So-net無料ブログ作成
検索選択

六月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

歌舞伎座

一、鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
絹川村閑居の場
佐々木高綱   幸四郎
時姫       雀右衛門
三浦之助義村   松也
阿波の局    吉弥
讃岐の局    宗之助
富田六郎    桂三
おくる    門之助
長門    秀太郎

雀右衛門の時姫、去年の初演から一年あまりで一回り存在感を増し、つややかさとおっとりしたお姫様らしさは十分。松也と並んでおかしくない若々しさもあり、くどきの情のこもった様子が素敵。その一方、藤三郎に対する位取りの高さも立派。赤姫役者としての地位を確立した感がある。

それにしても京屋さんの袂芸の凄さよ。両手で袂を握ったり、袂をちょっと振ったりするだけで、いじらしさや可愛らしさがあふれんばかり。他の女形も同じ所作をやってるんだろうけど、そんなには感じないのに、あれは一体何なんだろう。なんか見ててキュンキュンするのよ。

松也の三浦之助が大健闘。凛々しい見た目はもちろん、母を慕う若者の心の弱さと気優しさがある一方で、時姫への冷淡さもあり、武将としての非情さがあってなかなか。幸四郎、雀右衛門に交じって見劣りしなかったのは立派。

幸四郎の高綱はさすがの貫禄。前半の藤三郎の方はもう少し愛嬌や軽さがほしいところだが、高綱とあらわすと舞台を圧する大きさがあり、ラスボス感いっぱい。

秀太郎の長門が気丈な老母で、短い出番ながらさすがに見せる。しかしせっかく秀太郎が出るなら、本行通りにやってほしかった。もったいないわ。

二、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
御所五郎蔵
御所五郎蔵   仁左衛門
傾城皐月     雀右衛門
子分 梶原平平  男女蔵
同  新貝荒蔵   歌昇
同  秩父重助   巳之助
同 二宮太郎次   種之助
同 畠山次郎三   吉之丞
花形屋吾助    松之助
傾城逢州     米吉
甲屋与五郎    歌六
星影土右衛門    左團次

仁左衛門の五郎蔵は、ただひたすらかっこいい。若々しい男伊達。頭領としての貫禄もありながら、一方で気が短い、浅はかさもちゃんとある。どの場面を切り取っても絵になる。反則だわ。

雀右衛門の皐月はしっとりと美しく儚げ。心にない縁切りをする胸の痛みがひしひしと伝わってくる。
京屋さん、今月は吉右衛門、幸四郎、仁左衛門と三人の大幹部に付き合う売れっ子ぶり。それだけ女形不足という事実は置いても、女形の第一人者の一画を占めるようになったのはうれしい限り。

左團次の土右衛門は手に入った様子で、ふてぶてしく憎らしげ。敵役ながら貫禄十分。

米吉の逢州が健闘。仁左衛門を止めに入って、皐月を助ける重要な役。お殿様の寵愛を受ける傾城の華と気立ての良さを見せた。最後も仁左衛門に殺される、歌舞伎ならではの殺しの場の美しさを見せる。もちろん余裕はないが、しっかりきちんと務めていて上々。

松之助の花形屋吾助が良い。仁左衛門の五郎蔵との掛け合いの間の良さ、引っ込みの剽軽なおかしさと、さすがに上手いベテランの味。
歌六の甲屋はごちそう。


三、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)
駒形茂兵衛   幸四郎
お蔦    猿之助
堀下根吉   松也
若船頭   巳之助
船戸の弥八   猿弥
酌婦お松   笑三郎
お君     市川右近
庄屋    寿猿
老船頭   錦吾
河岸山鬼一郎   桂三
清大工   由次郎
船印彫師辰三郎   松緑
波一里儀十   歌六

幸四郎の茂兵衛は前半の朴訥とした取的から後半の凄味のある男への変化が10年の歳月を物語る。それでも忘れなかった、忘れられなかったお蔦の恩に報いる茂兵衛の、姿は変わっても変わらなかった心の奥底が悲しく優しく心にしみる幕切れ。

