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松竹座七月大歌舞伎夜の部 [舞台]

松竹座
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例年七月の松竹座はにざ様中心の公演だが、今年は夜の部だけの出演。

再春菘種蒔
一、舌出三番叟(しただしさんばそう)
三番叟   鴈治郎
千歳    壱太郎

見るからに福々しい(笑)鴈治郎の三番叟は、踊りはきっちりと行儀良く。もっと派手でも良いくらいだがほどよく収めていた。
壱太郎の千歳もたおやかで美しい。

通し狂言
二、盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)

薩摩源五兵衛    仁左衛門
笹野屋三五郎    染五郎
若党六七八右衛門   松也
芸者菊野     壱太郎
ごろつき勘九郎   橘三郎
仲居頭お弓   吉弥
富森助右衛門   錦吾
芸者小万    時蔵
家主くり廻しの弥助/出石宅兵衛   鴈治郎
同心了心    松之助

見終わって、言葉もない。というのが正直な感想。それくらい仁左衛門が凄かった。
幕開きの鷹揚なお侍さんの様子が可愛らしくさえあるだけに、後半の殺しの場の冷たさが胸を刺す。

心の闇と言葉で言うのは簡単だが、それをまざまざと見せてくれるニザ様。小万夫婦を訪ねて花道に出てくる横顔が逆光に浮かび上がったときのゾクッとする冷たさに、この人の心はもう死んでいると震える心地。光の消えた瞳が一瞬燃えるのは、小万の「あの人を助けて」の言葉を聞いたとき。修羅。

その鬼には誰がした、と憎しみをぶつける一方で、首をそれはそれは愛おしそうに抱きかかえて頬ずりする男は本当に鬼なのか。これを冷血鬼と呼べるのか。究極の、歪んでいたとしても愛の深さに息をのむしかない。

時蔵の小万あだっぽくて小粋な芸者の色気と、本来の人の良さがない交ぜに見えるのが良い。ほんとは源五兵衛のことだって騙したくはなかった。すべては夫のため。だから瀕死でも夫をかばう切なさが哀れ。

染五郎の三五郎も良いんだけど、個人的にはあの役にはもう少し陰がほしい。ちょっと真っ直ぐすぎる感じ。勘当受けた身の悲しさ悔しさがあるからこそ、人を騙しても金がほしいという鬱屈のようなものが感じられたらなお良かった。

松也の八右衛門、誠実で主思いの真っ直ぐさがよく見えて良い。ニザ様相手に大健闘。とても良い経験になると思う。今後に生かしてほしい。
しかしまあ、今日いちばん萌えたのは、ニザ様がマッティにほおかむりさせてやって抱きしめたとこだよなあ~。多分客全員がマッティに嫉妬したはず。

鴈治郎が強突く張りな大家をコミカルに。この陰惨な芝居の息抜き。

まあとにかくにざ様が凄かったとしか言い様がなく、細かいことは思い出せないレベル。こんなの見られて大阪の人は幸せでっせ。
この日の席は生協で安く取ってもらった、花外左のしかもいちばん後ろと言う、自分ではまず取らない席だったけど、おかげで花道を出入りするニザ様を堪能した。逆光でみえないとこもあったけど、反対に逆光に浮かび上がるお姿の陰影の神々しさに息するのを忘れそうだった。
ひょっとするとにざ様の源五兵衛はこれが最後になるかもしれない。そう思わせる渾身の舞台だった。ありがたい。
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七月大歌舞伎昼の部 [舞台]

歌舞伎座

一、歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)
曽我五郎    右團次
大薩摩文太夫   九團次
馬士畑右衛門   弘太郎
曽我十郎    笑也

右團次は以前は台詞回しが粘っこくて聞き取りづらくて嫌いだった。この1,2年急速に改善されてだいぶ良くなった。五郎は力強く勇壮だが、荒事の稚気がやや乏しい。案外理知的に見えてしまう。計算してる荒事、って感じかな。ちょっともったいない。

