三 = 尾上菊之助(5代目)
お坊吉三 = 市川海老蔵(11代目)
夜鷹おとせ = 尾上右近(2代目)
和尚吉三 = 尾上松緑(4代目)

菊之助、辰之助、新之助が平成の三之助と呼ばれた時期があった。もうそのうち二人は名前が変わってしまったが、その三人で久々の三人吉三。
菊之助ははじめの娘姿の艶やかさから盗賊への豹変が鮮やかで、くだんの名台詞もまずまず。
海老蔵は着流しの浪人姿が似合う。台詞もファルセットじゃない分、ましだった。
松緑が二人の間に入って兄貴分らしい貫目を見せた。
右近のおとせが色気があって、行儀良い中にも夜鷹の生業を滲ませたのが出色。

三、時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)
本能寺馬盥の場
愛宕山連歌の場

武智光秀 = 尾上松緑(4代目)
小田春永 = 市川團蔵(9代目)
四王天但馬守 = 坂東亀寿(初代)
桔梗 = 中村梅枝(4代目)
森蘭丸 = 中村萬太郎(初代)
森力丸 = 坂東巳之助(2代目)
連歌師丈巴 = 市村橘太郎
園生の局 = 市川笑也(2代目)
矢代條介 = 市川男女蔵(6代目)
安田作兵衛 = 中村松江(6代目)
皐月 = 中村時蔵(5代目)

松緑は10年前にこの光秀を花形公演で初演した。その歳でやるには難しい役と思えたが力演で、思えばそれ以来この人に注目するようになった。
今回はさらに良くなって、内にために溜める苦悩を集中力と求心力で見せる。本能寺の場、春永の数々の執拗な嫌がらせやいじめ嫌味にじっと耐え、桔梗も下がらせてたった一人舞台に残り、屈辱の桐箱に蓋をし紐を掛ける。その一つ一つの手順の中に、押し殺した感情がこもって観るものも圧迫する。実際、客席も静まりかえって見守っていた。そうさせるだけの求心力があったのに目を見張った。
そして花道に掛かり、振り返って蘭丸と目を合わせた後、ぐぐぐっと内部からこみ上げてくる怒りを初めて表に出してドシンドシンと足を踏みならすようにして引っ込む姿の力強さと哀愁。
次の場では使者を迎えての抑制された態度から一変、二人を倒し但馬守を呼び寄せて、遂に本心を明らかにするところの鬱憤を晴らす様子が、たまりにたまったマグマが噴出するような力強さと悲壮感が溢れていた。幕が閉まってからも響き渡る笑い声に怨念がこもるようで、光秀の心の闇の深さが余計に突き刺さるようだった。

桔梗は梅枝で、楚々とした品の良い様子と、兄を心配する姿の息を詰めている様子に深い悲しみがある。なんかもう、梅枝と言えば薄幸が板についたかまぼこのようで、さらに松緑とのコンビだと二人で苦悩するのがはまりすぎ(昼の源蔵と戸浪もそう)。たまには、パーッと明るい脳天気な夫婦役とか観てみたい。

團蔵の春永が出色。癇癖で、自分と違う意見のものを許せない最強のパワハラ殿様。
時蔵の奥方皐月はやけにあっさりしていて、夫の置かれている境遇を理解してるのか?と思ってしまった。

四・男女道成寺
白拍子桜子実は狂言師左近 = 市川海老蔵(11代目)
所化 = 市川男女蔵(6代目)
所化 = 市川九團次(4代目)
所化 = 中村萬太郎(初代)
所化 = 坂東巳之助(2代目)
所化 = 市村竹松(6代目)
所化 = 尾上右近(2代目)
所化 = 中村種之助(初代)
所化 = 大谷廣松(2代目)
所化 = 市村橘太郎
白拍子花子 = 尾上菊之助(5代目)

本音を言っちゃうと、海老の踊りなんか要らんから、全部菊ちゃんに踊らせろー、と思うけど、そうはいっても美形の二人が揃うとやっぱりため息ものの美しさで、文句なしに楽しかった。それにしても菊ちゃんの余裕かましてる花子は凄い。艶やかで清冽な美しさで舞台を支配する。いやほんと、次は一人で娘道成寺踊って下さい。
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