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川端龍子展 [美術]

山種美術館

没後50年記念の展覧会。
実はこのブログのいちばんはじめの記事が川端龍子展だった。まあ偶然ですけど。

はじめ洋画家を志し、後に日本画家に転向、というのはわりと珍しいのでは。その経歴を知ってから観るせいか、日本画というとイメージする繊細な画法より、大胆な構図で大きな画面いっぱいに描かれた迫力ある絵が多い。

鳴門.jpg
《鳴門》
とにかく大きい。そしてその大画面に渦を巻く海に引き込まれそうな気がする。

香炉峰.jpg
《香炉峰》
大きすぎて、一瞬何を描いているのかわからなかった(苦笑)
戦時中に中国大陸に渡って飛行機に乗せてもらった時に見た景色を描いた絵。非現実的だが飛行機を半透明に描くことで景色の雄大さを描き出している。

こういった大きな絵は「会場芸術」と呼ばれて、はじめは龍子を批判する言葉だったらしいが龍子はそれをいわば逆手にとって、展覧会場で多くの人に見てもらう作品を描いた。

ただこういった大きな絵を見ると、構図の妙や面白さはあるにしても、写実性や色使いの美しさは二の次になっているような気がしてしまって、この人って「巧い」のかなあ、と素朴な疑問がプチッとわく。
ところが。

20170624-01.jpg
《爆弾散華》
戦争の爆撃で自宅が被災し、壊滅した様子を飛び散った草花に託して描いた。これもサイズは大きいが、繊細華麗に描かれた花々はまさしく伝統的な琳派風の花。
ふうむ、こういう絵も描ける。他にも鯉を描いた「五鱗」なども繊細な美しさがあった。
なんだかつかみ所のない人だ。

草の実.jpg
《草の実》
これは金字経に発想を得て描かれた。紺の地に金泥のみで描かれた草花が実に品が良く華麗。

また、龍子は俳句もたしなみ、自作の句に絵を添えた作品も多く展示されていて、大規模の絵とはひと味もふた味も違った親しみやすい作品が並んでいた。

正直言うと、あまりにいろんなタイプの絵があって、素人目には「龍子らしさ」が捉えられなくて、好きなタイプの絵とそうでもないのといろいろあって、まあそこも含めて面白く見ることができた。
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松竹座七月大歌舞伎昼の部 [舞台]

一、夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
序 幕  住吉鳥居前の場
二幕目  難波三婦内の場
大 詰  長町裏の場

団七九郎兵衛   染五郎
女房お梶     孝太郎
一寸徳兵衛   松也
玉島磯之丞   萬太郎
傾城琴浦    壱太郎
下剃三吉    廣太郎
役人堤藤内   寿治郎
大鳥佐賀右衛門   松之助
三河屋義平次   橘三郎
三婦女房おつぎ   竹三郎
釣舟三婦     鴈治郎
徳兵衛女房お辰   時蔵



染五郎の団七は初役だったっけ?浪速のチンピラの泥臭さは望むべくもないが、徳兵衛との立て引きや義平次殺しの見得の姿の美しさなどは良いけど、なんとなく育ちの良い坊っちゃんぽさが抜けなくて、駆け出しのチンピラというよりは、親に反抗してぐれた若者感が否めないのが辛いところ。

時蔵さんお辰は女伊達の風情で格好いい!この人はからりとした色気と粋さがあって素敵。三婦に磯之丞は預けられないと言われて、三婦に反発するところも、手強い感じではなくさらりとした中に芯の強さを出す。
松也は昼夜とも大健闘。徳兵衛もいきった若者の精一杯肩で風切ってる感じが似合ってた。後の段の団七内でお梶に偽りの言い寄りするのも観たかった。

鴈治郎はんの三婦は、この人がもうこれをやるのかという気もしたが、年は取ってもまだまだ若いもんには負けへんで、な気骨ある老侠客の勢いと、面倒見の良い人柄が見えてまずまず。
竹三郎のおつぎがさすがに上手く、浪速の侠客の女房らしい腹の据わったおかみさんぶり。

