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氷艶 hyoen2017 ―破沙羅(ばさら)― [舞台]

5月22日(月) 夜の部
国立代々木競技場 第一体育館

hyouen.jpg
仁木弾正直則 : 市川染五郎
源九郎判官義経 : 髙橋大輔
女神稲生 : 荒川静香


岩長姫 : 市川笑也
奴江戸兵衛 : 澤村宗之助
鬼佐渡坊 : 大谷廣太郎
猿田彦後に武蔵坊弁慶 : 中村亀鶴

静御前 : 鈴木明子
瓊瓊杵尊(ににぎのみこと): 織田信成
木花開耶姫(このはなさくやひめ) : 浅田 舞
天鈿女命(あめのうずめのみこと):村上佳菜子

荒獅子男之助 : 大島 淳
奴一平 : 鈴木誠一
渋谷金王丸 : 蝦名秀太
鳶頭彰吉 : 佐々木彰生

地獄太夫:中村蝶紫
蘇我入鹿:澤村國矢
石川五右衛門:片岡松十郎
酒呑童子:中村かなめ

演奏:DRUM TAO
脚本:戸部和久
演出:市川染五郎
振付・監修:尾上菊之丞
振付:宮本賢二
振付:東京ゲゲゲイ


便宜上マイカテゴリーを「舞台」にしたけど、会場はスケートリンク。
フィギュアスケートと歌舞伎のコラボ、って何それ。わけわかんない。と公演が発表になったとき誰もがぽかーんとしてしまった。なので見る気もなかったのだが、始まってみるとtwitterは絶賛の嵐。「絶対、見なきゃ損!」という声に動かされて、最終日当日にチケットゲットして見てきました。見てびっくり。いやああ、何これ、面白い!

ストーリーは割愛するが、簡単に言えば、悪を代表して仁木弾正と岩長姫が手を組み、義経達善を代表する者達と戦いを繰り広げる。実に劇画的。
主に善側はスケーター、悪側は歌舞伎役者。でも笑也を始め染五郎らもスケート靴を履いて滑るシーンもある。えええ!

衣装担当はVOGUE JAPANで歌舞伎とも違う,でも歌舞伎をイメージはしてるかなというオリジナル。歌舞伎役者の化粧も普段とは全く違う。スケーターも裾の長い衣装の人もいて大変そう。

席は上の方だったので、表情など細かいところはわからない。広いリンクを狭しと動き、舞うスケーターの動きは圧巻。もちろん台詞はないのに、演技だけで力強さや優しさ、強さも弱さも表現する美しさに圧倒された。
特に主役義経のの高橋大輔さん、スケートはもちろん、台の上でのスケート靴を脱いでのダンスも素晴らしくて目が釘付け。
圧倒的な存在感だったのは荒川静香さん。冒頭の女神の神々しさ、二役目の悪役蛇髪姫の魅力あふれるキレキレの演技も凄かった。
個人的にうれしかったのは、昔から好きだった鈴木明子さんの静と髙橋さんの義経によるペアダンスというか連れ舞というか、が見られたこと。やっぱり明子ちゃんのスケートはたおやかで美しいわ。

先頃引退を発表したばかりの村上佳菜子ちゃんも活発な姫で躍動的。
清楚な美しさの浅田舞さん、キリリとした織田信成さん、とそれぞれ持ち味を出して見せ場があり、わーすごいすごい、スケートって楽しい、面白い、と引き込まれてしまった。

歌舞伎側はといえば、スケートを履いての動きでは太刀打ちできない(それでも滑ってるだけで感心)が、笑也と染五郎のダブル宙乗りや、染五郎の空中回転ぐるんぐるんとか、またこちらは台詞があるので歌舞伎の様式美を見せる。(いやしかし、あの髪型は何なんだ。まるで湯婆婆じゃないか。せっかくの仁木なのに)

大活躍は唯一スケート経験者の笑也さんで、裾の長い衣装をものともせず自在に動き回り、後半では毛振りまで見せる。え、笑也さんの毛振りって、歌舞伎の舞台でも見たことないんですけど。。。スケート靴履いて毛振りなんてできるものなのか。びっくり。