河竹黙阿弥 作
盲長屋梅加賀鳶
二、加賀鳶(かがとび)
本郷木戸前勢揃いより
赤門捕物まで
二代目 市川齋入襲名披露

天神町梅吉/竹垣道玄  海老蔵
日蔭町松蔵     中車
お朝      児太郎
道玄女房おせつ   笑三郎
女按摩お兼   右之助改め齊入

海老蔵の道玄は、ギラギラしていて愛嬌もなく、極悪人みたいで見ていて疲れる。この役は、悪人だけどどこか愛嬌があって憎めない奴のはずなんだけど。まだ若い海老蔵には無理なんだろう。

拾いものは右之助改め斉入のおせつ。普段は物堅いおかみさんなどのイメージだけど、崩れた色気のある女を見せていた。今後役の幅が広がるのを期待。

中車の松蔵が良い。時代物はともかくこういう演目ではすっかり歌舞伎の舞台になじんで周りからも浮かなくなった。木戸前での気っ風の良い様子も様になり、伊勢屋でのきっちりとした頭らしい分別のある物言いが道玄を追い詰める様子が説得力がある。

児太郎のお朝が可憐。
笑三郎におせつはもったいないなあ。

河竹黙阿弥 作
三、連獅子(れんじし)
狂言師右近後に親獅子の精   海老蔵
狂言師左近後に仔獅子の精   巳之助
僧蓮念    男女蔵
僧遍念    市蔵

なんでこの演目を選んだのかわからないな。親より子の方が上手いなんてね。
巳之助は前に三津五郎と連獅子を踊っている。あれから何年だろう、すっかり成長して清潔で柔らかな身のこなしが美しく、後シテの毛振りも颯爽として綺麗。ああ、もう一度お父さんと踊らせてあげたかった。
海老蔵も思ったよりはちゃんと踊っていたけど、やや腰高なのが気になる。獅子は勇壮で目力も効いて迫力たっぷりだが。
ともあれ昼夜三演目に出演の大車輪ぶりは感服するが、若いとはいえ体は大事にしてほしい。子供達のためにも、と思わずにいられない。
     

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七月大歌舞伎夜の部 [舞台]

歌舞伎座

先月夫人が亡くなった海老蔵が座頭、その上長男の勸玄君も出るとあってチケットは早々に売り切れ。
夜の部は復活と言うより事実上の新作の通し。

通し狂言 駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)

日本駄右衛門・玉島幸兵衛・秋葉大権現 = 市川海老蔵(11代目)
月本円秋 = 市川右團次(3代目)
月本祐明 = 市川男女蔵(6代目)
奴浪平 = 中村亀鶴(2代目)
月本始之助 = 坂東巳之助(2代目)
傾城花月 = 坂東新悟(初代)
寺小姓采女 = 大谷廣松(2代目)
奴のお才・三津姫 = 中村児太郎(6代目)
白狐 = 堀越勸玄
駄右衛門子分早飛 = 市川弘太郎(初代)
長六 = 市川九團次(4代目)
逸当妻松ヶ枝 = 市川笑三郎(3代目)
馬淵十太夫 = 片岡市蔵(6代目)
東山義政 = 市川齊入(2代目)
玉島逸当・細川勝元 = 市川中車(9代目)

白浪五人男にも出てくる大盗賊の日本駄右衛門とお家騒動を絡めた話。駄右衛門が主人公と言うから、義賊なのかと思っていたらそうではなくてほんとの悪人だったのが意外といえば意外。
正月の国立の復活狂言をパワーとスピードをアップして、一段品は落としたといった感じ。サービス精神はたっぷりで、忠臣蔵四段目や落人、伊勢音頭などの場面のパロディらしきものが次々に出てきてまずまず楽しめる。でも普段歌舞伎見てない人はどうかね。

海老蔵は早替わりも含め三役(事実上四役)の大車輪。いつもながら悪人ではふてぶてしさとドスのきいた様子で存在感たっぷりだが、善人側の幸兵衛では例によって所在なげというか影が薄くなるのはどうしてなんだろうね。
途中では勸玄君を抱いての宙乗り。カンカン、怖がるどころか両手振り振りまでして余裕の大物ぶりで客席はこの時がいちばん沸いていた。

