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オルセーのナビ派展 [美術]

三菱一号館美術館
http://mimt.jp/nabis/

ゴーギャンの影響を受けて自らを「ナビ(預言者)」と呼んだボナール、ヴュイヤール、ドニ、セリュジエ、ヴァロットンら画家たちのグループの展覧会。日本では初のナビは展だそう。あら、そうなんだ。ちょっと意外。今回のは特にオルセー美術館所蔵のもので、以前のオルセー展などで観たことがある絵も多かった。
印象派よりもポスト印象派の方が好みな自分にはナビ派も好きなグループ。

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ポール・セリュジェ《タリスマン(護符)、愛の森を流れるアヴェン川》 1888年
セリュジェがゴーギャンの示唆を受けて描いた、いわばナビ派の出発点として有名な絵。
単純化され、大胆に原色を施された絵はほとんど抽象画のようで、何が描いてあるのかもはや判然としない。

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モーリス・ドニ《ミューズたち》 1893年
でも正直言うと、ゴーギャンの影響をはっきり感じるのは上のセリュジェくらいで、ほかの作品は雰囲気は全然違う。もっと様式化された感じ。このドニの絵も、「イラスト」のように単純化された女性たちや木々の表現、地面の落ち葉(?)のまるで文様のような描き方がとても面白い。ああ、単純化がゴーギャン的なのか。

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エドゥアール・ヴュイヤール《公園》1894年
子供や一家の団らん風景を多くテーマにしたのもナビ派の特徴の一つ。このヴュイヤールも公園で遊ぶ子供たちを生き生きと描いている。
と同時に、これは屏風なのだがとても装飾的。そう、ナビ派のキーワードは装飾的。

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ピエール・ボナール《ランプの下の昼食》1898年
装飾的で、どこか神秘的。あどけない子供や母子を描いても何か秘め事のようなはかなさを感じるのがナビ派かもしれない。同じ子供でもルノワールにはそういう視点はない。

とても綺麗で、一見わかりやすい絵が並ぶのに、なんとなくチクチクする刺激があるナビ派展。私はすごく好きでした。おすすめ。
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二月花形歌舞伎 昼の部 [舞台]

2月21日(火) 松竹座
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一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
渡海屋
大物浦
渡海屋銀平実は新中納言知盛   松也
女房お柳実は典侍の局     壱太郎
入江丹蔵    右近
相模五郎    種之助
源義経     新悟
武蔵坊弁慶   歌昇

松也大健闘の知盛。うん、しかし難しい役だな知盛って、と改めて。松也は銀平は颯爽としてまずまず。最難関は知盛と改まっての出。位取りが難しい。見た目は美しいが、能掛かりにも苦心。手負いとなってからはとにかく必死。それはわかる。でもその必死が生々しく、義太夫狂言の芝居でない。
でも去年の浅草以来松也にはずっともやもやしていたけど、それを払拭する知盛ではあった。課題も見えたと思うので頑張ってほしいな。

壱太郎はおりうより典侍局の方が良かった。世話女房のおりうって実は結構難しいのかも。もちろん、仕方話などきちんとやっていたけど、なんというか、女房らしい生活感のようなものがもう少し出てほしい。一方、局としては位の高さ、幼い帝への愛情をしっかり見せて立派。宮中にいたころの華やかな生活をしのばせるあでやかさも。こと切れる前、帝の顔を愛おしそうに見守り見守り息絶えたのが印象的だった。あの局は知盛とできてないな。死ぬ前にほとんど知盛を見なかった。

新悟の義経が、凛々しく、御大将の落ち着きと、同じ武将として知盛への敬意も見せて上々。新悟ちゃんは声が良いから、立ち役でもあまり線の細さを感じない。幕切れ、知盛への悼みと安徳帝へのいたわりの表情が静謐さの中に感じられて胸を打つ。

種之助の相模五郎、渡海屋では目一杯背伸びして悪役面してるのが、悪いけどかわいくて,ニコニコしてしまう。放り出されてからの魚尽くしがコミカルで楽しい。右近君との息もぴったり。御注進は小さい体を思いっきり大きく使ってきびきびと。力強くて颯爽。