唯一善人側の亀鶴さん、前半はスケートしてなかったのに、後半生き返ってからスケートで滑り出したのでびっくり(笑) 弁慶の大きさがあって格好良かった。

最後は両者入り乱れての立ち回り。舞台と違ってとにかくスピード感が半端ない。その上広いリンクで繰り広げられる総力戦は迫力いっぱいで手に汗握る。

舞台装置はないので、チームラボが作り出すプロジェクションマッピングや照明が効果的に使われて、これも新しい。笑也さんの映像と滑る髙橋さんの共演というのも面白かった。

音楽もスピーカーから流れる歌もあれば、DRUM TAOと言う太鼓のグループが繰り広げる生演奏も迫力満点。

まあとにかく最初から最後まで、初めて見る面白さにあっけにとられて見入ってしまった。発表されたときは、染ちゃん頭おかしい、と思ったけど、見た後はもっとおかしいと思ってしまった。こんなの普通の頭じゃ思いつきもしないよ。妄想を妄想に終わらせず実現する染ちゃんの力に脱帽。

またやってほしいなあ、と思うけど、最初にこんなのやっちゃったらハードル高くなって難しいかも。しかも来年は高麗屋襲名だから当分は歌舞伎に専念かな。
でもとにかく、こんな素敵なもの見せてくれてありがとう、染ちゃん。皆さんに怪我がなく終わって本当に良かったわ。

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團菊祭五月大歌舞伎昼の部 [舞台]

歌舞伎座

一、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり )
鶴ヶ岡八幡社頭の場
梶原平三   亀三郎改め彦三郎
俣野五郎   亀寿改め坂東亀蔵
剣菱呑助   松緑
奴菊平    菊之助
山口十郎   巳之助
川島八平   廣松
岡崎将監   男寅
森村兵衛   橘太郎
梢       尾上右近
六郎太夫   團蔵
大庭三郎   彦三郎改め楽善

昼の襲名披露狂言。
新彦三郎は梶原でも朗々たる美声を惜しげもなく聞かせる。爽やかで実のある武士。派手さはないが手堅くきっちりやっていて好ましい。台詞に関しては本当にいい声で聞き惚れるが、これからは緩急とか強弱とかメリハリがつくともっと良くなるかと。ずっと同じ声色ではいい声でも飽きる。美声と名調子は違う。ここが彦三郎さんの今後の課題の一つだろう。
楽善の大庭が大名らしい貫禄の中に、嫌みさをにじませる。
亀蔵の俣野が軽薄な若者らしい勢い。

團蔵が情のある老父、娘への愛情と,気概を見せる。
右近の梢が可憐。

菊之助と松緑がごちそう。特に松緑は普通は酒尽くしのところを襲名に因んだ内容で心温まる。
全体にバランスの取れたいい舞台だった。
おまけ、菊十郎さんが牢役人で元気な姿を見せてくれたのもうれしかった。
     
義経千本桜
二、吉野山(よしのやま)
佐藤忠信実は源九郎狐  海老蔵
逸見藤太   男女蔵
静御前   菊之助

全編竹本。舞台装置も普通と違っていて、竹本の前奏が終わると背景が割れて奥から静が出てくる。以前玉三郎がやったのと同じような感じか。でも玉様がやはり竹本だけでやったときは、本行通り女雛男雛がなかったが今回はあったりと全部同じではないようだった。

菊之助の静は綺麗だけれど、いまいち色気が不足。まさかに女武者を強調しているわけではないだろうが、白拍子の色気や、義経を慕う恋心などがあまり感じられなかった。
海老蔵の忠信は,颯爽として男前。でも狐の本性の見せ方が可愛くなかった。これは愛嬌で見せてほしいところ。
男女蔵の藤太はきっちり。もうちょっとはじけてもいいんじゃない、くらい。
菊海老は美しくて絵になる。でもなんかそれだけだったな、な吉野山。う~ん、未来の團菊がこれでは困る。

新皿屋舗月雨暈
三、魚屋宗五郎 ( さかなやそうごろう )
魚屋宗五郎   菊五郎
女房おはま   時蔵
磯部主計之助   松緑
召使おなぎ   梅枝
酒屋丁稚与吉   初お目見得寺嶋眞秀
岩上典蔵    市蔵
小奴三吉    権十郎
菊茶屋女房おみつ   萬次郎
父太兵衛    團蔵
浦戸十左衛門  左團次