孝太郎さんのお梶はいいね。もう何回目か、すっかり自分のものにしている安心感。団七の良い女房で、良いおっかさんで。後の団七内が見たいな。やったことあったっけ。

萬太郎の磯之丞は収穫。もちろんまだまだなところもあるけど、ふにゃふにゃした二枚目の柔らかさとほのかなおかしみが感じられた。
壱太郎の琴浦もちょっと頭の軽そうな女の色気が出てくるようになってきて、二人の痴話喧嘩もなんとか様になった。
橘三郎の義平次が汚らしくて強欲で憎たらしさいっぱい。

二、二人道成寺(ににんどうじょうじ)
白拍子花子   時蔵
白拍子桜子   孝太郎

時蔵さんと孝太郎さん、ふうん、全然感じが違うんだねえ。と面白かった。玉様と菊ちゃんだと違うなりに菊ちゃんが必死に玉様に合わせてるシンクロ感があったけど、今月の二人はもっとフリーダムというか。
クールビューティとでも言おうか、清冽な美しさを見せる時蔵と、はんなりながら時折おきゃんな表情も見える孝太郎。鐘へ執着が強そうなのは孝太郎の方か。
どっちがどうとか上手く言えないけど、違うことが楽しかった。
二人がいつか単独で道成寺を踊る機会はあるだろうか。ぜひ見たいものだが。
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松竹座七月大歌舞伎夜の部 [舞台]

松竹座
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例年七月の松竹座はにざ様中心の公演だが、今年は夜の部だけの出演。

再春菘種蒔
一、舌出三番叟(しただしさんばそう)
三番叟   鴈治郎
千歳    壱太郎

見るからに福々しい(笑)鴈治郎の三番叟は、踊りはきっちりと行儀良く。もっと派手でも良いくらいだがほどよく収めていた。
壱太郎の千歳もたおやかで美しい。

通し狂言
二、盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)

薩摩源五兵衛    仁左衛門
笹野屋三五郎    染五郎
若党六七八右衛門   松也
芸者菊野     壱太郎
ごろつき勘九郎   橘三郎
仲居頭お弓   吉弥
富森助右衛門   錦吾
芸者小万    時蔵
家主くり廻しの弥助/出石宅兵衛   鴈治郎
同心了心    松之助

見終わって、言葉もない。というのが正直な感想。それくらい仁左衛門が凄かった。
幕開きの鷹揚なお侍さんの様子が可愛らしくさえあるだけに、後半の殺しの場の冷たさが胸を刺す。

心の闇と言葉で言うのは簡単だが、それをまざまざと見せてくれるニザ様。小万夫婦を訪ねて花道に出てくる横顔が逆光に浮かび上がったときのゾクッとする冷たさに、この人の心はもう死んでいると震える心地。光の消えた瞳が一瞬燃えるのは、小万の「あの人を助けて」の言葉を聞いたとき。修羅。

その鬼には誰がした、と憎しみをぶつける一方で、首をそれはそれは愛おしそうに抱きかかえて頬ずりする男は本当に鬼なのか。これを冷血鬼と呼べるのか。究極の、歪んでいたとしても愛の深さに息をのむしかない。

時蔵の小万あだっぽくて小粋な芸者の色気と、本来の人の良さがない交ぜに見えるのが良い。ほんとは源五兵衛のことだって騙したくはなかった。すべては夫のため。だから瀕死でも夫をかばう切なさが哀れ。

染五郎の三五郎も良いんだけど、個人的にはあの役にはもう少し陰がほしい。ちょっと真っ直ぐすぎる感じ。勘当受けた身の悲しさ悔しさがあるからこそ、人を騙しても金がほしいという鬱屈のようなものが感じられたらなお良かった。