猿之助のお蔦は、どこかで本人が薄情な人、といっていたがそんなことはないと思った。刹那的ではあっても人に優しくできる人は薄情じゃない。ただその後の生活の苦しさの中で忘れただけ。やけっぱちで自暴自棄で酒に溺れても、辰三郎だけを愛して待ち続けたお蔦の情の深さをむしろ感じた。
前半、安孫子屋の2階で見せるやるせなさと、茂兵衛への親切にのぞく心根の良さ。背中ににじむ生活苦。どれもがお蔦の真実。
一転、10年後の堅実で娘思いの良き母親ぶり。辰三郎へ尽くす実。この10年、どうやって暮らしてきたのか、ただいつかきっと亭主が帰ってくるだろうと心の底で信じていたに違いない女の切なさが見える。

松緑の辰三郎が意外にまっとうな亭主と父で、お蔦さん、帰ってきてくれて良かったねえ、と思える。

猿弥の弥八が、乱暴者で、粗忽な男を面白おかしく見せてさすがに上手い。
松也の根吉も、ちょっと頭の切れるヤクザの鋭さを見せる。
歌六の儀十が、悪人ながら貫禄があって渋くてかっこいい。

錦吾と由次郎が、のどかな田舎の風景を感じさせる。

寄せ集め感のある顔ぶれだったが、意外にこれが今月いちばんの見ものだったかもしれない。

nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

六月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

歌舞伎座

襲名だの初舞台だの賑やかだった5月に比べ、これといった話題のない今月の公演ではあったが、案外見応えのある演目が並んだ。

一、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)
縮屋新助     松緑
芸者美代吉    笑也
藤岡慶十郎    坂東亀蔵
魚惣       猿弥
魚惣女房お竹   竹三郎
船頭三次    猿之助

松緑初役の新助。
純朴で生真面目で、ただただ美代吉に惚れ込んで。手が届かないと思っていたのが、金さえ工面できれば一緒になれると思い込んでしまう男の悲しさ哀れさ。あそこの舞い上がって有頂天になるところがもっと出ると、後との落差がよくわかるようになる。最後の狂気ももっと怖さを出しても良い。すべてを失った慟哭があまりにも生々しく痛々しく、胸に突き刺さるようだった。

笑也の美代吉は、う~ん、荷が重かったかねえ。それでも月初よりはかなり上げてきたけど、気のきつい、馬鹿で嫌な女になってしまっていて、もうちょっと勝ち気ではあっても藤岡の旦那にも気に入られるような女の可愛げ、芸者の粋がほしかったなあ。

猿之助の三次は性悪だけど格好良くて、そりゃ新助がかなうわけないわなという説得力。あれで金にだらしなくなければいい男だよなあ。美代吉に金をねだって「姐はん」と甘えかかるところなんて、小ずるさ満開。

亀蔵さんの藤岡はすっきり二枚目だが若々しくて貫目に欠け、遊び慣れたお殿様という感じではない。百両ぽんと出すように見えないのが難。
猿弥の魚惣が懐深い様子。竹三郎のおかみが舞台に深みを出す。

幕切れ、上の階から見ると、昇った月が舞台の床の水に映って二重になるのがなんとも美しい。惨劇のあとの無人の舞台に月が昇る。歌舞伎の舞台として屈指の幕切れだと思う。
とはいえ、朝一に見たい演目じゃないよな。なんとかならなかったのかしら。

二、澤瀉十種の内 浮世風呂(うきよぶろ)
三助政吉   猿之助
なめくじ    種之助

初見。なめくじって何よ、なめくじって!?と思ったらほんとになめくじで。いや、なりは女なんだけど、頭になめくじのかぶり物つけてるし、着物にはなめくじって字が入ってるし、もう笑っちゃう。そしてその種ちゃんの可愛いことと言ったら。三助にスリスリすりよってくるのがまたなんとも。ピタッとくっついて踊るけど、ネチっこさはなくてむしろふわふわしてポワンとしてて。あああ、可愛い可愛い。でも最後は三助に塩をまかれて退治されてスッポンに消えちゃう。いや~ん。