近頃菊五郎の文七元結やこの魚屋宗五郎なんかを見ると、無性に泣ける。なんだかほんとにしみじみしてしまうんだよね。可笑しくて悲しくて愛おしくて、ほろっとくる。サラサラと流れるようで、ところどころにぐっとくる。上手いってこういうこと。まさに超一級芸術品。
時蔵のおはまも、菊五郎の息を心得てピタリと寄り添う女房振りが心地良い。やっぱりこのお二人はゴールデンコンビ。
権十郎の三吉も軽さと情があっていい案配。
梅枝のおなぎが行儀良く程がいい。
團蔵の太兵衛も手堅い。今月は石切梶原の六郎太夫と親父役二つで良い味だが、ちょっとついてしまった感はありもったいない。

眞秀ちゃんの丁稚は、一人で花道を出てきてまた引っ込んでいく大役。しっかり台詞も大きな声で言えていた。ただ月初より月末の方が台詞にちょっと癖がついてしまっていたのが気になった。誰か直してあげてほしいけど。

今年の團菊祭は、襲名だの初お目見えだの何のかんのあってもやっぱり菊五郎健在を印象づけた。親父様あっての音羽屋。まだまだ若手には譲りませんぜ、と言う自信みなぎる舞台。菊五郎万歳。

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今月の祝幕。派手さはないが品が良くて良いデザイン。坂東ご一家に似つかわしい。
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團菊祭五月大歌舞伎夜の部 [舞台]

今年の團菊祭は、梅幸と羽左衛門の追善に加え、
初 代坂東楽 善
九代目坂東彦三郎 襲名披露狂言
三代目坂東亀 蔵
六代目坂東亀三郎 初舞台
さらに菊五郎の孫で寺島しのぶの長男、真秀君初お目見えと賑やかこの上ない。

一、壽曽我対面(ことぶきそがのたいめん )
劇中にて襲名口上申し上げ候
工藤祐経   菊五郎
曽我五郎   亀三郎改め彦三郎
近江小藤太  亀寿改め坂東亀蔵
八幡三郎   松也
化粧坂少将  梅枝
秦野四郎    竹松
鬼王家臣亀丸   初舞台亀三郎
梶原平次景高   橘太郎
鬼王新左衛門   権十郎
梶原平三景時   家橘
大磯の虎      萬次郎
曽我十郎     時蔵
小林朝比奈    彦三郎改め楽善

夜の部の襲名披露狂言。幕切れに劇中口上がつく。
幕が開くと既に工藤が高座に座っている短縮版。
意外にも初役の菊五郎の工藤が良い。貫禄とともに兄弟への包容力さえ感じさせるような大きさ。
五郎の新彦三郎が力みなぎる様子で,いつもに増して声がビンビンと三階まで響く。荒事らしいやんちゃな様子、工藤を敵と狙う一心が体中からあふれて力強い。
時蔵十郎がおっとりと品が良い。
新楽善の朝比奈も時代物らしい鷹揚さとおおらかさがあり、最近はお声が小さくなってこられてちょっと心配していたが、どうしてどうして、襲名を機にまだまだ元気なところを見せた。

初お目見えの亀三郎ちゃんは、大叔父に当たる権十郎に手を引かれて花道から登場。大きな声で台詞も言って拍手喝采。出てきて最初に座ったとき、花道の方を向いてたので大叔父さんにぐいっと回されてました。幕切れの口上でもちゃんとご挨拶できて、ほんとに可愛いかった。

二、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
御殿
床下
対決
刃傷
〈御殿〉
乳人政岡    菊之助
八汐      歌六
沖の井    梅枝
松島    尾上右近
栄御前     魁春


〈床下〉
仁木弾正    海老蔵
荒獅子男之助   松緑


〈対決・刃傷〉
細川勝元   梅玉
山名宗全    友右衛門
大江鬼貫    右之助
黒沢官蔵    九團次
山中鹿之助    廣松
渡辺外記左衛門   市蔵
渡辺民部      右團次
仁木弾正    海老蔵

菊、海老ともに不満が残る。菊之助政岡は飯炊きがないのは仕方ないが、型どおりの域を出ず千松の遺骸に取り縋っての述懐で泣かされるに至らず。きっちりはやっているのだが、もっとできるはずと思ってしまう。