児太郎が抜擢とも言える重要な役をしっかりこなす。駄右衛門の一味で、でも元は幸兵衛の女で、幸兵衛のために金を稼ごうとしていたという複雑な役を、側室に化けたり、茶屋の女将かつ傾城の姿だったり、様子を変えながら最後は幸兵衛に尽くして死んでいく純粋さが良い。悪婆っぽいところなどお父さんを思い起こさせてなかなかのもの。いやあ、よく頑張ってる。

ただ、お才の死に際の場面での海老蔵の台詞には、プライベートとかぶって、聞いてる方もつらい気持ちになってしまった。もちろん本は奥さんが亡くなる前にできあがっていたんだろうけど。。。

右團次が貫禄あるお殿様で、忠臣蔵四段目の判官のもどきも見せる。
中車が忠臣逸当と勝元で裁き役。テレビでの顔芸は封印してすっかり地に足がついた歌舞伎役者ぶり。もっとも後半の逸当のゾンビ(!)ではさすがの怪演。ただ、青隈がのらないんだなあ。
巳之助と新悟が若殿と恋人で初々しいカップルぶり。落人もどきで一場面踊るのもうれしい。
他の役者もちょっとずつ見せ場をもらって、その辺が新作、作者の苦心もうかがえる。
もうちょっと整理した方がとは思うがまあ娯楽作品としては悪い出来ではない。もちろん突っ込みどころも満載だが。
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6月その他 [舞台]

6月に見たその他のもの。備忘録として。

歌舞伎鑑賞教室
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能楽鑑賞教室
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文楽若手会
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感想はツイッターにはつぶやいたけど、ここでは省略します。m(_ _)m
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六月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

歌舞伎座

一、鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
絹川村閑居の場
佐々木高綱   幸四郎
時姫       雀右衛門
三浦之助義村   松也
阿波の局    吉弥
讃岐の局    宗之助
富田六郎    桂三
おくる    門之助
長門    秀太郎

雀右衛門の時姫、去年の初演から一年あまりで一回り存在感を増し、つややかさとおっとりしたお姫様らしさは十分。松也と並んでおかしくない若々しさもあり、くどきの情のこもった様子が素敵。その一方、藤三郎に対する位取りの高さも立派。赤姫役者としての地位を確立した感がある。

それにしても京屋さんの袂芸の凄さよ。両手で袂を握ったり、袂をちょっと振ったりするだけで、いじらしさや可愛らしさがあふれんばかり。他の女形も同じ所作をやってるんだろうけど、そんなには感じないのに、あれは一体何なんだろう。なんか見ててキュンキュンするのよ。

松也の三浦之助が大健闘。凛々しい見た目はもちろん、母を慕う若者の心の弱さと気優しさがある一方で、時姫への冷淡さもあり、武将としての非情さがあってなかなか。幸四郎、雀右衛門に交じって見劣りしなかったのは立派。

幸四郎の高綱はさすがの貫禄。前半の藤三郎の方はもう少し愛嬌や軽さがほしいところだが、高綱とあらわすと舞台を圧する大きさがあり、ラスボス感いっぱい。

秀太郎の長門が気丈な老母で、短い出番ながらさすがに見せる。しかしせっかく秀太郎が出るなら、本行通りにやってほしかった。もったいないわ。

二、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
御所五郎蔵
御所五郎蔵   仁左衛門
傾城皐月     雀右衛門
子分 梶原平平  男女蔵
同  新貝荒蔵   歌昇
同  秩父重助   巳之助
同 二宮太郎次   種之助
同 畠山次郎三   吉之丞
花形屋吾助    松之助
傾城逢州     米吉
甲屋与五郎    歌六
星影土右衛門    左團次

仁左衛門の五郎蔵は、ただひたすらかっこいい。若々しい男伊達。頭領としての貫禄もありながら、一方で気が短い、浅はかさもちゃんとある。どの場面を切り取っても絵になる。反則だわ。

雀右衛門の皐月はしっとりと美しく儚げ。心にない縁切りをする胸の痛みがひしひしと伝わってくる。
京屋さん、今月は吉右衛門、幸四郎、仁左衛門と三人の大幹部に付き合う売れっ子ぶり。それだけ女形不足という事実は置いても、女形の第一人者の一画を占めるようになったのはうれしい限り。