猿之助の三助は、粋で格好良くて。幕開き、真っ暗な舞台に朝日が差し込み、後ろ姿の三助が浮かび上がる演出の秀逸さ。テキパキと桶を片付けたりする仕草が小気味良い。なめくじを気味悪がりながらもあしらった後は、仕方噺で那須与一や定九郎などを次々に踊りわけ、最後は若い者達が絡んで派手になる。実にキビキビとした動きが気持ちよく、いなせで惚れ惚れとさせる。20数分があっという間で、もっともっと見たいと思わせる。ほんとに猿之助は嫌になるくらい上手いなあ。

三、御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)
弁慶上使
武蔵坊弁慶    吉右衛門
侍従太郎    又五郎
卿の君/腰元しのぶ   米吉
花の井    高麗蔵
おわさ    雀右衛門

弁慶上使はこれまでおわさが中心と思っていたが、今回播磨屋弁慶でその印象は一変。登場からの姿の大きさ立派さが舞台を覆うようで、しのぶを斬ってからも、おさわの嘆きにじっと耳を傾ける姿、不運な巡り合わせへの慟哭と、人間味を見せながらもひたすら大きい播磨屋に圧倒される。娘と夫の死に嘆くしかないおわさと花の井を置いて、二つ首を抱いて、それでも先へ行かなければならない弁慶の胸の内のつらさ。すべて自分一人に引き受けて進む幕切れは、播磨屋ならではの孤独の陰と心の強さを見せて息をのむ。 いやはや、弁慶上使ってこんな演目だったっけ。とにかくでっかくてでっかくて圧倒された。

雀右衛門のおわさはやや遠慮がち。もうちょっと突っ込んで、弁慶があのお稚児さん、とわかって一瞬瀕死の娘のことも忘れる様子が強く出ると面白くなると思う。でも優しいお母さんな様子はぴったり。

米吉のしのぶが可憐で行儀良く。でも弁慶が父とわからないまま、母を案じて死んでいく姿が哀れ。

侍従太郎の又五郎が、非情さを見せるつらい立場の悲しさ苦しさをしっかり。こういうハラのいる役がしっくりくるようになってきた。
高麗蔵の花の井も武家の妻女らしい手堅い様子。


nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

ファッションとアート 麗しき東西交流展  [美術]

横浜美術館

明治以降、急速に日本に入ってきた洋装文化。反対に、西洋には日本の着物や工芸品が伝わり、ジャポニスムとしてブームともなり、洋服のデザインに取り入れられるようになった。
このようなファッションにおける和洋のデザインの交流に注目する展覧会。衣服だけでなく、アクセサリーや食器といった工芸品、さらに洋装の婦人を描いた絵画などもあって、多岐にわたる展示はどれも美しく楽しい。

明治の洋装と言えば鹿鳴館。というように洋装は上流階級から取り入れられた。特に皇室は正装が洋装に規定されて、皇后以下急速に洋装化した。

chapter02_01.jpg
「昭憲皇太后着用大礼服」1910年頃(明治末期)
大礼服だからいちばん正式なドレス。このマントの豪華さときたら、目を見張るもので、デザインと言い刺繍の細やかさといいため息もの。

chapter02_02.jpg
月岡芳年「風俗三十二相 遊歩がしたさう 明治年間 妻君之風俗」1888(明治21)年
こちらは庶民が洋装を始めた頃の絵だろうか。背景や技法は浮世絵そのままなのに風俗が洋風なのが楽しい。

chapter03_01.jpg
シャネル「イヴニング・コート」1927年頃 
こちらは反対に日本の着物にインスピレーションを受けてシャネルがデザインしたもの。色合いや、蒔絵のような織りが繊細で素敵。

chapter03_02.jpg
ルネ・ラリック「チョーカーヘッド《菊》」1900年頃
ジャポニスムの影響が見えるラリックの作品。そういえば西洋美術ではあまり菊って見ないかも。