歌六が八汐を楽しそうにやっている。前まではまだそう余裕はなかったと思うが、今回はすっかり持ち役になって、千松に刺した懐剣グリグリも躊躇なく。
魁春の栄御前、全然恐そうじゃない。むしろ優しそうに毒入り菓子をすすめるのがかえって恐ろしい。魁春さんがこういう老け役になっていくのはまだ惜しい気がする。時姫とか戸無瀬とか常盤御前とか素敵なんだもの。もっと立女形として活躍してほしいなあ。政岡ももう一度やってほしい。

床下は松緑の男之助が荒事らしい力強さを見せる。
海老蔵の仁木は無気味さはまずまずだが,目ばかりギラギラさせるのが興ざめ。

対決・刃傷も海老蔵の仁木は細かい芝居は見せるのだが人物が小さく見えてしまうのはなぜなのかなあ。刃傷の立ち回りだけは迫力あるが。
ここでは梅玉の勝元が圧巻。流れるような台詞回しが素晴らしく、皮肉や冷笑を織り交ぜながら仁木を追い込んでいく様がひたすらかっこいい。菊之助も海老蔵もかすむ,この演目いちばんの見もの。
    
三、四変化 弥生の花浅草祭(やよいのはなあさくさまつり )
神功皇后と武内宿禰
三社祭
通人・野暮大尽
石橋

武内宿禰      松緑
悪玉
国侍
獅子の精

神功皇后     亀寿改め坂東亀蔵
善玉
通人
獅子の精

三段返しの変化舞踊。襲名の亀蔵に松緑が付き合う。これが最高に楽しい。松緑はともかく、新亀蔵が踊りの上手い人とは申し訳ないが認識していなかった。だって今まで芯で踊ること滅多になかったし。それが、家元で名手の松緑相手に全く引けを取らない。特に善玉でのキビキビした動き、通人の柔らかさ、最後の獅子の颯爽たる様子とそれぞれにきちんと踊り分けてお見事。
松緑の方はもちろんどれも上手いが、とにかく楽しそう。普段から親しい亀蔵の襲名に付き合えるのがうれしくて仕方ない様子。
二人とも、40分くらい踊り続けて最後に毛振りって相当きついと思うが、最後までパワーが衰えるどころか、ぐいぐい持って行く感じが凄かった。
あー、アタシやっぱり女形より立ち役の踊りの方が好きなんだわ、って改めて思った。ほんとに楽しかった~。
襲名だからだけでなく、これからも二人で踊るのが観たい。
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松竹座五月花形歌舞伎・昼の部 [舞台]

5月4日(木) 松竹座

日にちもたってしまったので、メモ程度に。

一、戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)
浪花の次郎作  中村 勘九郎
禿たより     中村 児太郎
吾妻の与四郎  中村 歌昇

踊り上手の勘九郎と一緒に踊るなんて、歌昇君大丈夫か、とちょっと心配したが,頑張って踊ってた。おばちゃん胸熱。もうちょっと柔らかさが出るとなお良いけど。
勘九郎はさすがにきっぱりと大きな動きで見栄えがする。
児太郎は膝を折って小さく見せて愛らしい。でもコタちゃんは意外と大人っぽいので禿より芸者なんかの方が似合うなあ。

二、金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)
大喜利所作事 双面道成寺(ふたおもてどうじょうじ)
市川猿之助宙乗り相勤め申し候
清姫
藤原忠文
白拍子花子実は清姫の霊    市川 猿之助
狂言師升六実は忠文の霊

北白川の安珍実は文珠丸頼光   中村 勘九郎
七綾姫     中村 七之助
田原藤太    中村 歌昇
能力白雲    市川 弘太郎
およし実は侍女桜木   市川 笑三郎
寂莫法印    市川 猿弥
如月尼     市川 門之助

今月の公演中に宙乗り1000回を達成した猿之助得意の演目。
女形の清姫、立ち役の忠文、どちらも嫉妬の念に取り憑かれた様が狂気にかられて恐ろしい。所作事の 双面道成寺ではその二人を軽々と行き来しつつ踊る妙技を堪能。

役の格から言うと勘九郎七之助がやるような役ではなさそうだが,頼光と七綾姫を二人が楽しそうに付き合う。。特に勘九郎のこういう貴公子みたいな役ってどちらかというと珍しいので面白かった。あら、意外と似合うじゃん、王子様風な役も。七之助の姫は文句なしに綺麗で楚々として、でもちょっとツンとしてるところがお似合い。
回りは澤瀉屋の面々が手堅く務める。笑三郎さんのこういうお役、好きだわ。
双面道成寺の押し戻しに歌昇。荒事大好きなのが体中からあふれてて微笑ましい。


