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松竹座七月大歌舞伎・夜の部 [舞台]

7月23日(月)

1207松竹座.JPG

一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
  渡海屋
  大物浦        
渡海屋銀平実は新中納言知盛       吉右衛門           
女房お柳実は典侍の局       魁 春                 
相模五郎       錦之助                 
入江丹蔵  種太郎改め歌 昇                 
亀井六郎       桂 三                 
片岡八郎       種之助                 
伊勢三郎       米 吉                 
駿河次郎       隼 人                
武蔵坊弁慶       歌 六                  
源義経       梅 玉

吉右衛門の知盛は歌舞伎座さよなら公演でやって以来約3年ぶり。まず銀平としては、親分のごとき貫禄と恰幅の良さが文句なしに大きく格好いい。
衣装を変えて知盛と顕してからは武将としての凛々しさと風格を見せる。
だが圧巻は手負いとなって戻って来てからで、「天皇はいずくにおわす」の振り絞るような声が悲痛。鬼気迫る様子で弁慶が掛けた数珠を引きちぎり、「生き替わり死に替わっても」源平は戦うのだと言ってのけた後で、帝の「(義経を)仇に思うな」という言葉と局の自害に心折れる姿が哀れ。怨霊そのものだった知盛が帝を義経に渡し(というか、取られ)、典侍局を失ってよりどころをなくして生身の人間に戻ってしまい、でもあくまで自分は怨霊だといって死んでいく矛盾が悲しくて切なくて愛おしかった。
碇を持ち上げて放り投げる姿に勇壮さ豪快さと悲愴さがあり、舞台上で確かに一つの魂が消えていくのを見て息をのみ言葉を失うほどの深い感動に幕が閉まってもしばらく動けなかった。

魁春の局も何度目かで落ち着いた様子。お柳としてはしっとりとした女房の風情、局と戻ってからは気品があり帝への情愛溢れる様子で、帝を義経に託して自害する姿に哀れさがあった。

今回、自害する局とそれを見る知盛の様子を見ていて、二人は見せかけじゃなくて本当に夫婦として暮らしてきたのかな、と思った。二人が手を伸ばしあって見つめ合う様子がこれまで見た他の舞台よりずっと深い絆に感じた。ただの同志じゃなくて身も心も繋がっていたのかなと。だったら二年間源氏への恨みだけで二人は生きてきた訳じゃない。幸せでもあったのかなと思ったら少し救われた気がする。

梅玉の義経がさすがに品のある御大将。
歌六の弁慶に大きさがあり、幕切れ鎮魂の法螺貝を吹く様子に死者への敬意が表れていた。
錦之助と歌昇が、前半はコミカルに、後半は凛々しく、上手く変身を見せた。

二・口上
昨年9月からの襲名公演での口上もこれが最後。吉右衛門さんの仕切りもこれが聞き納め。
開口一番、「ただいま海から上がって参りました」と茶目っ気を見せた播磨屋さん。以下仁左衛門さん、梅玉さんら総勢15名の豪華な顔ぶれ。
我當さんの口上がよかった。「いつも播磨屋さんの石切梶原に大庭で出させてもらって新又五郎さんが俣野ですが、又五郎さんの梶原、歌昇さんの俣野で大庭をやりたい。私の存命中に」と。ぜひぜひ。

三、道行初音旅(みちゆきはつねのたび)
  吉野山
佐藤忠信実は源九郎狐  歌 昇改め又五郎                  
静御前       芝 雀                 
早見藤太       仁左衛門

4月のこんぴらでは「四の切り」をやったが今度は吉野山で、又五郎さんの襲名披露納め。
いつもながら、余計なことをしない、すっきりとした踊りが気持ちいい。言っちゃなんだが決してハンサムな人ではないのに、とても素敵な二枚目の忠信だった。仁左様の藤太を向こうに回して見劣りしない。襲名以来、役者ぶりが上がった証拠だろう。嬉しいなあ。
狐の本性はあまり強調していない様子。なので、何となく狐と言うより忠実な犬っぽい印象だった(笑)(ほめてますよ)

芝雀の静もたおやかで品があり、又五郎との釣り合いも良い。
仁左衛門の藤太が御馳走。三枚目の役を気持ちよさそうにやって付き合い、襲名演目に華を添えた。こういうところ、仁左様って良い人だよねえ。

四、天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)
  河内山
  松江邸広間より玄関先まで                
河内山宗俊       染五郎                
松江出雲守  種太郎改め歌 昇                 
宮崎数馬       隼 人               
重役北村大膳       吉之助
腰元浪路       米 吉             
家老高木小左衛門       錦之助

染五郎の河内山は初役。ん~、残念ながら河内山って難しいんだね~、と痛感する出来。お父さんや叔父さんのをよくコピーしてるのに、本物に程遠い。スケールの問題なのか、ニンが合わないのか…。台詞が平板な上にずっと高止まりだから、聞いてて疲れるし飽きてくる。だからドスも効かないし。がんばってるのはわかるけど。まあ、次に期待。

それより見物は歌昇の松江侯。気が短くて思慮に欠ける馬鹿殿ぶりが予想以上にはまっている。染五郎の河内山との一騎打ちでも引けを取らない。襲名披露は踊りが多かったが芝居でも一回りも二回りも大きくなった。おばちゃんはうれし涙。

これまで数馬をやることが多かった錦之助が出世して高木。誠実な人柄が出た。
数馬にはその息子の隼人。若々しく凛々しい様子が上々。
浪路は米吉。こちらも初々しい様子が愛らしい。(殿様に斬られそうになってプルプルって震えてる様子がウサギみたいで可愛かった~)
この二人だと、数馬君はほんとはきっと波路ちゃんに惚れてるんだよ、とか思ってしまった(笑)
大膳は吉之助。憎々しさはいまいちだが手堅い。

今月の演目の中ではこれが唯一いわば花形歌舞伎の趣。吉・仁左の大舞台を見た後では点が辛くなってしまったが、若手のがんばりが楽しかった。

SN3N02190001.jpg
この祝幕もこれで観納め。

歌昇君も又五郎さんも去年の9月以来ほんとにがんばってこられたと思う。心からお疲れさまとお祝いを申し上げたい。そしてさらなる飛躍を期待しています!
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