このように、一方的に日本が西洋から輸入したのではなく、日本のモチーフや技術が西洋のファッションにも影響を与えたんだなあ、と感心。
まあそれにしてもああいうドレスは一体お値段はどれくらいだったのかしら、などと下世話なこともつい考えてしまった。刺繍とかビーズとか手の込んだ逸品もの、庶民には手が届かなかっただろうなあ。

DCrWOsjVoAAlWid.jpg large.jpg
この一画のみ撮影可能でした。奥のドレスが好きだったな。



nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

はじめての古美術鑑賞 紙の装飾展 [美術]

根津美術館
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/
img_decoratedpaper.jpg
日本美術の展覧会で書の作品が出てくると、読めないので大抵さっさと通り過ぎてしまう。歴史上の有名人直筆とかも、はあこういう筆跡なのか、と思う程度。百姓上がりの秀吉が思いがけずちゃんとした字を書いてたりとかすると、へええ、と思ったりはするけど。
なので書の展覧会にはほとんど行かない。
という私のような人間向けに、字ではなく、書かれた紙の方に着目した展覧会。

紙と言っても、もちろんただの白い紙ではない。古くから日本では紙に様々な装飾を施して、その上に字や絵を描くことをしてきた。

まず代表的なのはきら刷り。雲母(きら)を膠や布海苔に溶いて紙に刷る。見る角度によって紙がキラキラと光って見えるからきら刷り。

decoratedpaper_2.jpg
尾形切 伝藤原公任筆 日本・平安時代 12世紀 
具引き(ぐびき)・雲母摺り(きらずり)・銀泥下絵(ぎんでいしたえ)
装飾は一種類ではなく、このように数種組み合わせたものも。手が込んでる。

さらに豪華なのは金を使った装飾。これは絵画でもおなじみ。金箔、切箔(きりはく)・砂子(すなご)・野毛(のげ)・金銀泥下絵(きんぎんでいしたえ)など、金の形状で種類が分かれる。

decoratedpaper_3.jpg
百人一首帖 智仁親王筆 日本・江戸時代 17世紀
具引き(ぐびき)・切箔(きりはく)・砂子(すなご)・野毛(のげ)・金銀泥下絵(きんぎんでいしたえ)
金を使った装飾をこれでもかという程施した豪華版。こうなると、書なのか絵なのか。というくらい。

染色もある。紙全体を染めるものもあれば(これも染方がいろいろ)、「飛び雲」といって所々に色が散るようなものや、「墨流し」のように全体にマーブル模様のようなものを染める技法も。

普段、何気なく見ていた書が、こういう様々な技法で装飾されていたのを改めて見ると楽しい。挿絵や表装ではなく、あくまで下地でありながら、書と調和したり、浮き上がらせたりする料紙の美しさ、そういう美を愛でてきた感性にため息。

書に興味なくても楽しめる展覧会。
nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

六月花形新派公演 黒蜥蜴 [舞台]

三越劇場
kurotokage.jpg

原作 江戸川乱歩
脚色・演出 齋藤雅文

明智小五郎 喜多村緑郎
黒蜥蜴 河合雪之丞
雨宮潤一 秋山真太郎 (劇団EXILE)
岩瀬早苗 春本由香
片桐刑事 永島敏行

元歌舞伎役者の市川月之助が 喜多村緑郎に、同じく市川春猿が河合雪之丞となって新派に移籍してから初めて舞台を見に行った。普段新派ってあまり関心が持てなくて、今までほとんど見ていなかったんだけど、これはなんだか面白そうと思って。