夜の部は野崎村だけ幕見。

新版歌祭文
一、野崎村(のざきむら)
お光   中村 七之助
久松   中村 歌昇
お染    中村 児太郎
後家お常  坂東 竹三郎
百姓久作  坂東 彌十郎

七之助のお光は再演。婚礼を前にしてうきうきする様子から一転してお染の登場に焼き餅を焼く姿もかわいらしい。そして幕切れの尼になったお光のいじらしさ悲しさが切々として哀れ。
歌昇の久松、こういう役を見たことがなかったが、優柔不断で見ていてイラッとする男(の子と言うべきか)にちゃんとなっていて、ほうほうほう。うん、この手の二枚目似合うんじゃないかと思ってたんだよね。これからも挑戦してほしい。役の幅を広げるのは良いこと。
児太郎のお染も,いかにもお嬢様のおっとりともの知らずな様子で、でも久松が好きで好きでという感じが良く出ていた。児太郎にはお光もやってほしい。

本当は、猿之助にも中村屋兄弟にももっと古典をやってほしくて、この演目が発表になったときは不満だった。まあお互いに得意なものを大阪でも、ってことなんだろうな。次はちゃんと義太夫狂言も見せてほしい。


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木×仏像(きとぶつぞう)-飛鳥仏から円空へ [美術]

大阪市立美術館
http://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/kitobutsuzo#
仏像の中でも、木彫のものに絞った展覧会。タイトル通り、飛鳥時代のものから江戸時代までの木彫仏像を、やや駆け足ながら俯瞰できる。

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菩薩立像 飛鳥時代
横から見ると薄くてほとんど板のよう。7世紀、日本に仏教が伝わった後ごく初期に作られたと思われる。素朴でなんだかにこやかな表情が魅力的。

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重要文化財 宝誌和尚立像 平安時代(11世紀)
「中国南北朝時代の僧・宝誌は観音の化身で、割れた額の中から金色に輝く十一面観音像の姿が現れたという説話があり、本像はそれを造形化しています。」との説明。一瞬、昔のシュワちゃんの映画「トータル・リコール」を思い出した、と言ったら年がばれる。


仏像には鋳造もあるが、木像には鑿目が残っていたり,木目が生かされていたり、ほのかなあたたかさが感じられる。また、木像にも一本造りのもの、寄せ木造りのものなどの違いがあり、それも展示でわかる。

出品数は50体ほどで、それほど多くはないが、展示物のヴァリエーション、工夫された照明などで充実した展示になっている。快慶展だけでなくこちらも併せて見れば日本の仏像美術の豊かさをより感じられると思う。
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海北友松展 [美術]

京都国立博物館
http://yusho2017.jp/index.html
この日は奈良と京都の国立博物館をはしご。時間はともかく体力勝負。

桃山時代を代表する画家の一人、海北友松(1533~1615)の展覧会だが、永徳や等伯に比べると知名度ではいまいちな感じ。武家の出身で、はじめは狩野派に学んだが、名が知られるようになったのは60代で,狩野派の影響から離れてからと言うまさに遅咲き。今回は回顧展と言うことで比較的少ない若い頃の作品も出ているが、圧倒的に多いのは60代後半から。実質20年にも満たない晩年に大輪の花を咲かせ、量的にも質的にも瞠目すべき作品を残したその老年パワーに脱帽。

60代で建仁寺の障壁画の多くを任され,現存している。

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雲龍図(部分) 建仁寺大方丈
二双八幅のうち四幅。対の四幅と角を合わせるように配置されていて、両方に囲まれるように見たときの迫力と来たら。よく見ると顔はそう恐くないんだけど、手の爪が鋭くて八つ裂きにされそう。渦巻く雲の間から雷鳴がとどろくかのよう。

さらに驚きなのは、もっぱら水墨画を描いていた友松が彩色の大和絵を本格的に描くようになったのが70代と言うこと。

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重文 花卉図屏風(右隻)妙心寺
建仁寺とともに妙心寺も友松と縁が深い。「妙心寺屏風」と呼ばれる普通より高さの高い屏風を三双も手がけている。中でもこの花卉図は華やか。右隻の金箔に牡丹は華麗でありながら抑えた色味が品が良く清楚で美しい。