左團次の土右衛門は手に入った様子で、ふてぶてしく憎らしげ。敵役ながら貫禄十分。

米吉の逢州が健闘。仁左衛門を止めに入って、皐月を助ける重要な役。お殿様の寵愛を受ける傾城の華と気立ての良さを見せた。最後も仁左衛門に殺される、歌舞伎ならではの殺しの場の美しさを見せる。もちろん余裕はないが、しっかりきちんと務めていて上々。

松之助の花形屋吾助が良い。仁左衛門の五郎蔵との掛け合いの間の良さ、引っ込みの剽軽なおかしさと、さすがに上手いベテランの味。
歌六の甲屋はごちそう。


三、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)
駒形茂兵衛   幸四郎
お蔦    猿之助
堀下根吉   松也
若船頭   巳之助
船戸の弥八   猿弥
酌婦お松   笑三郎
お君     市川右近
庄屋    寿猿
老船頭   錦吾
河岸山鬼一郎   桂三
清大工   由次郎
船印彫師辰三郎   松緑
波一里儀十   歌六

幸四郎の茂兵衛は前半の朴訥とした取的から後半の凄味のある男への変化が10年の歳月を物語る。それでも忘れなかった、忘れられなかったお蔦の恩に報いる茂兵衛の、姿は変わっても変わらなかった心の奥底が悲しく優しく心にしみる幕切れ。

猿之助のお蔦は、どこかで本人が薄情な人、といっていたがそんなことはないと思った。刹那的ではあっても人に優しくできる人は薄情じゃない。ただその後の生活の苦しさの中で忘れただけ。やけっぱちで自暴自棄で酒に溺れても、辰三郎だけを愛して待ち続けたお蔦の情の深さをむしろ感じた。
前半、安孫子屋の2階で見せるやるせなさと、茂兵衛への親切にのぞく心根の良さ。背中ににじむ生活苦。どれもがお蔦の真実。
一転、10年後の堅実で娘思いの良き母親ぶり。辰三郎へ尽くす実。この10年、どうやって暮らしてきたのか、ただいつかきっと亭主が帰ってくるだろうと心の底で信じていたに違いない女の切なさが見える。

松緑の辰三郎が意外にまっとうな亭主と父で、お蔦さん、帰ってきてくれて良かったねえ、と思える。

猿弥の弥八が、乱暴者で、粗忽な男を面白おかしく見せてさすがに上手い。
松也の根吉も、ちょっと頭の切れるヤクザの鋭さを見せる。
歌六の儀十が、悪人ながら貫禄があって渋くてかっこいい。

錦吾と由次郎が、のどかな田舎の風景を感じさせる。

寄せ集め感のある顔ぶれだったが、意外にこれが今月いちばんの見ものだったかもしれない。

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六月大歌舞伎・昼の部 [舞台]

歌舞伎座

襲名だの初舞台だの賑やかだった5月に比べ、これといった話題のない今月の公演ではあったが、案外見応えのある演目が並んだ。

一、名月八幡祭(めいげつはちまんまつり)
縮屋新助     松緑
芸者美代吉    笑也
藤岡慶十郎    坂東亀蔵
魚惣       猿弥
魚惣女房お竹   竹三郎
船頭三次    猿之助

松緑初役の新助。
純朴で生真面目で、ただただ美代吉に惚れ込んで。手が届かないと思っていたのが、金さえ工面できれば一緒になれると思い込んでしまう男の悲しさ哀れさ。あそこの舞い上がって有頂天になるところがもっと出ると、後との落差がよくわかるようになる。最後の狂気ももっと怖さを出しても良い。すべてを失った慟哭があまりにも生々しく痛々しく、胸に突き刺さるようだった。

笑也の美代吉は、う~ん、荷が重かったかねえ。それでも月初よりはかなり上げてきたけど、気のきつい、馬鹿で嫌な女になってしまっていて、もうちょっと勝ち気ではあっても藤岡の旦那にも気に入られるような女の可愛げ、芸者の粋がほしかったなあ。

猿之助の三次は性悪だけど格好良くて、そりゃ新助がかなうわけないわなという説得力。あれで金にだらしなくなければいい男だよなあ。美代吉に金をねだって「姐はん」と甘えかかるところなんて、小ずるさ満開。