右近の入江も渡海屋では剽軽な味を見せ、二度目の出では注進と立ち回りを颯爽と見せながら壮絶な最期を遂げる。そういえば今月は立ち役ばかり。女形も見たいなあ。

歌昇君弁慶は、貫禄不足は否めない。夜は抑えめだった顔芸が。。。あはは。ほら貝、ほとんど音が出ず。もうちょっと練習してね。

二、三人形(みつにんぎょう)
若衆   梅枝
奴    種之助
傾城   新悟

スッキリ男前な梅枝君、ほっそりしとやかな新悟君、コロコロ元気いっぱいな種ちゃん、とそれぞれ役に似合って華やかな舞台。三人とも特長が出て楽しい。でもやっぱり種ちゃんの踊りが一番!タップみたいな足拍子やぎばなど見せ場たっぷりで、客席も沸いていた。何より、本人がそれは楽しそうに踊っていてそれがこちらにも伝わってくる。見ていて幸せな気分にしてくれる。梅枝君新悟ちゃんも美しくてほんとに良い打出し。

三人形と連獅子は東京だったら幕見に通うな~。もっと見たかったわ。

今月の松竹座やおととしの南座の花形に比べると、この頃の正月の浅草はぬるく感じる。あんまり必死でやってる感じがなくて、そうでなくても客が入ってるし、っていう。去年も今年も、もう来年の浅草は見ないでいいかな、と思ったくらいだった。だから今月のような、アウェイでの公演は貴重。


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二月花形歌舞伎 夜の部 [舞台]

2月20日(月) 松竹座

ほとんどが20代の若手に上置きとして又五郎を迎えての花形公演。

祇園祭礼信仰記
一、金閣寺(きんかくじ)
雪姫    梅枝
此下東吉後に真柴久吉   歌昇
慶寿院尼   新悟
十河軍平実は佐藤正清   種之助
松永鬼藤太    右近
狩野之介直信    壱太郎
松永大膳    又五郎

梅枝初役の雪姫、期待通りというか上回る出来。楚々として品よく、はかなげで美しく、でも父の敵と切りかかる芯の強さもしっかり。眼目の爪先鼠は降りしきる花びらの中、夫を救いたい一念が奇跡を起こす姿が、まさに絵のよう。なんだろうこの安定感。何やっても梅子が出てくれば大丈夫、な感じ。もはや花形じゃないんじゃないか?歌舞伎座の本公演でも通用しそう。
それにしてもあれだな、梅子はどうしてこう踏まれたり縛られたりの姿が様になるのか。。。

又五郎の大膳も風格と大きさがあり、さすがの上置き。ただこの人はどこかいい人オーラが出てるので、大膳にしてはまとも過ぎる。エロさとか変人ぽさとかが薄い感じ。

歌昇の久吉は爽やかで、きっちり行儀良く。叔父様に教わったことを一生懸命なぞってるのが見えて好ましかった。顔芸も控えめ(^_^)台詞がちゃんと義太夫狂言になってた。昨夏の勉強会での松王丸から格段の進歩。やっぱり一日二日の勉強会より一ヶ月の公演は大きいんだなと実感。

壱太郎の直信、やや背伸びが感じられるがすっきり行儀よく。
右近の鬼藤太、珍しい赤っ面で一瞬だれかわからなかったが、やんちゃな若者の雰囲気。
軍平実は正清は種之助。力強さを見せる。幕切れで槍を構えて腰をぐっと落とした姿が立派。
新悟が慶寿院尼とは気の毒じゃないか、と見る前は思っていたが、どうしてなかなかの落ち着きとしっかりした位取りを見せた。ちょっと驚き。

正直言って、花形でこの演目をやるのは無理じゃない?と思っていたが、予想以上の完成度だった。ま、それもこれも梅枝君凄いに尽きるけど。


二、連獅子(れんじし)
狂言師右近後に親獅子の精   松也
狂言師左近後に仔獅子の精   右近

観る前から予想はしていたけど、子の方が明らかに上手い連獅子も珍しいな。
松也一人で踊ってる間はまだしも、二人で踊ってると目が右近君にどうしても引きつけられちゃう。でもしょうがないよなあ。誰が観たってケンケンが上手いもの。

ケンケンの足拍子の音の迫力がすごい。劇場の大きさもあるだろうけど、あんな音聞いたことない。ダンダンッと響く小気味よさ。に反して手先の優美さ。あくまでも息子側の分をわきまえた所作でありながら、遙かに凌駕してしまう。後シテ毛振りは終わりに向けてどんどんハイスピードに。客席も熱気を帯びて大喝采。最後は普段行儀のいいこの人には珍しく、ドヤ顔だったが、無理もなかろう。