晩年になっても衰えぬ意欲で制作に取り組んだ友松。その最晩年の傑作と言われるのがこれ。

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月下渓流図屏風
妙心寺屏風の華やかさから,静謐で哲学的とさえ感じられるような境地にたどり着いた友松。この絵があの等伯の「松林図屏風」とも並び称されると言うのもうなずける。ほの明るい月明かりの下梅が咲き川が流れる。しかし音はほとんど聞こえてこない。深閑とした冷たい空気だけが感じられ、目を閉じると梅の香りがほんのり漂う。そんな景色。
今はアメリカの美術館所蔵で60年ぶりの里帰り。


初めて友松の作品をまとめて観たせいか、実に新鮮。力強さもあり、華麗さもあり、狩野派にも長谷川派にもない面白さも感じた。

展示は京博の新館の広さを生かし,ゆったりと間を取ってあるのと、作品が大きな障壁画が多いためせせこましくなくて見やすかった。また、最後の部屋では数枚の龍図だけを真っ暗な中に浮かび上がらせるように展示。そういう工夫も楽しい。

東京で開催されないのがとても残念。京都まで行ける人は必見。
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快慶展 [美術]

奈良国立博物館
http://www.ytv.co.jp/kaikei/

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鎌倉時代を代表する仏師の一人、快慶(?~1227以前)の展覧会。仏像展はよくあるけど、仏師一人に的を絞ったのはあまりないかも。

快慶と言えば運慶、と言うくらい運慶快慶でセットで覚えてしまってるけど、別にいつもコンビで活動していたわけではない。
また、京や奈良、あるいは鎌倉などだけでなく、広島とか栃木などにも快慶作の仏様が伝わっているのも驚き。

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弥勒菩薩立像(1189)
快慶の作でも最も早い時期のもの。ふくよかな肉付き、安定感のある体型とゆったりした衣紋。

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広目天像 和歌山・金剛峯寺
運慶快慶と言えば、東大寺の阿吽の像でしょ、と言う私のような素人には、おおこれこれ、という感じの像。どっしりした重量感、厳つい顔つき。なんともかっこいい。

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釈迦如来立像
比較的晩年の作と考えられ、春日大社ないし興福寺周辺に伝来したと推測される。写真ではよくわからないが、表面の金泥塗や截金文様が繊細でとても美しい。光背も当時のものというのも貴重。

私は特別仏像愛好家ではないので、年代による細かい違いとかはよくわからないし、正直どうでも良いんだけど、いくら工房的に集団制作していたにしても、生涯でよくこれだけ作ったなあ、とつくづく感心。美しさと力強さで御仏の心を表す快慶仏。仏像好きはもちろん、そうでない人も必見。
秋には東京で運慶展もあるそうで、これも観なきゃ。

四国こんぴら歌舞伎大芝居 第一部 [舞台]

引き続き翌日第一部を。この日は千穐楽。

1704こんぴら.jpg


一、神霊矢口渡(しんれいやぐちのわたし)
お舟    片岡 孝太郎
傾城うてな   坂東 新悟
新田義峯    大谷 廣太郎
六蔵      片岡 松之助
頓兵衛    坂東 彌十郎

孝太郎がおきゃんな娘が男に惚れてのぼせ上がる様子を愛嬌よく見せてかわいげがある。一転悲劇となっての終盤は父への必死の口説きが切々とし、瀕死の中で立ち回りながら懸命に合図の太鼓を打つ姿が健気。心の有り様がわかりやすいのは小屋での客の反応を意識しているか。
あれと全く同じ演技を例えば歌舞伎座でやったら、多分ちょっと行儀が悪いとか顔芸だとか言われるかも。でもあの小屋だと、あれくらいでちょうど良いと思える不思議さ。それは孝太郎さんだけじゃなくて、にざ様でも同じ。

彌十郎頓兵衛が強欲非道な父親。娘に対してさえ容赦のない極悪ぶり。すっかりこういう役も似合うようになったやじゅさん。
松之助の六蔵が三枚目敵のようなおかしさと軽さでさすがベテランの味。
廣太郎が神妙、新悟しっとりと綺麗。    
    