亀蔵さんの藤岡はすっきり二枚目だが若々しくて貫目に欠け、遊び慣れたお殿様という感じではない。百両ぽんと出すように見えないのが難。
猿弥の魚惣が懐深い様子。竹三郎のおかみが舞台に深みを出す。

幕切れ、上の階から見ると、昇った月が舞台の床の水に映って二重になるのがなんとも美しい。惨劇のあとの無人の舞台に月が昇る。歌舞伎の舞台として屈指の幕切れだと思う。
とはいえ、朝一に見たい演目じゃないよな。なんとかならなかったのかしら。

二、澤瀉十種の内 浮世風呂(うきよぶろ)
三助政吉   猿之助
なめくじ    種之助

初見。なめくじって何よ、なめくじって!?と思ったらほんとになめくじで。いや、なりは女なんだけど、頭になめくじのかぶり物つけてるし、着物にはなめくじって字が入ってるし、もう笑っちゃう。そしてその種ちゃんの可愛いことと言ったら。三助にスリスリすりよってくるのがまたなんとも。ピタッとくっついて踊るけど、ネチっこさはなくてむしろふわふわしてポワンとしてて。あああ、可愛い可愛い。でも最後は三助に塩をまかれて退治されてスッポンに消えちゃう。いや~ん。

猿之助の三助は、粋で格好良くて。幕開き、真っ暗な舞台に朝日が差し込み、後ろ姿の三助が浮かび上がる演出の秀逸さ。テキパキと桶を片付けたりする仕草が小気味良い。なめくじを気味悪がりながらもあしらった後は、仕方噺で那須与一や定九郎などを次々に踊りわけ、最後は若い者達が絡んで派手になる。実にキビキビとした動きが気持ちよく、いなせで惚れ惚れとさせる。20数分があっという間で、もっともっと見たいと思わせる。ほんとに猿之助は嫌になるくらい上手いなあ。

三、御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)
弁慶上使
武蔵坊弁慶    吉右衛門
侍従太郎    又五郎
卿の君/腰元しのぶ   米吉
花の井    高麗蔵
おわさ    雀右衛門

弁慶上使はこれまでおわさが中心と思っていたが、今回播磨屋弁慶でその印象は一変。登場からの姿の大きさ立派さが舞台を覆うようで、しのぶを斬ってからも、おさわの嘆きにじっと耳を傾ける姿、不運な巡り合わせへの慟哭と、人間味を見せながらもひたすら大きい播磨屋に圧倒される。娘と夫の死に嘆くしかないおわさと花の井を置いて、二つ首を抱いて、それでも先へ行かなければならない弁慶の胸の内のつらさ。すべて自分一人に引き受けて進む幕切れは、播磨屋ならではの孤独の陰と心の強さを見せて息をのむ。 いやはや、弁慶上使ってこんな演目だったっけ。とにかくでっかくてでっかくて圧倒された。

雀右衛門のおわさはやや遠慮がち。もうちょっと突っ込んで、弁慶があのお稚児さん、とわかって一瞬瀕死の娘のことも忘れる様子が強く出ると面白くなると思う。でも優しいお母さんな様子はぴったり。

米吉のしのぶが可憐で行儀良く。でも弁慶が父とわからないまま、母を案じて死んでいく姿が哀れ。

侍従太郎の又五郎が、非情さを見せるつらい立場の悲しさ苦しさをしっかり。こういうハラのいる役がしっくりくるようになってきた。
高麗蔵の花の井も武家の妻女らしい手堅い様子。


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六月花形新派公演 黒蜥蜴 [舞台]

三越劇場
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原作 江戸川乱歩
脚色・演出 齋藤雅文

明智小五郎 喜多村緑郎
黒蜥蜴 河合雪之丞
雨宮潤一 秋山真太郎 (劇団EXILE)
岩瀬早苗 春本由香
片桐刑事 永島敏行

元歌舞伎役者の市川月之助が 喜多村緑郎に、同じく市川春猿が河合雪之丞となって新派に移籍してから初めて舞台を見に行った。普段新派ってあまり関心が持てなくて、今までほとんど見ていなかったんだけど、これはなんだか面白そうと思って。