とにかく、主演の二人が素晴らしく役にはまっていた。
緑郎の明智はダンディでスマート、とにかく現実にはいなさそうなかっこよさ。見ていて思ったのは、歌舞伎の二枚目と言うより宝塚の男役。女から見た理想の男。そういう明智を緑郎が嫌みなくすっきりと演じてみせる。

一方の雪之丞の黒蜥蜴も、妖しさと艶やかさで舞台を支配し、時には冷酷に、時には素顔を覗かせて女のかわいさも見せ、役にぴったり。女形ならではの造形になっていたように思う。衣装も着物からドレスまでゴージャスでよくお似合い。

二人がお互いに挑発し合い、敵対しながら惹かれ合う、メロドラマとしても見られて、最後は切ない。

乱歩の耽美的で退廃的な世界の雰囲気も良く出ていて、一方で展開はスピーディで飽きさせない。派手なアクション・シーンもあり、筋を知らないせいもあって、次はどうなるのかとわくわくしながら見ることができた。また客席通路を役者が頻繁に通ったり、歌舞伎の見得やだんまりのような演出もあって楽しい。これも二人以外にも歌舞伎から移籍した役者さん達の影響かしら。

秋山真太郎という人は初めて見たけど、一見クールで、しかし黒蜥蜴を慕う一途な男を演じてこちらもかっこいい。
春本由香は歌舞伎の尾上松也の妹で去年新派から女優デビューしたばかりらしいが、富豪のお嬢さんのかわいさと小生意気な感じがあってなかなか。
テレビではおなじみの永島敏行の刑事も存在感。

会場の三越劇場にもクラシカルな雰囲気が良くマッチしていて、最後の場面などは劇場の内装がそのまま舞台のセットのようになっていて、観客がその場にいるような錯覚にもなる素敵な美術。

普段の新派の舞台とはもしかするとずいぶん雰囲気が違うのかも。少なくとも私がイメージしている新派の古くささは全くない、とてもスタイリッシュで、まるで小劇場の芝居のようなのりの良さ。新しい新派の財産になりそう。
nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:演劇

馬琴と国芳・国貞 八犬伝と弓張月 [美術]

太田記念美術館
馬琴ちらし.jpg
今年は曲亭馬琴の生誕250年だそうで、それを記念して、馬琴の代表作「南総里見八犬伝」と「椿説弓張月」を、国芳、国貞らが錦絵に描いた物の展覧会。
江戸時代最大のベストセラーとなった八犬伝は、当時から歌舞伎になったりして、様々な二次創作を生んだ。本の挿絵はもちろん、本とは別に錦絵が作られたのもこれが初めてのことらしい。
中でも芳流閣の屋根のシーンは人気だったようで、いろいろな作品がある。

馬琴.jpg
歌川国芳「八犬伝之内芳流閣」
中心となる信乃と源八だけでなく、他の捕り手も大勢描き込まれてそれぞれのポーズや表情も細かくて楽しい。

1.jpg
歌川国貞「放龍閣之場 犬飼現八 犬塚信乃」
同じ場面でも、国貞は歌舞伎の舞台の役者絵。八犬伝はこの5月にも歌舞伎の舞台で見たので、今の役者と重ね合わせて見ると楽しい。

2.jpg
月岡芳年「一魁随筆 犬塚信乃 犬飼見八」
こちらは国芳の弟子の芳年、明治になって描かれた絵。屋根から落下する二人。絡み合う二人とともに瓦や刀なども落ちていく様子が迫真的。

同じシーンでも取り上げ方や描き方はそれぞれで面白い。

同じ馬琴でも椿説弓張月の方は、八犬伝ほどは現代では取り上げられないので馴染みは薄いが、それでも数年前に歌舞伎で上演されたので、あああの場面か、と思いながら見るのも面白かった。

3.jpg
歌川国芳「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」
国芳の作品の中でも有名な1枚。圧倒的なワニザメの迫力(鯨かと思ってた。。。)。幽霊のような鳥天狗の描写。国芳の独創性があふれる。