二、忍夜恋曲者(しのびよるこいはくせもの)
将門
傾城如月実は滝夜叉姫   芝雀改め中村 雀右衛門
大宅太郎光圀    尾上 松緑

スッポンから現れた雀右衛門が、拵えのせいか本当に先代に似て見えてはっとするくらい。ただ、当代は葛の葉にしろ滝夜叉にしろ「この世のものでない妖しさ」がない人で、そこは決定的に先代と違う。良し悪しでなく。この演目でも光圀に惚れたというくどきはしっとりと女らしく美しい。

松緑の光圀はきっぱりとした動きが気持ちよく、本役。今こういう役はいちばん似合う人。一つ一つ決まった姿が格好良く、手先指先まで神経の行き届いた所作が美しい。


三、お祭り(おまつり)
鳶頭松吉   片岡 仁左衛門

何をか言わんや。そこににざ様がいるだけで小屋中がぱっと華やぐ。圧倒的な輝き。それが颯爽と若い者をあしらって見せ、かと思えば恥ずかしそうに照れて見せたり、もうやることなすこといちいち胸キュンなのである。ほんと、罪作りなお人だわ。


と言うことで、今年のこんぴら歌舞伎もとても楽しかった。足やお尻は痛くなるけど、それを補ってあまりある。小屋で観る芝居は文句なしに楽しい。毎年とはいかないけど、また見に行けますように。

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こんぴー君も千穐楽ヴァージョンで袴の正装。

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四国こんぴら歌舞伎大芝居 第二部 [舞台]

金丸座

二年ぶりにこんぴら歌舞伎に行ってきた。時間がたってしまったので、あっさりレポ。

一、芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)
葛の葉
女房葛の葉/葛の葉姫  芝雀改め中村 雀右衛門
柵     坂東 竹三郎
信田庄司   片岡 松之助
安倍保名    大谷 友右衛門

始めに出てきた子役ちゃんへの客席の暖かい反応に、ええ小屋やなあ、とほっこり。
雀右衛門葛の葉はしっとりと情のこもった様子が好ましい。姫の方も可愛らしい。この人に似合いの役。でもあまり狐っぽくなかったかも。
最後の引っ込みは面灯りを使って古風に。こういう演出がこの小屋にはよく似合う。


二、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)
芝雀改め中村 雀右衛門
    幹部俳優出演
仕切りは仁左衛門。人数も少なめでこぢんまりだがその分アットホームな雰囲気。


三、新古演劇十種の内 身替座禅(みがわりざぜん)
山蔭右京    片岡 仁左衛門
太郎冠者    尾上 松緑
侍女千枝    坂東 新悟
侍女小枝    大谷 廣松
奥方玉の井   坂東 彌十郎

もうニザ様が可愛いのなんのって。そりゃあ奥方が片時も離れないはずだわ。腰元に「それなら家で行をなされませ」と言われたときの恨めしそうな顔!小屋を意識してか通常より喜怒哀楽が明瞭でわかりやすい。怖いのに可愛い彌十郎さん共々ひたすら可笑しくて楽しい。
松緑の太郎冠者も程よく可笑しく使用人の辛さを体現。新悟廣松もおっとり品の良い様子。とにかくみんな可愛い身替座禅。
戻ってきた右京が普通は「信濃の善光寺に」と言うところを「讃岐の金比羅様に」とにざ様が変えて言っていて客席大喜び。こういうのも小屋ならではの楽しさ。

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四月大歌舞伎夜の部 [舞台]

1704歌舞伎座.jpg

一、傾城反魂香(けいせいはんごんこう)
土佐将監閑居の場
浮世又平後に土佐又平光起  吉右衛門
女房おとく     菊之助
狩野雅楽之助   又五郎
土佐修理之助   錦之助
土佐将監     歌六
将監北の方     東蔵

吉右衛門持ち役の一つ又平、もう何度目だろう。今回は女房おとくが初役の菊之助で、月初は手探り感もあり、嫁は嫁でも嫁と舅みたいな感じもしたが千穐楽にはすっかりなじんでお互いを信頼し合う絆の強い夫婦になっていた。