松也の八右衛門、誠実で主思いの真っ直ぐさがよく見えて良い。ニザ様相手に大健闘。とても良い経験になると思う。今後に生かしてほしい。
しかしまあ、今日いちばん萌えたのは、ニザ様がマッティにほおかむりさせてやって抱きしめたとこだよなあ~。多分客全員がマッティに嫉妬したはず。

鴈治郎が強突く張りな大家をコミカルに。この陰惨な芝居の息抜き。

まあとにかくにざ様が凄かったとしか言い様がなく、細かいことは思い出せないレベル。こんなの見られて大阪の人は幸せでっせ。
この日の席は生協で安く取ってもらった、花外左のしかもいちばん後ろと言う、自分ではまず取らない席だったけど、おかげで花道を出入りするニザ様を堪能した。逆光でみえないとこもあったけど、反対に逆光に浮かび上がるお姿の陰影の神々しさに息するのを忘れそうだった。
ひょっとするとにざ様の源五兵衛はこれが最後になるかもしれない。そう思わせる渾身の舞台だった。ありがたい。
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七月大歌舞伎昼の部 [舞台]

歌舞伎座

一、歌舞伎十八番の内 矢の根(やのね)
曽我五郎    右團次
大薩摩文太夫   九團次
馬士畑右衛門   弘太郎
曽我十郎    笑也

右團次は以前は台詞回しが粘っこくて聞き取りづらくて嫌いだった。この1,2年急速に改善されてだいぶ良くなった。五郎は力強く勇壮だが、荒事の稚気がやや乏しい。案外理知的に見えてしまう。計算してる荒事、って感じかな。ちょっともったいない。

河竹黙阿弥 作
盲長屋梅加賀鳶
二、加賀鳶(かがとび)
本郷木戸前勢揃いより
赤門捕物まで
二代目 市川齋入襲名披露

天神町梅吉/竹垣道玄  海老蔵
日蔭町松蔵     中車
お朝      児太郎
道玄女房おせつ   笑三郎
女按摩お兼   右之助改め齊入

海老蔵の道玄は、ギラギラしていて愛嬌もなく、極悪人みたいで見ていて疲れる。この役は、悪人だけどどこか愛嬌があって憎めない奴のはずなんだけど。まだ若い海老蔵には無理なんだろう。

拾いものは右之助改め斉入のおせつ。普段は物堅いおかみさんなどのイメージだけど、崩れた色気のある女を見せていた。今後役の幅が広がるのを期待。

中車の松蔵が良い。時代物はともかくこういう演目ではすっかり歌舞伎の舞台になじんで周りからも浮かなくなった。木戸前での気っ風の良い様子も様になり、伊勢屋でのきっちりとした頭らしい分別のある物言いが道玄を追い詰める様子が説得力がある。

児太郎のお朝が可憐。
笑三郎におせつはもったいないなあ。

河竹黙阿弥 作
三、連獅子(れんじし)
狂言師右近後に親獅子の精   海老蔵
狂言師左近後に仔獅子の精   巳之助
僧蓮念    男女蔵
僧遍念    市蔵

なんでこの演目を選んだのかわからないな。親より子の方が上手いなんてね。
巳之助は前に三津五郎と連獅子を踊っている。あれから何年だろう、すっかり成長して清潔で柔らかな身のこなしが美しく、後シテの毛振りも颯爽として綺麗。ああ、もう一度お父さんと踊らせてあげたかった。
海老蔵も思ったよりはちゃんと踊っていたけど、やや腰高なのが気になる。獅子は勇壮で目力も効いて迫力たっぷりだが。
ともあれ昼夜三演目に出演の大車輪ぶりは感服するが、若いとはいえ体は大事にしてほしい。子供達のためにも、と思わずにいられない。
     

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七月大歌舞伎夜の部 [舞台]

歌舞伎座

先月夫人が亡くなった海老蔵が座頭、その上長男の勸玄君も出るとあってチケットは早々に売り切れ。
夜の部は復活と言うより事実上の新作の通し。

通し狂言 駄右衛門花御所異聞(だえもんはなのごしょいぶん)