とにかく、主演の二人が素晴らしく役にはまっていた。
緑郎の明智はダンディでスマート、とにかく現実にはいなさそうなかっこよさ。見ていて思ったのは、歌舞伎の二枚目と言うより宝塚の男役。女から見た理想の男。そういう明智を緑郎が嫌みなくすっきりと演じてみせる。

一方の雪之丞の黒蜥蜴も、妖しさと艶やかさで舞台を支配し、時には冷酷に、時には素顔を覗かせて女のかわいさも見せ、役にぴったり。女形ならではの造形になっていたように思う。衣装も着物からドレスまでゴージャスでよくお似合い。

二人がお互いに挑発し合い、敵対しながら惹かれ合う、メロドラマとしても見られて、最後は切ない。

乱歩の耽美的で退廃的な世界の雰囲気も良く出ていて、一方で展開はスピーディで飽きさせない。派手なアクション・シーンもあり、筋を知らないせいもあって、次はどうなるのかとわくわくしながら見ることができた。また客席通路を役者が頻繁に通ったり、歌舞伎の見得やだんまりのような演出もあって楽しい。これも二人以外にも歌舞伎から移籍した役者さん達の影響かしら。

秋山真太郎という人は初めて見たけど、一見クールで、しかし黒蜥蜴を慕う一途な男を演じてこちらもかっこいい。
春本由香は歌舞伎の尾上松也の妹で去年新派から女優デビューしたばかりらしいが、富豪のお嬢さんのかわいさと小生意気な感じがあってなかなか。
テレビではおなじみの永島敏行の刑事も存在感。

会場の三越劇場にもクラシカルな雰囲気が良くマッチしていて、最後の場面などは劇場の内装がそのまま舞台のセットのようになっていて、観客がその場にいるような錯覚にもなる素敵な美術。

普段の新派の舞台とはもしかするとずいぶん雰囲気が違うのかも。少なくとも私がイメージしている新派の古くささは全くない、とてもスタイリッシュで、まるで小劇場の芝居のようなのりの良さ。新しい新派の財産になりそう。
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5月のそのほか [舞台]

ブログ書くのが追いつかなくて,記事にしなかったけど見たものあれこれ。自分の記録用に。感想は省きます。

明治座五月花形歌舞伎
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/514
1705明治座.jpg

一言だけ。いちばん良かったのは連獅子の種之助君です。はい。


5月文楽公演
http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/kokuritsu_s/2017/6045.html?lan=j
1705文楽.jpg


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氷艶 hyoen2017 ―破沙羅(ばさら)― [舞台]

5月22日(月) 夜の部
国立代々木競技場 第一体育館

hyouen.jpg
仁木弾正直則 : 市川染五郎
源九郎判官義経 : 髙橋大輔
女神稲生 : 荒川静香


岩長姫 : 市川笑也
奴江戸兵衛 : 澤村宗之助
鬼佐渡坊 : 大谷廣太郎
猿田彦後に武蔵坊弁慶 : 中村亀鶴

静御前 : 鈴木明子
瓊瓊杵尊(ににぎのみこと): 織田信成
木花開耶姫(このはなさくやひめ) : 浅田 舞
天鈿女命(あめのうずめのみこと):村上佳菜子

荒獅子男之助 : 大島 淳
奴一平 : 鈴木誠一
渋谷金王丸 : 蝦名秀太
鳶頭彰吉 : 佐々木彰生

地獄太夫:中村蝶紫
蘇我入鹿:澤村國矢
石川五右衛門:片岡松十郎
酒呑童子:中村かなめ

演奏:DRUM TAO
脚本:戸部和久
演出:市川染五郎
振付・監修:尾上菊之丞
振付:宮本賢二
振付:東京ゲゲゲイ


便宜上マイカテゴリーを「舞台」にしたけど、会場はスケートリンク。
フィギュアスケートと歌舞伎のコラボ、って何それ。わけわかんない。と公演が発表になったとき誰もがぽかーんとしてしまった。なので見る気もなかったのだが、始まってみるとtwitterは絶賛の嵐。「絶対、見なきゃ損!」という声に動かされて、最終日当日にチケットゲットして見てきました。見てびっくり。いやああ、何これ、面白い!