馬琴の小説の奇想天外さがまずあって、さらにそれをヴィジュアル化する画家達の想像力がまた凄くて、さらにそれが舞台化され、その舞台をまた役者絵にして、とどんどん発展していった様子も見えて面白い。今の漫画とアニメ、さらに実写と同じなんだな。

nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

ランス美術館展 [美術]

損保ジャパン日本興亜美術館
http://www.sjnk-museum.org/program/4652.html
20170422_poster-190x269.jpg
フランス北東部シャンパーニュ地方にある、ランス美術館のコレクションを紹介する展覧会。ランスと言われても全くピンとこないのだが、歴代のフランス国王が戴冠式を行った大聖堂があると言うことで、由緒あることなのだろう。
今回の展覧会では、17世紀から20世紀までのフランス絵画を出品。有名作家の作品もかなりあって見応えがあった。
20170422_art01.jpg
ジャック=ルイ・ダヴィッド(および工房)
《マラーの死》
ナポレオンに重用されたダヴィッドの歴史画の一枚。なんか教科書か本で見たことあるような。リアルな描写、明暗に浮かび上がるドラマチックな状況。迫力ある絵。

クールベ.jpg
クールベ 《彫刻家マルチェロ(カスティリオーネ=コロンナ公爵夫人)》
意志の強そうな女性の肖像。当時は珍しかった女性の彫刻家。

20170422_art04.jpg
ゴーギャン 《バラと彫像》(1889)
ゴーギャンにしては(?)落ち着いた色合いの静物画。でもテーブルの上の彫像はタヒチのもの?

この他、ドラクロワ、コローや、モネやピサロ、ドニなどフランス絵画の優品が並ぶ。
だが、この展覧会の見所はそれだけではなくて、レオナール・フジタ(藤田嗣治)の作品、中でも彼がランスの教会のために描いた装飾画の素描などが見られること。
フジタはランスと関わりが深く、この地で洗礼を受け、シャペル・フジタを作り、今はそこに夫人とともに眠っている。

フジタ.jpg
レオナール・フジタ
「平和の聖母礼拝堂」フレスコ画のための素描
《死せるキリストを嘆く人々 十字架降下》

3.jpg
レオナール・フジタ
《奇跡の聖母》

フジタの絵って昔はあんまり好きじゃなかったけど、この頃ちょっと惹かれる、と言うか気になる。
チラシの絵は《マドンナ》だが、聖母も周りの天使も黒人。この不思議さ。

あまり話題になっていないような気がする展覧会だけど、なかなかの充実。おすすめ。
nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

花*Flower*華 —琳派から現代へ— [美術]

山種美術館
CCF_000001.jpg

所属品から花を描いた作品だけを集めた展覧会。
古くは抱一、其一らの琳派から、現代の上村松篁、加山又造らまで。絢爛豪華な花もあれば、一輪の花もあり、四季それぞれの花はどれも美しい。

抱一.jpg
酒井抱一《菊小禽図》
抱一の描く花は好きだなあ。写実とデザインの調和がとても良い。これも菊の花が単純化されてでも茎や葉は写実的で。すっきりとまとまった構図も良い。

御舟.jpg

速水御舟「桔梗」
御舟は生涯いろいろな技法をトライした人で、この桔梗の花は絵の具ではなく墨だという。普通紺や紫で描く桔梗を潔く墨で塗ったところが新しい。

古径.jpg
小林古径「菖蒲」
様々な色の菖蒲の花を生けた壺は伊万里か。実際に見たらひっくり返りそうなバランスだが、絵にするとその不安定さも面白い。

蓬春.jpg
山口蓬春 《梅雨晴》
花と葉とそれぞれの色のグラデーションが美しい。落ち着いた色合いながら華やか。

この他、もちろん土牛の「醍醐」、大観の「山桜」など、どれも作家が愛した花の絵が並ぶ。四季折々の花が見られる日本は恵まれてるな。
また、春に見た省亭の牡丹図に思いがけず再会できたのもうれしかった。
nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