日本駄右衛門・玉島幸兵衛・秋葉大権現 = 市川海老蔵(11代目)
月本円秋 = 市川右團次(3代目)
月本祐明 = 市川男女蔵(6代目)
奴浪平 = 中村亀鶴(2代目)
月本始之助 = 坂東巳之助(2代目)
傾城花月 = 坂東新悟(初代)
寺小姓采女 = 大谷廣松(2代目)
奴のお才・三津姫 = 中村児太郎(6代目)
白狐 = 堀越勸玄
駄右衛門子分早飛 = 市川弘太郎(初代)
長六 = 市川九團次(4代目)
逸当妻松ヶ枝 = 市川笑三郎(3代目)
馬淵十太夫 = 片岡市蔵(6代目)
東山義政 = 市川齊入(2代目)
玉島逸当・細川勝元 = 市川中車(9代目)

白浪五人男にも出てくる大盗賊の日本駄右衛門とお家騒動を絡めた話。駄右衛門が主人公と言うから、義賊なのかと思っていたらそうではなくてほんとの悪人だったのが意外といえば意外。
正月の国立の復活狂言をパワーとスピードをアップして、一段品は落としたといった感じ。サービス精神はたっぷりで、忠臣蔵四段目や落人、伊勢音頭などの場面のパロディらしきものが次々に出てきてまずまず楽しめる。でも普段歌舞伎見てない人はどうかね。

海老蔵は早替わりも含め三役(事実上四役)の大車輪。いつもながら悪人ではふてぶてしさとドスのきいた様子で存在感たっぷりだが、善人側の幸兵衛では例によって所在なげというか影が薄くなるのはどうしてなんだろうね。
途中では勸玄君を抱いての宙乗り。カンカン、怖がるどころか両手振り振りまでして余裕の大物ぶりで客席はこの時がいちばん沸いていた。

児太郎が抜擢とも言える重要な役をしっかりこなす。駄右衛門の一味で、でも元は幸兵衛の女で、幸兵衛のために金を稼ごうとしていたという複雑な役を、側室に化けたり、茶屋の女将かつ傾城の姿だったり、様子を変えながら最後は幸兵衛に尽くして死んでいく純粋さが良い。悪婆っぽいところなどお父さんを思い起こさせてなかなかのもの。いやあ、よく頑張ってる。

ただ、お才の死に際の場面での海老蔵の台詞には、プライベートとかぶって、聞いてる方もつらい気持ちになってしまった。もちろん本は奥さんが亡くなる前にできあがっていたんだろうけど。。。

右團次が貫禄あるお殿様で、忠臣蔵四段目の判官のもどきも見せる。
中車が忠臣逸当と勝元で裁き役。テレビでの顔芸は封印してすっかり地に足がついた歌舞伎役者ぶり。もっとも後半の逸当のゾンビ(!)ではさすがの怪演。ただ、青隈がのらないんだなあ。
巳之助と新悟が若殿と恋人で初々しいカップルぶり。落人もどきで一場面踊るのもうれしい。
他の役者もちょっとずつ見せ場をもらって、その辺が新作、作者の苦心もうかがえる。
もうちょっと整理した方がとは思うがまあ娯楽作品としては悪い出来ではない。もちろん突っ込みどころも満載だが。
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タイ展 [美術]

東京国立博物館
http://www.nikkei-events.jp/art/thailand/index.html
日タイ修好130周年記念 特別展「タイ〜仏の国の輝き〜」

古くは7世紀頃からの仏教美術を中心とした展覧会。
タイの歴史を絡めながらの展示だが、いかんせん聞き慣れない地名や王国名が並ぶのであまり頭に入ってこず、その辺は素通りに。
前に行ったアンコールワットもそうだが、あのあたりはインド文化の影響も強く、仏教だけでなくインド神教やヒンズー教の影響も入っている。
また大乗仏教が主流である日本と違い、タイでは上座仏教が主流で、仏像にもそこが反映されているとか。