ストーリーは割愛するが、簡単に言えば、悪を代表して仁木弾正と岩長姫が手を組み、義経達善を代表する者達と戦いを繰り広げる。実に劇画的。
主に善側はスケーター、悪側は歌舞伎役者。でも笑也を始め染五郎らもスケート靴を履いて滑るシーンもある。えええ!

衣装担当はVOGUE JAPANで歌舞伎とも違う,でも歌舞伎をイメージはしてるかなというオリジナル。歌舞伎役者の化粧も普段とは全く違う。スケーターも裾の長い衣装の人もいて大変そう。

席は上の方だったので、表情など細かいところはわからない。広いリンクを狭しと動き、舞うスケーターの動きは圧巻。もちろん台詞はないのに、演技だけで力強さや優しさ、強さも弱さも表現する美しさに圧倒された。
特に主役義経のの高橋大輔さん、スケートはもちろん、台の上でのスケート靴を脱いでのダンスも素晴らしくて目が釘付け。
圧倒的な存在感だったのは荒川静香さん。冒頭の女神の神々しさ、二役目の悪役蛇髪姫の魅力あふれるキレキレの演技も凄かった。
個人的にうれしかったのは、昔から好きだった鈴木明子さんの静と髙橋さんの義経によるペアダンスというか連れ舞というか、が見られたこと。やっぱり明子ちゃんのスケートはたおやかで美しいわ。

先頃引退を発表したばかりの村上佳菜子ちゃんも活発な姫で躍動的。
清楚な美しさの浅田舞さん、キリリとした織田信成さん、とそれぞれ持ち味を出して見せ場があり、わーすごいすごい、スケートって楽しい、面白い、と引き込まれてしまった。

歌舞伎側はといえば、スケートを履いての動きでは太刀打ちできない(それでも滑ってるだけで感心)が、笑也と染五郎のダブル宙乗りや、染五郎の空中回転ぐるんぐるんとか、またこちらは台詞があるので歌舞伎の様式美を見せる。(いやしかし、あの髪型は何なんだ。まるで湯婆婆じゃないか。せっかくの仁木なのに)

大活躍は唯一スケート経験者の笑也さんで、裾の長い衣装をものともせず自在に動き回り、後半では毛振りまで見せる。え、笑也さんの毛振りって、歌舞伎の舞台でも見たことないんですけど。。。スケート靴履いて毛振りなんてできるものなのか。びっくり。

唯一善人側の亀鶴さん、前半はスケートしてなかったのに、後半生き返ってからスケートで滑り出したのでびっくり(笑) 弁慶の大きさがあって格好良かった。

最後は両者入り乱れての立ち回り。舞台と違ってとにかくスピード感が半端ない。その上広いリンクで繰り広げられる総力戦は迫力いっぱいで手に汗握る。

舞台装置はないので、チームラボが作り出すプロジェクションマッピングや照明が効果的に使われて、これも新しい。笑也さんの映像と滑る髙橋さんの共演というのも面白かった。

音楽もスピーカーから流れる歌もあれば、DRUM TAOと言う太鼓のグループが繰り広げる生演奏も迫力満点。

まあとにかく最初から最後まで、初めて見る面白さにあっけにとられて見入ってしまった。発表されたときは、染ちゃん頭おかしい、と思ったけど、見た後はもっとおかしいと思ってしまった。こんなの普通の頭じゃ思いつきもしないよ。妄想を妄想に終わらせず実現する染ちゃんの力に脱帽。

またやってほしいなあ、と思うけど、最初にこんなのやっちゃったらハードル高くなって難しいかも。しかも来年は高麗屋襲名だから当分は歌舞伎に専念かな。
でもとにかく、こんな素敵なもの見せてくれてありがとう、染ちゃん。皆さんに怪我がなく終わって本当に良かったわ。

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團菊祭五月大歌舞伎昼の部 [舞台]

