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吉村芳生展 [美術]

東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201811_yoshimura.html
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吉村芳生(1950~2013)の回顧展。
といっても私はこの展覧会で初めて名前を知った。
チラシを見た時は「新聞紙に自画像?なんで?」と思ったが、これが新聞紙の紙面から全部鉛筆一本で書き写したと知って驚愕。写真はもちろん広告も全ての文字も自筆なのだ。これ以外もほとんど全て鉛筆や色鉛筆で描いた作品。執念というか、頭おかしいんじゃないの?な世界。

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ジーンズ(1983)
写真に撮ったものを拡大しマス目を引いて、写真の濃淡に忠実に斜線をひたすら引いていく気の遠くなるような作業で描かれたもの。そう、描いてあるんですよ、写真じゃなく。一線一線手で。想像しただけでめまいがする。

こういったモノトーンの作品を(自画像含め)作り続けた後、出身地の山口に戻ってから今度は色彩溢れる花を描くようになる。ケシ、コスモス、藤。。。
「ジーンズ」のように写真をそっくり写すのではないが、色鉛筆を使って升を埋めていく作業に違いはない。例えば一眼レフで撮った写真のバックのぼやけたような感じまで描き出されている。

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無数の輝く生命に捧ぐ(2011-13)
横7メートルを超す大作。これも実際の藤棚を写真に撮ったものを元に描いているが、写真そのままではない。だが花びらから蔓、葉の一枚一枚まで精緻に描かれた絵には執念さえ感じる。
実はこれは東日本大震災のあとに描かれ、花の一つ一つが犠牲者を表すものだという。鎮魂ということだろう。

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コスモス(2013)
絶筆となった作品。余白の部分にはマス目がひいたままになっていた。

最後まで描き続けた新聞と自画像シリーズも、対照的なこの花のシリーズも執念というかある種の妄執というかいっそ狂気というかさえ感じてしまうが、とにかく凄いとしか言い様がない。どの作品もけして小品ではない。どれほどの労力が要っただろう。

さらに「新聞と自画像 2009年」では、休刊日を除く364日、毎日毎日新聞紙(この時は新聞は自筆ではない)の上に自画像を描くという課題を自分に課してやり通した。毎日記事に反応して表情が変わる。これも圧巻。(ついつい、記事を読んでしまって、こんなこともあったな、と思いながら見てしまった)

惜しくも2013年に急逝。こんな根を詰める作業をしていたら命も縮めただろうなあ、などと思ってしまった。
とにかく必見の展覧会。
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