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アルダナーリーシュヴァラ坐像
ウボンラーチャターニー県
プレ・アンコール時代 8 ~ 9世紀初
ヒンドゥー教の男神シヴァとその妃パールヴァティーが半身ずつ組み合わされて一体になったもの。カンボジアのクメール文化の影響が見られるという。唇の厚い顔もクメール族の特徴の一つ。

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ナーガ上の仏陀坐像
スラートターニー県チャイヤー郡ワット・ウィアン伝来
シュリーヴィジャヤ様式 12世紀末~13世紀
悟りを得た仏陀が瞑想をする間、竜王ムチリンダが傘となり、仏陀を雨風から守ったという説話に基づいてつくられたもの。日本の仏像ではあまり見ない題材。東南アジアでは、水と関係する蛇の神ナーガをとても大切にしており、このテーマの像もたいへん好まれました、とのこと。仏陀のお顔がシュッとしたイケメン。

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仏陀遊行像
スコータイ県シーサッチャナーライ郡ワット・サワンカラーム伝来
スコータイ時代 14 ~15世紀
亡くなった母のマーヤー夫人に説法するために三十三天に昇った仏陀が、地上へ降りてくる場面をあらわすとも考えられています、とのこと。
そういえば、日本の仏像で歩いてる仏陀って見たことあるかな。大体じっと座ってるかまっすぐ立ってるか、なような。
軽やかに足を踏み出す仏様、新鮮な感じ。

展示の後半では、日本とも交易があったアユタヤの工芸品や、日本との交流から生まれた日本風の刀なども。
修好は130年かもしれないが、実際の付き合いはもっとずっと昔からあったことがわかる。シャムという言葉も久しぶりに目にしたような。

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金板装拵刀
ラタナコーシン時代 19世紀
上級貴族だけが佩用するのを許された豪華な装飾の日本式の刀。
これとは違うが、日本の刀を模したような造りの太刀もあった。

各地の寺院などの写真も展示されて、中にはアンコール・ワットで見たものによく似たのもあって懐かしくなった。タイにはまだ行ったことがないが、いつか行ってみたい。
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アルチンボルド展 [美術]

国立西洋美術館
http://arcimboldo2017.jp/

ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593年)は、16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍した、イタリア・ミラノ生まれの画家。
といわれても、正直これまであまりよく知らず、果物や動物を組み合わせて人物像にした「変な絵」の画家くらいの認識だった。
確かにこの奇想天外な発想は今観ても驚きなのだが、今回実物を初めてちゃんと見ると、そのモチーフの一つ一つが実に正確に写実的に描かれていることに驚く。またこういう動植物を目にすることができたのは、ハプスブルグ家の富と権威によって集められたものを間近に観ることができた宮廷画家だったから、というのには納得。こういった絵には、皇帝賛歌の意味も含まれており、単に奇抜な絵ではなく、知的な寓意を込めた刺激的な作品だった。

春.jpg
《春》 1563年
四季連作の一枚。画面を埋め尽くす花、花、花。何でも80種の花が描き込まれているという。そのどれもが特定できる、実在の植物である。そういう図鑑的な面も備えているのか、とにかく正確なだけでなくて美しい。

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《大地》 1570年頃
こちらは四大元素シリーズから。動物をモチーフにした一枚。羊や牛、うさぎなどはもちろん、象やライオンなど当時ヨーロッパでは普通は目にすることのない動物もいる。
《春》の花以上に無理矢理並べた感はあるけど、一つ一つの動物はとても写実的で表情もリアル。

時代的にまだ静物画というジャンルは興っていないらしく、その点でも先駆者と言える。

他の作品も、どのモチーフもそれだけ取り出してみると、奇抜どころかとてもリアルで、この技術と、発想との組み合わせがなんとも異才。

他には、ダ・ヴィンチの影響が見える素描なども。
アルチンボルドの作品は油彩が10点ばかりと数は多くないのだが、四季と四大元素だけでもお腹いっぱいな感じ。でもこれがわりと初めの方の部屋で観られるので、個人的には尻すぼみな気もしてしまった。でも最後の方でまたアルチンボルドのだまし絵みたいなのが出てくるので、油断できない。