これまで、師匠に絵の功がないから名字はやれないと拒絶され、おとくが「どもりに産み付けた親御を恨みなされ」と言うのを、だからそうじゃないでしょ、どもりだからもらえないんじゃないんだよ、って不思議に思っていた。でも又平夫婦はそれは重々承知の上だったんだ。
でも又平にすれば、絵で手柄を立てようにも「どもりの又平」ではその機会さえない。たとえどんなに腕が良くても大津絵の仕事しかもらえない。だから、名字をもらって一人前の絵師として扱ってもらえれば、ちゃんとした絵も描ける。と、師匠の考えとは鶏と卵みたいなことになっていて、だからこそ名字をもらうには師匠の情けにすがるしかないのに、師匠はやっぱり絵で功を立てないとだめという。だから「さりとてはつれないお師匠様じゃ」となるわけなのね。

そして名字がもらえない以上、一生大津絵描きで終わるしかない。貧苦も抜け出せない。もう生きていく甲斐もない。だから「死にたい」となる。
これまでは、又平が名字をほしがるのは、一人前の「人間」として扱われたいからだと思っていた。でも今回のを見て、単に人間ではなく「一流の絵師」として生きていきたいと言う又平の自負を感じた。何が今までと違うのかはよくわからないけど。

もしかしたら菊ちゃんのおとくが、ただ夫を愛しているだけではなくて、夫の絵師としての力を信じている、信頼している、と言うのが感じられたからかもしれない。夫に世に出てほしい、そのために尽くしたい、と言う愛情の強さ。夫婦の絆の強さがひたひたと胸に迫るあたたかさ。

今回の播磨屋の又平は、かわいそうな人、ではない気がする。気の毒とか哀れではなくて、又平夫婦の一途さや必死さがひたすら愛おしい。そして師匠夫婦もおそらくそう思っているのがわかる。芝居全体を貫く人間の存在の愛おしさに泣く。

歌六と東蔵が先月の「岡崎」に続いて師匠夫婦というのも面白い。
歌六の将監ももはや鉄板で,厳しくも,心の底では又平を気にかける懐の深さを十分に見せる。
東蔵はもう少し北の方の威厳があってもと言う気もするが,気立ての良さそうな奥方。

錦之助の修理助が,前髪の若者が無理なく似合う。凜々しくて行儀の良い弟子。
又五郎の雅楽之助もキビキビとして颯爽。

いやあ、やっぱりチーム播磨屋の義太夫狂言は安定感抜群。菊ちゃんもすっかり溶け込んでうれしい限り。
   
  
二、桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
帯屋
帯屋長右衛門    藤十郎
信濃屋娘お半/丁稚長吉   壱太郎
義母おとせ   吉弥
隠居繁斎    寿治郎
弟儀兵衛    染五郎
長右衛門女房お絹     扇雀

昨年1月の松竹座以来の帯屋。
藤十郎は,時々台詞が不明瞭なことがあったが、まだまだ達者なところを見せる。前半の義母のいじめにじっと耐える苦しさ、妻への申し訳なさ、いずれも本来は律儀な性格からのことと思われる風情。だが圧巻はお半が現れてからで、つい成り行きでできてしまった関係とはいえ、以前から可愛がっていた娘への複雑な感情を見せ、書き置きを見て驚き慌て、すべてを観念して後を追っていく姿に悲しみとともに、男盛りの色気がにじむのに目を見張る。はあ、若いわ、山城屋。

壱太郎が前半は長吉で三枚目のコメディアンぶりを懸命に、後半は打って変わって14歳の娘お半で,可愛らしさといじらしさ、しかしすでに男を知った体から隠しようもない女が覗く。
犯罪もののカップル。

扇雀がよくできた女房。こういう頭の良さそうな役は似合うのね。
吉弥のおとせと染五郎の儀兵衛は二人ともニンでない。ごうつく親子だが笑いも取る役なのにさっぱり笑えない。特に染五郎は可哀想なくらい。

三、奴道成寺(やっこどうじょうじ)
白拍子花子実は狂言師左近  猿之助
所化  尾上右近
同    種之助
同    米吉
同    隼人
同    男寅
同   初舞台龍生
   
文句なしに猿さんのキレッキレの踊りが楽しい。幕開きの能掛かりの荘厳な様子から一変、男と表しての軽妙さ。特に三つの面をとっかえひっかえの踊りでは外連の味も混じり、切れ味の良い踊りを堪能。
所化との踊りで右近、種と絡むのもうれしい。
初舞台の桂三さんの息子龍生君、最初の所化の並びのところで台詞もあり、一踊りもさせてもらいしっかりした様子。特に紹介はなかったけど、大向こうもかかってた。楽しそうにやってるのがなにより。
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