松也も懸命に頑張っていて、少なくとも先月浅草の吉野山の忠信よりはずっと良かった。でも特に前シテの腰の据わらなさが気になった。
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猿若祭二月大歌舞伎 夜の部 [舞台]

2月12日(日) 歌舞伎座

今月最大の見ものは中村屋の二人の息子、勘太郎と長三郎の初舞台。夜の部は早々に完売の大人気。
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一、門出二人桃太郎(かどんでふたりももたろう)
三代目中村勘太郎 二代目中村長三郎 初舞台
劇中にて口上相勤め申し候

兄の桃太郎    初舞台勘太郎
弟の桃太郎    初舞台長三郎
お婆さん     時蔵
お爺さん     芝翫
息子勘作/鬼の総大将  勘九郎
嫁お鶴   七之助
犬彦   染五郎
猿彦   松緑
雉彦   菊之助
村の女   児太郎
村の男   橋之助
村の男   福之助
鬼     錦吾
鬼     亀蔵
村の男    彌十郎
庄屋妻お京   雀右衛門
吉備津神社巫女お春   魁春
庄屋高砂   梅玉
吉備津神社神主音羽    菊五郎

何を言っても野暮。あの可愛さの前では脱帽しかない。お兄ちゃんの勘太郎ちゃんは、もう自分がしっかりしなきゃ、という自覚があって必死で頑張ってる。弟の長三郎ちゃんはまだよくわかってないからマイペース。でも二人とも役者のDNAをしっかり持ってるのが感じられる。初日の様子をテレビで見たが、わずか十日足らずの間に上達して、台詞は大きな声でしっかり、見得もちゃんとして立派なもの。でもたとえうまくやれなくたって誰も叱ったりしないよ。二人が舞台に出てくるだけで、みんなにっこにこ。客席はもちろん、他の役者さんもうれしそう。引きつってるのは勘九郎と七之助だけ。
のりのりの染松菊の犬猿雉をはじめ、菊五郎御大も梅玉さんら幹部も顔をそろえる。考えたら、これだけ豪華な顔ぶれの初舞台ってなかなかないよな。祖父の十八代目がいないのだけが寂しいけれど、どこかで見守っているはず。
30年前の現勘九郎と七之助の初舞台は見ていない。今回初舞台の二人の30年後は多分見られないだろう。ただこの二人の将来に幸多かれと祈る。それが歌舞伎の未来にもつながっていると思うから。

二、絵本太功記(えほんたいこうき)
尼ヶ崎閑居の場
武智光秀    芝翫
操      魁春
真柴久吉     錦之助
佐藤正清     橋之助
初菊     孝太郎
武智十次郎    鴈治郎
皐月     秀太郎

前の桃太郎ではしゃぎすぎたのか、半分以上寝落ちしてしまった。でも起きていたとしてもあまり感心はしない舞台だったと思う。
襲名疲れか芝翫に勢いがない。ニンでないはずはないと思うが、深さも大きさも重さもない。この人がしっかりしなくて、これから先の時代物はだれがやるのか、なのにである。襲名を機に大きくなってくれることを期待しているが。

鴈治郎の十次郎はさすがにミスキャストと言わざるを得ない。いや、台詞回しはきちんとしているんだけど、少年の初々しさがなくつらい。桃太郎が年取って出てきたのかと思ってしまった。。。

女形陣は本役がそろう。特に魁春の操が良い。姑に仕え、夫に尽くす武家の妻女がこらえきれずに夫を責める口説きに真情がこもる。
秀太郎の皐月も、手ごわい老女の厳しさと、孫への情がこもる。
孝太郎の初菊が可憐。一途に十次郎を慕う様子がいじらしい。
錦之助の久吉が颯爽。んん~、でも錦之助さんが十次郎の方がニンだったのに。

三、梅ごよみ(うめごよみ)
向島三囲堤上の場より深川仲町裏河岸の場まで
丹次郎    染五郎
芸者仇吉   菊之助
芸者米八   勘九郎
千葉半次郎   萬太郎
許嫁お蝶   児太郎
本田近常   吉之丞
芸者政次    歌女之丞
太鼓持由次郎   松之助
番頭松兵衛   橘三郎
古鳥左文太   亀鶴
千葉藤兵衛   歌六