歌舞伎座

一、梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり )
鶴ヶ岡八幡社頭の場
梶原平三   亀三郎改め彦三郎
俣野五郎   亀寿改め坂東亀蔵
剣菱呑助   松緑
奴菊平    菊之助
山口十郎   巳之助
川島八平   廣松
岡崎将監   男寅
森村兵衛   橘太郎
梢       尾上右近
六郎太夫   團蔵
大庭三郎   彦三郎改め楽善

昼の襲名披露狂言。
新彦三郎は梶原でも朗々たる美声を惜しげもなく聞かせる。爽やかで実のある武士。派手さはないが手堅くきっちりやっていて好ましい。台詞に関しては本当にいい声で聞き惚れるが、これからは緩急とか強弱とかメリハリがつくともっと良くなるかと。ずっと同じ声色ではいい声でも飽きる。美声と名調子は違う。ここが彦三郎さんの今後の課題の一つだろう。
楽善の大庭が大名らしい貫禄の中に、嫌みさをにじませる。
亀蔵の俣野が軽薄な若者らしい勢い。

團蔵が情のある老父、娘への愛情と,気概を見せる。
右近の梢が可憐。

菊之助と松緑がごちそう。特に松緑は普通は酒尽くしのところを襲名に因んだ内容で心温まる。
全体にバランスの取れたいい舞台だった。
おまけ、菊十郎さんが牢役人で元気な姿を見せてくれたのもうれしかった。
     
義経千本桜
二、吉野山(よしのやま)
佐藤忠信実は源九郎狐  海老蔵
逸見藤太   男女蔵
静御前   菊之助

全編竹本。舞台装置も普通と違っていて、竹本の前奏が終わると背景が割れて奥から静が出てくる。以前玉三郎がやったのと同じような感じか。でも玉様がやはり竹本だけでやったときは、本行通り女雛男雛がなかったが今回はあったりと全部同じではないようだった。

菊之助の静は綺麗だけれど、いまいち色気が不足。まさかに女武者を強調しているわけではないだろうが、白拍子の色気や、義経を慕う恋心などがあまり感じられなかった。
海老蔵の忠信は,颯爽として男前。でも狐の本性の見せ方が可愛くなかった。これは愛嬌で見せてほしいところ。
男女蔵の藤太はきっちり。もうちょっとはじけてもいいんじゃない、くらい。
菊海老は美しくて絵になる。でもなんかそれだけだったな、な吉野山。う~ん、未来の團菊がこれでは困る。

新皿屋舗月雨暈
三、魚屋宗五郎 ( さかなやそうごろう )
魚屋宗五郎   菊五郎
女房おはま   時蔵
磯部主計之助   松緑
召使おなぎ   梅枝
酒屋丁稚与吉   初お目見得寺嶋眞秀
岩上典蔵    市蔵
小奴三吉    権十郎
菊茶屋女房おみつ   萬次郎
父太兵衛    團蔵
浦戸十左衛門  左團次

近頃菊五郎の文七元結やこの魚屋宗五郎なんかを見ると、無性に泣ける。なんだかほんとにしみじみしてしまうんだよね。可笑しくて悲しくて愛おしくて、ほろっとくる。サラサラと流れるようで、ところどころにぐっとくる。上手いってこういうこと。まさに超一級芸術品。
時蔵のおはまも、菊五郎の息を心得てピタリと寄り添う女房振りが心地良い。やっぱりこのお二人はゴールデンコンビ。
権十郎の三吉も軽さと情があっていい案配。
梅枝のおなぎが行儀良く程がいい。
團蔵の太兵衛も手堅い。今月は石切梶原の六郎太夫と親父役二つで良い味だが、ちょっとついてしまった感はありもったいない。

眞秀ちゃんの丁稚は、一人で花道を出てきてまた引っ込んでいく大役。しっかり台詞も大きな声で言えていた。ただ月初より月末の方が台詞にちょっと癖がついてしまっていたのが気になった。誰か直してあげてほしいけど。

今年の團菊祭は、襲名だの初お目見えだの何のかんのあってもやっぱり菊五郎健在を印象づけた。親父様あっての音羽屋。まだまだ若手には譲りませんぜ、と言う自信みなぎる舞台。菊五郎万歳。

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今月の祝幕。派手さはないが品が良くて良いデザイン。坂東ご一家に似つかわしい。
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