思ったよりずっと刺激的で面白かった。
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水墨の風 ―長谷川等伯と雪舟 [美術]

出光美術館
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/

水墨の風.jpg
中国から伝わった水墨画がいかに日本で発展していったかを、室町時代の雪舟から、独自の画風を屹立した等伯を中心に、江戸時代の文人画までの流れを俯瞰する展覧会。

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牧谿『叭々鳥図』中国 南宋時代
牧谿は中国の画家で、特に日本で好まれた。
素早い筆致で描かれた鳥の羽がちゃんと羽に見えるのが素晴らしい。

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画・雪舟、賛・景徐周麟『破墨山水図』室町時代
中国に渡って絵の勉強をした雪舟は、牧谿らの絵に学びながらも自分の画法を確立。
この絵の岩の描き方など、ほとんど抽象画かと思うくらいの大胆さ。

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長谷川等伯『松に鴉・柳に白鷺図屏風』桃山時代
等伯の特徴は、画面に描かれていない空気や湿り気までが見えるような気がするところ。かすれや墨の濃淡であらわされるそういった微妙な表現が面白い。

他の出品作では、この春の展覧会が面白かった雪村があったのがうれしかったし、今回初めて目にした(ような気がする)一之という画家(室町時代)の作と伝わる観音像も楚々とした姿で美しかった。

等伯から時代が下って江戸時代になると、探幽らの狩野派が王道を行くのに対し、池大雅、田能村竹田らの文人画が自由な境地を見せていくのも興味深い。

墨だけで書かれた白黒の世界だが、ある意味彩色画よりもイマジネーションを刺激する部分もあり、見飽きない。ただ、同じ白黒でも版画ではそうは思わないのは、やはり筆の運びが生み出す力なのだろうか。
とても充実した展覧会だった。
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6月その他 [舞台]

6月に見たその他のもの。備忘録として。

歌舞伎鑑賞教室
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能楽鑑賞教室
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文楽若手会
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感想はツイッターにはつぶやいたけど、ここでは省略します。m(_ _)m
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六月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

歌舞伎座

一、鎌倉三代記(かまくらさんだいき)
絹川村閑居の場
佐々木高綱   幸四郎
時姫       雀右衛門
三浦之助義村   松也
阿波の局    吉弥
讃岐の局    宗之助
富田六郎    桂三
おくる    門之助
長門    秀太郎

雀右衛門の時姫、去年の初演から一年あまりで一回り存在感を増し、つややかさとおっとりしたお姫様らしさは十分。松也と並んでおかしくない若々しさもあり、くどきの情のこもった様子が素敵。その一方、藤三郎に対する位取りの高さも立派。赤姫役者としての地位を確立した感がある。

それにしても京屋さんの袂芸の凄さよ。両手で袂を握ったり、袂をちょっと振ったりするだけで、いじらしさや可愛らしさがあふれんばかり。他の女形も同じ所作をやってるんだろうけど、そんなには感じないのに、あれは一体何なんだろう。なんか見ててキュンキュンするのよ。

松也の三浦之助が大健闘。凛々しい見た目はもちろん、母を慕う若者の心の弱さと気優しさがある一方で、時姫への冷淡さもあり、武将としての非情さがあってなかなか。幸四郎、雀右衛門に交じって見劣りしなかったのは立派。