なんというか、芸者二人が男を取り合っての喧嘩の繰り返し。これに盗まれたお家の重宝探しが絡んで、最後は男はもともとの許嫁とくっつき、芸者二人は茫然のところで幕。
とストーリーを書いても意味がない舞台。芸者二人の意地の張り合いが見ものでそれだけとも言える。

勘九郎久々の女方、しかも世話物の芸者がピタリとはまって、深情けで癇癪もちで、でもかわいい女になっている。

菊之助は美人で気位も高く、でも丹次郎にはぞっこん。すでに米八とできていた丹次郎にいわば横恋慕の態だが、悪びれもせず突き進む。

とにかくこの二人のやりあいが面白くてわかせる。羽織ふんづけ事件とか、米八を仇吉が下駄で打つとか(加賀見山か!),傘を持っての立ち回りとか(髪結新三!)、パロディなのか知らないが、笑える。
意地悪もするけど、不思議と女の喧嘩にありがちな陰険さがないから、見ていてスカッとする。

そしてこの二人の間に入ってうろうろするのが染五郎の丹次郎なのだが、もうしょうがないなあ、という色男で、悪びれもせず二股どころか三股かけて、みんなにいい顔してるようないい加減な男だが、でも丹さんじゃしょうがないわね、ってなっちゃう。

許嫁のお蝶は児太郎で、仇吉と米八のさや当てをよそに、自分が本命と信じ切っている様子がなんか可笑しい。そして実際その通りになるんだけど。コタちゃんって、いわゆるコメディエンヌではなくて、本人はまじめにやってるその存在が微苦笑を誘う役が似合う。先月の「雁のたより」の殿様の愛妾とか。

歌六が留男よろしく二人の仲裁に入ってくる、粋な旦那。丹様より頼りがいがあってこちらの方がずっといいけどな。

最初の幕の大川を船で行く舞台装置が良くできていて素敵。歌舞伎らしいセット。

桃太郎だけ見て帰ってしまうお客さんがいてもったいない。太十はともかく、梅ごよみは見ないと損。

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猿若祭二月大歌舞伎 昼の部 [舞台]

2月6日 歌舞伎座

今月は勘九郎の二人の息子の初舞台。ということで猿若祭。昼は坊ちゃんずは出ないので、それほどの熱気はないが。

一、猿若江戸の初櫓(さるわかえどのはつやぐら)
猿若      勘九郎
出雲の阿国   七之助
若衆      宗之助
若衆      児太郎
若衆      橋之助
若衆      福之助
若衆      吉之丞
若衆      鶴松
福富屋女房ふく   萬次郎
奉行板倉勝重    彌十郎
福富屋万兵衛    鴈治郎

中村屋にはゆかりの演目で、十八代目勘三郎の襲名公演でも上演された、と思い出しながら見ていると感慨深い。演目そのものはたいして面白いとも思わないけど。
勘九郎の踊りはきびきびとして、下半身がしっかり安定しているのがよくわかる。なんかこう、ぴたっと動かない感じ。でいて軽やかで、本当に気持ちいい。
ストーリーは他愛もなくて、阿国と猿若が江戸にやってきた初めの話というだけだが、中村屋を寿ぐ猿若祭にはぴったり。
  
二、大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)
「黒髪」長唄連中

正木幸左衛門実は源頼朝    松緑
地獄谷の清左衛門実は文覚上人/北条時政   勘九郎
おます実は政子の前    七之助
清滝      児太郎
熊谷直実   竹松
畠山重忠   廣太郎
佐々木高綱    男寅
三浦義澄    福之助
下男六助    亀寿
家主弥次兵衛    團蔵
女房おふじ実は辰姫   時蔵

初見。それもそのはず、二代目松緑がやって以来やってなかった作品。先にあらすじ読んでもあまりに荒唐無稽でさっぱり面白そうに思えなかったが、意外にも楽しかった。
前半はセクハラまがいの女にだらしない寺子屋のお師匠さんが実は頼朝で、寺子になりたいと押しかけてきた娘が実は政子で、焼餅焼きの女房が実は辰姫という前妻で、といった風にみんな素性を偽っている。
なんだか、正月の国立劇場の復活狂言をコンパクトにしたようで、いろんな要素がぶっこまれていて、後半急展開になって、最後はぞろぞろみんな出てきての大団円。まじで、手拭い撒きが始まるんじゃないかと錯覚しそうになった。