バベルの塔展 [美術]

東京都美術館
http://babel2017.jp/

オランダのボイマンス美術館所蔵のネーデルランド絵画展。メインはタイトルともなっているブリューゲルの「バベルの塔」だが、ボスの作品も重要。


1.jpg
アルント・ファン・ズヴォレ?《四大ラテン教父:聖アウグスティヌス、聖アンブロシウス、聖ヒエロニムス、聖グレゴリウス》(1480)
聖人だけど、どこか人間くさい顔つきはリアルなモデルを写したものか。衣服の細部まで丁寧に彫られた、暖かみのある彫像。

2.jpg
ヒエロニムス・ボス
《放浪者(行商人)》1500年頃
ボスの作品は寓意や暗示、暗喩に満ちていて、解説なしには理解が難しいところもある。これも、持ち物や衣服で職はないだろうとか、、後ろの建物は娼家だとか、知識がないとわからない。

3.jpg
ブリューゲル1世「大きな魚は小さな魚を食う」(1557)
ボスの寓意に満ちた作品は後の画家達に影響を与え、ブリュ-ゲルもその一人。この摩訶不思議な絵もボスの流れをくむものだろう。まるで入れ子のように大きな魚から小さな魚までが口に魚をくわえている。なぜか足の生えた魚や空を飛んでいる魚まで。ううん、なんだこれは。

こういうボスからブリューゲルへとつながる「奇想の系譜」とでも言うものが脈々と見える16世紀頃のネーデルラント絵画というのはなんてへんてこりんで面白いのだろう。でも続けてみるとちょっと辟易とするのも否定できない。

4.jpg
ピーテル・ブリューゲル1世 《バベルの塔》1568年頃
実物を見ると意外に小さい。その中にびっしりと様々な物、事、人が描き込まれていて、凄い情報量。双眼鏡持ってないと判別できない。一体どうやってこんなに細かく描けたのかとあんぐり。なんか妄執のような物さえ感じてしまう。

ボスとブリューゲル以外の作品もなかなかの見もので興味深い。



芸術新潮 2017年 05 月号

芸術新潮 2017年 05 月号

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/04/25
  • メディア: 雑誌


公式図録はやめてこちらを購入。ブリューゲルが描いたもう一枚の「バベルの塔」との比較や、あの漫画家大友克洋が描いた塔の内部の絵など、面白い。
nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート

茶の湯のうつわ展 [美術]

出光美術館
(既に終了)

チラシ.jpg
この春から茶道具の展覧会が多いが、これもその一つ。東博のように国宝、重文がバンバンあるわけではないが、幅広い種類の佳品がそろった。
東博に比べるとこちらは茶碗に重点を置いている感じ。楽焼き、萩、唐津、織部、朝鮮からの唐物ももちろん、そして東博ではほとんどなかった京焼などの色絵のものも。バラエティに富んでいるという点ではこちらの方が楽しかった。東博はちょっと「侘び寂び」にこだわりすぎの感じもしたので。

2.jpg
萩茶碗 銘 雪獅子

1.jpg
仁清 色絵扇面散文茶碗

渋い萩焼と色絵の仁清。対照的だなあ。

また江戸時代の茶人として知られる松江藩松平不昧縁の「雲州蔵帳とその美」として、松江藩の所蔵品の調べ帳とそこに載っている器のいくつかも展示。大名茶人の好みも興味深かった。

後この展覧会では抹茶だけでなく煎茶の器や、懐石料理の器も取り上げられていて、それも目に楽しかった。

私自身はお茶はやりませんが、器を見るだけでも十分奥が深くて楽しい。まあ、まだまだ焼き物の良し悪しはさっぱりわかりませんが。
nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:アート
メッセージを送る