幸四郎の高綱はさすがの貫禄。前半の藤三郎の方はもう少し愛嬌や軽さがほしいところだが、高綱とあらわすと舞台を圧する大きさがあり、ラスボス感いっぱい。

秀太郎の長門が気丈な老母で、短い出番ながらさすがに見せる。しかしせっかく秀太郎が出るなら、本行通りにやってほしかった。もったいないわ。

二、曽我綉俠御所染(そがもようたてしのごしょぞめ)
御所五郎蔵
御所五郎蔵   仁左衛門
傾城皐月     雀右衛門
子分 梶原平平  男女蔵
同  新貝荒蔵   歌昇
同  秩父重助   巳之助
同 二宮太郎次   種之助
同 畠山次郎三   吉之丞
花形屋吾助    松之助
傾城逢州     米吉
甲屋与五郎    歌六
星影土右衛門    左團次

仁左衛門の五郎蔵は、ただひたすらかっこいい。若々しい男伊達。頭領としての貫禄もありながら、一方で気が短い、浅はかさもちゃんとある。どの場面を切り取っても絵になる。反則だわ。

雀右衛門の皐月はしっとりと美しく儚げ。心にない縁切りをする胸の痛みがひしひしと伝わってくる。
京屋さん、今月は吉右衛門、幸四郎、仁左衛門と三人の大幹部に付き合う売れっ子ぶり。それだけ女形不足という事実は置いても、女形の第一人者の一画を占めるようになったのはうれしい限り。

左團次の土右衛門は手に入った様子で、ふてぶてしく憎らしげ。敵役ながら貫禄十分。

米吉の逢州が健闘。仁左衛門を止めに入って、皐月を助ける重要な役。お殿様の寵愛を受ける傾城の華と気立ての良さを見せた。最後も仁左衛門に殺される、歌舞伎ならではの殺しの場の美しさを見せる。もちろん余裕はないが、しっかりきちんと務めていて上々。

松之助の花形屋吾助が良い。仁左衛門の五郎蔵との掛け合いの間の良さ、引っ込みの剽軽なおかしさと、さすがに上手いベテランの味。
歌六の甲屋はごちそう。


三、一本刀土俵入(いっぽんがたなどひょういり)
駒形茂兵衛   幸四郎
お蔦    猿之助
堀下根吉   松也
若船頭   巳之助
船戸の弥八   猿弥
酌婦お松   笑三郎
お君     市川右近
庄屋    寿猿
老船頭   錦吾
河岸山鬼一郎   桂三
清大工   由次郎
船印彫師辰三郎   松緑
波一里儀十   歌六

幸四郎の茂兵衛は前半の朴訥とした取的から後半の凄味のある男への変化が10年の歳月を物語る。それでも忘れなかった、忘れられなかったお蔦の恩に報いる茂兵衛の、姿は変わっても変わらなかった心の奥底が悲しく優しく心にしみる幕切れ。

猿之助のお蔦は、どこかで本人が薄情な人、といっていたがそんなことはないと思った。刹那的ではあっても人に優しくできる人は薄情じゃない。ただその後の生活の苦しさの中で忘れただけ。やけっぱちで自暴自棄で酒に溺れても、辰三郎だけを愛して待ち続けたお蔦の情の深さをむしろ感じた。
前半、安孫子屋の2階で見せるやるせなさと、茂兵衛への親切にのぞく心根の良さ。背中ににじむ生活苦。どれもがお蔦の真実。
一転、10年後の堅実で娘思いの良き母親ぶり。辰三郎へ尽くす実。この10年、どうやって暮らしてきたのか、ただいつかきっと亭主が帰ってくるだろうと心の底で信じていたに違いない女の切なさが見える。

松緑の辰三郎が意外にまっとうな亭主と父で、お蔦さん、帰ってきてくれて良かったねえ、と思える。

猿弥の弥八が、乱暴者で、粗忽な男を面白おかしく見せてさすがに上手い。
松也の根吉も、ちょっと頭の切れるヤクザの鋭さを見せる。
歌六の儀十が、悪人ながら貫禄があって渋くてかっこいい。

錦吾と由次郎が、のどかな田舎の風景を感じさせる。

寄せ集め感のある顔ぶれだったが、意外にこれが今月いちばんの見ものだったかもしれない。

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