松緑がモテモテの色男って、ちょっと無理じゃない?と思ったけど、意外にはまっていて、寺子の女の子たちにイチャイチャ手を出すのがなんだか楽しそう。頼朝とあらわしてからはすっきり男前な武将の様子。(逆に、頼朝ってそんな勇壮な武将かね?と思ったりするくらい)

時蔵が寺子にイチャイチャする亭主に焼餅を焼く女房で、それくらいで怒ってたらやってられないだろうレベルの焼餅。でもなんだかかわいい。そんなら家を出ていくの行かないのもじゃらじゃらしていて。そんなに好きなのに、政子と一緒になった方が頼朝が挙兵するにはいいと身を引く辛さを、長唄「黒髪」に乗せて演じるのが、さすがに大人の女の色香と怖さを見せる。

勘九郎が実は文覚上人で、頼朝に挙兵を促す院宣を渡す。でもはじめは怪しげな願人坊主風で砕けた口調。その切り替えがいまいちはっきりしない。この頃の勘九郎の癖は口跡がやや単調で、役による使い分けが不十分。
最後は二役で時政も。これは貫禄不足なのは否めない。

七の政子はここではかわいいお姫さま。のちの政子も相当の焼餅焼きだったように聞くが、頼朝が女にだらしないから妻がみんなそうなるのか。。。と思ってしまう。松緑との床入りでの恥じらう様子が初々しくかわいい。薙刀持って團蔵と闘おうとする様子が懸命。
児太郎が、政子の姉、実は局(?)で、落ち着きがあって、ちゃんと七より年上のしっかり者に見えたのは上出来。

もうちょっと脚本整理したらもっと面白くなるんじゃないかな。
   
  
河竹黙阿弥 作
三、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)
四谷見附より牢内言渡しまで  
野州無宿富蔵  菊五郎
女房おさよ    時蔵
生馬の眼八   團蔵
隅の隠居      歌六
うどん屋六兵衛   東蔵
浜田左内      彦三郎
牢名主松島奥五郎    左團次
藤岡藤十郎     梅玉
   
江戸時代末期に実際にあった御金蔵破りの盗人の話だが、通してのストーリーは断続的であまり意味はない。ただ、場面場面は独立した面白さがあって捨てがたい不思議な演目。中心は菊五郎と梅玉だが、見せ場は牢内のリアルな描写だ。牢内の上下関係、新入りがツルの多寡で待遇が変わる様子など、へええと思うような描写が続く。
菊五郎は盗人だが憎めない愛嬌ある富蔵を生き生きと演じる。嫌味なく、さらさらとおかしみをもって見せるのが極上。おでん売りの呼び声が絶妙。女房子供との別れでは情を見せる。

梅玉はお育ちのいい御家人が身を落として富蔵と一緒に御金蔵破りをするのが、ひょうひょうとしてかすかな滑稽味があり、曰く言い難い味。

時蔵が情のあるいい女房ぶり。
彦三郎が情け深い役人で、粋な計らいで富蔵と家族を合わせてやるのが良い。実際にもこんな役人がいたんだろうか。
團蔵が本領発揮の嫌味で憎々しい敵役。
左団次、歌六ら牢内の面々がいかにもという感じで面白い。誰が誰かわからないし。松緑、菊之助らもちょいと出てくるのが贅沢。
   
しかしこの演目、いつまで上演されるだろうなあ、と思うある意味絶滅危惧種的演目ではある。

四、扇獅子(おうぎじし)
鳶頭   梅玉
芸者   雀右衛門
   
打って変わって、粋で洒脱な踊りの演目。梅玉の鳶頭が颯爽としていなせ。雀右衛門の芸者もあだっぽい色気を見せる。絡みがトンボを切ったり派手で、口直しにはぴったりの気持ちいい舞台。
前の演目でひげも伸び放題のむさ苦しい姿から、10分で変身してきた梅玉さんが見ものでもある。

   
  
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春日大社 千年の至宝展 [美術]

東京国立博物館
http://kasuga2017.jp/index.html

奈良の春日大社は神護景雲2年(768年)に造営が始まったという国内でも有数の歴史を持つ神社。また、伊勢神宮同様20年ごとに式年造替という社殿の建て替えや修繕が行なわれ、平成28年(2016年)の御造替は60回目を数えるとのこと。それを記念しての大規模な展覧会。

第一章では、武甕槌命(たけみかづちのみこと)が鹿に乗り、常陸国鹿島(ひたちのくにかしま)から春日の地に降り立たれたことに始まる春日大社の縁起から、御神鹿にまつわるもの。
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鹿島立神影図(かしまだちしんえいず)
南北朝~室町時代・14~15世紀
鹿にしては大きすぎる気もするけど、まあ御神鹿だから。御神鹿にはこれと同じように背に榊を乗せているのが特徴か。

また、普段は拝観できない本殿の第2殿をほぼ実物大で再現。これも見逃せない。

第2章 平安の正倉院では、奉納されたことなどの楽器や、刀類。

第3章 春日信仰をめぐる美的世界 は春日曼荼羅と呼ばれる春日大社を描いた絵図や、神仏習合の思想の広がりを受け、御神体を仏像と表した仏像など。
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春日宮曼荼羅(かすがみやまんだら)
鎌倉時代・13世紀
ここに描かれた大社の姿は今もほとんど変わっていないそう。

第4章 奉納された武具では、鎧兜類。
春日大社は天皇公家だけでなく、武士の信仰も集めた。
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国宝 赤糸威大鎧(梅鶯飾)(あかいとおどしおおよろい うめうぐいすかざり)
鎌倉時代・13世紀
写真ではわからないけど、透かし彫りの梅や鶯の装飾がそれは見事で美しい。誰が身に着けたものなのかクレジットがなかったのが惜しい。それともはじめから奉納用に作られて実際には着用されなかったものだろうか。

第5章 神々に捧げる芸能 
個人的にいちばん興味深かったのはこの章。今に至るまで祭礼の際に奉納される舞楽や能などの面や衣装など。特に舞楽のものはあまり目にする機会がないので興味津々。
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重要文化財 舞楽面 納曽利(ぶがくめん なそり)
平安時代・12世紀
無表情な能の面に比べてなんとも迫力いっぱい。納曽利は龍が舞い遊ぶ様を表わしたとされる舞とのことで、ということはこれは龍の面なんだな。

また会場には鼉太鼓(だだいこ)という舞楽で使う巨大な太鼓も展示。火焔形の装飾板に龍の飾りがついた高さ7メートルというもので、側で見ると仰ぎ見る大きさ。こんなの実際に叩くのか?と思ってしまったが、本当に鳴らすらしい。

第6章 春日大社の式年造替
最後の章は御造替に関わる記録と、造替に伴い新しいものと取り換えるために神殿から降ろされたもの(御撤下:神に奉られていた御道具などが役目を終え、神殿から下ろされること)、狛犬、獅子の像など。
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会場では春日大社の回廊沿いにずらりと並んでいる釣燈籠を23基展示。燈籠自体は新しいものだが雰囲気が伝わる。しかもこのコーナーは撮影可能。

とにかく展示品の種類が多く、そのどれもが国宝重要文化財というお宝ばかり。それも普段は見ることができないものが多いというから、必見の展覧会。
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並河靖之七宝展 [美術]

東京都庭園美術館
http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/170114-0409_namikawa.html

明治に活動した七宝作家、並河靖之の展覧会。
並河の名前を初めて知ったのは、京都にある旧並河住居を訪ねた時。お庭も素敵なところで、作品も小さな美術館として展示してあって、仰天した。
七宝には有線と無線があるそうで、並河のは有線七宝なのだが、作品を見てこの細かい模様を一体どうやって有線で描けるのか、信じられない気持ちになる。

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藤草花文花瓶
代表作の一つ。この細かい藤の花も葉も茎も、たとえ筆で描いても難しかろうと思うのにこれが七宝というから恐れ入る。
また、この地色の黒の発色も並河の特徴で「黒色透明釉薬」というものらしい。漆黒の背景に浮かび上がる花鳥画のあでやかさ。

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菊唐草文細首小花瓶
こちらは目も鮮やかな空色の地。なんとなく洋風。実際、並河の作品は万国博に出品されて海外での評価が高く、実は日本国内に残っている作品は少ないのだとか。

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七宝下図「桜花蝶文皿」
この展覧会では、出来上がった作品だけでなく、多くの下絵も展示している。下絵の段階から、出来上がった状態を見込んで釉薬の指示を書き込んだものなどもあって実に細かい作業だと想像できる。

輸出はもちろん、皇室からも下賜品などの注文も受け、隆盛を誇った並河七宝。また、明治29年(1896)には並河は帝室技芸員となり、当代一流の工芸家としての地位を確立。
しかしやがて大正に入ると七宝産業が下火となり、並河も工房を閉じ、その名前も忘れられていったという。
近年明治工芸の再評価とともに並河の作品も見直しが進んでいるが、もうその技術は途絶えて正確にはどうやって制作していたかわからないのだとか。技術って、一度途絶えるとダメなんだよね。工芸だけでなく、芸術はなんでもそう。改めて継承の大事さにも思いを馳せた。

とにかく細かいので目がしょぼしょぼになるけど、それは素晴らしい作品ばかり。お見逃しなく。
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染付誕生400年展 [美術]

根津美術館
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html

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伊万里焼、鍋島、有田などの備前磁器の展覧会。備前磁器といっても様々だが、この展覧会は実業家の山本正之氏から寄贈された作品を中心に、17世紀から19世紀までの肥前磁器を概観するもの。
コレクターの趣味を反映してか、色絵は少なめで、染付、青磁などの品の良い作品が多いのが特徴。
特に初期伊万里の素朴な味わいの絵付けの染付など,磁器の歴史をたどるうえでも貴重な品がある。

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染付鷺矢羽根文皿 肥前
17世紀
中央の青、周囲の藍色と微妙に色合いが違うのが珍しい。白鷺は備前磁器では定番の柄らしい。

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染付蝶文稜花皿 肥前
17世紀
四角い色紙と蝶の取り合わせがモダンな雰囲気を出す。白地の部分が初期に比べるとずっと透明感を増している。

色絵ももちろんあって、初期のは九谷を思わせる色合いのがあって驚き。

個人的にいちばん好みはやっぱり鍋島の皿類。柄の洗練、絵付けの技術の高さ、どれも舌を巻くような作品が並ぶ。

数年前にサントリー美術館であった鍋島展と似た作品も多かったが、これは鍋島藩窯としてがらもある程度規範があったため。

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色絵寿字文独楽形鉢 肥前
金襴手の豪華な色絵は主に輸出品。派手だもんね。これはどうかな。漢字が入ってるから国内用か。吉祥模様のおめでたい柄。

焼き物は本当にいろいろあるけれど、備前磁器は素人にも楽しめる素敵な器がたくさんあって、好き。難しいこと考えずに楽しめる展覧会。


なお、別室では本来一対であった根津所蔵の「帝釈天立像」と奈良・興福寺の「梵天立像」を特別に展示。これも必見。
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日本画の教科書 京都編展 [美術]

山種美術館
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2016/nihonga.html

日本画、特に明治以降の作家のコレクションで知られる山種の所蔵品の中から選りすぐりのものを、京都画壇と東京画壇に分けて見せる展覧会の、まずは京都編。教科書と謳うだけあって、京都画壇を代表する画家たちの名品がずらりと並ぶ。

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竹内栖鳳「班猫」
毛並みのリアルさもさることながら、目に引き込まれそう。妖しい光を放つ魔性の猫の瞳。栖鳳はほかにも数点あり、生物の絵はどれも写実を超えて生き生きとしている。

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上村松園「牡丹雪」
松園の女性はどれも清らかで美しい。現実にはいそうでいない理想の女性という感じがする。

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福田平八郎「筍」
この展覧会、平八郎も多く見られたのが個人的にはうれしかった。日本画の感覚とモダンデザインが見事に融合した平八郎の絵が好きだ。この「筍」も写実的に描かれた筍と地面に散った葉の幾何学模様に近い背景のコントラストが端正で美しい。

この他、村上華岳《裸婦図》、土田麦僊《大原女》といった名作が並ぶ。京都画壇と東京画壇の違いは、東京のを観ないとわからないが、そんなことはともかくどれも見ごたえがあって、美しく、楽しい。
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壽 初春大歌舞伎 昼の部 [舞台]

1月24日(火) 歌舞伎座

大政奉還百五十年
真山青果 作
真山美保 演出
一、将軍江戸を去る(しょうぐんえどをさる)
徳川慶喜   染五郎
山岡鉄太郎   愛之助
土肥庄次郎   廣太郎
吉崎角之助   男寅
間宮金八郎   種之助
天野八郎    歌昇
高橋伊勢守   又五郎

大政奉還150年記念とやらでの上演らしいが、それにしたって正月の幕開きにやる演目じゃないよなあ。私が見たのは正月明けてからだったけど、初日とか初芝居の最初の演目がこれだったらいやだ。何を考えて演目決めてるのかとどんよりする。
まあそれはともかく。
染五郎の慶喜は一人の人間としての慶喜の苦悩や、悔しさが真っ直ぐに感じられた。一度は不戦を決めながら、諦めきれない怒りと苛立ちが胸を突く。台詞もところどころ播磨屋写しを感じさせる。歌い上げる名調子ではなくほどほどに抑えた口跡がむしろ好感。

愛之助の鉄太郎は熱血漢で自分の信じる道を突き進む。相手が将軍でも臆することなく持論を訴える。口跡のいい人なので気持ちよく聞いていられるが、内容は慶喜でなくても鬱陶しい(苦笑)。尊王と勤王の違いとか、どうでもいいとか思っちゃう。青果がこれを書いた時代ですかね。

又五郎の伊勢守が実直で沈着な管理の様子。ほかの登場人物がみんな熱弁をふるってるので、貴重な存在。

幕開きの彰義隊の面々は歌昇、種之助、廣太郎、男寅ら若手を中心に、血気盛んな様子を見せる。歌昇がちょっとお兄さん格になってるのが胸熱。

二、大津絵道成寺(おおつえどうじょうじ)
愛之助五変化
藤娘
鷹匠
座頭     愛之助
船頭
大津絵の鬼

弁慶   歌昇
犬    種之助
外方   吉之丞
矢の根の五郎   染五郎

愛之助が五役を踊り分ける変化舞踊。久々に見た女方はちょっといかついけどそれほど違和感なく、きれいだった。でも踊りはやっぱり立ち役のほうが様になっている。
見台抜けや早変わりなどもあって楽しい。やっと正月気分。
歌昇の弁慶がなかなか大きくて立派。
種之助の犬、ほんとに犬。かわいいったらありゃしない。あれは反則。
最後に染五郎が押し戻しで颯爽とした五郎を見せる。こういうの好きなんだろうな、本人も楽しそう。


伊賀越道中双六
三、沼津(ぬまづ)
呉服屋十兵衛   吉右衛門
お米       雀右衛門
荷持安兵衛   吉之丞
池添孫八    又五郎
雲助平作    歌六

吉右衛門当たり役の一つ。歌六、雀右衛門とそろって悪かろうはずがない。
今回の沼津は、特に前半が軽やかにトントンと進む。若々しい吉右衛門の十兵衛と歌六の平作の道行が明るく楽しい。お決まりの客席降りでは、平作が「歌舞伎が好きでんねん」十兵衛「へえ、で贔屓は?」平「中村吉右衛門!」十「あんなん大したことない、わしは中村歌六」といったやり取りがあって、ほっこりした。今までの沼津でこんなやり取りなかったよなあ。

その後の安兵衛を巻き込んでのやりとりもチャリ場めいてのどか。それがお米が印籠を盗もうとしたところから暗転するのが、気がついたらそうなっていたというような自然な空気の変化なのに驚く。

播磨屋は前半と後半で口跡が変わるわけじゃない。最初から最後まで町人。でも変わらない中で心の動きがはっきり伝わる。父と妹と知っての動揺、敵味方と知っての苦悩、父の死に報いるため自分も死を覚悟して股五郎の居所を知らせる絶唱とも言うべき声。言葉の意味だけでなく声のト-ンそのもに泣く。

歌六の平作も正直者で,ちょっと剽軽なところもある老人。娘思いで、その夫の敵討ちを助けるために自らの命を投げ出す。前半と後半のコントラストが効いて、娘と、初めて対面した息子への情の深さに涙々。
雀右衛門のお米は元は傾城の華やぎを保ちつつも今は貧しい生活の中で夫を思う女の悲しさを見せる。誠実な人柄ゆえに、夫志津馬の怪我の責めを負う辛さ。志津馬の怪我を直したい一心で十兵衛の印籠を盗み、訳を語る口説きが切々として真情がこもり泣かせる。
十兵衛が去った後、平作とお米が抱き合って泣くところに親子の切なさがあふれていた。

二時間近い芝居なのに、まったく長さを感じさせない、とても緊密した空気の舞台で、それでいて前半の軽さもあってさらさらと進んでいって、なのに目が離せないという、それはそれは充実した芝居だった。
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