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「通し狂言 霊験亀山鉾」 [舞台]

国立劇場大劇場
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久々の仁左衛門の国立出演は悪役二役。

藤田水右衛門・古手屋八郎兵衛実は隠亡の八郎兵衛 = 片岡仁左衛門(15代目)
大岸頼母 = 中村歌六(5代目)
石井兵介・石井下部袖介 = 中村又五郎(3代目)
石井源之丞 = 中村錦之助(2代目)
源之丞女房お松 = 片岡孝太郎(初代)
若党轟金六 = 中村歌昇(4代目)
大岸主税 = 中村橋之助(4代目)
石井家乳母おなみ = 中村梅花(4代目)
僧了善・縮商人才兵衛 = 片岡松之助(4代目)
丹波屋おりき = 上村吉弥(6代目)
掛塚官兵衛・仏作介 = 坂東彌十郎(初代)
芸者おつま = 中村雀右衛門(5代目)
石井後室貞林尼 = 片岡秀太郎(2代目)

何年か前、松竹座で見ている演目だが断片的にしか覚えてなくて、気分はほとんど初見(苦笑)。
仁左衛門の水右衛門は極悪人。血も涙もないとはこのこと。卑怯卑劣な手段で情け容赦なく善人側の人々を次々に手に掛ける。7月の「盟三五大切」の源五右衛門のような情状酌量の余地も全くない、真っ黒黒の悪人。それをにざ様は実に楽しげにやっていて、そのニヒルなほくそ笑みが惚れ惚れするほど格好いい。もう一役の八郎兵衛の方はちょっとコミカルな面もあるが悪人に変わりなく、芸者おつまに惚れてチャリめいたところも見せるが(この軽みがまた絶妙)、水右衛門に加担して悪事を働く。正直言うと、二役両方悪人より、一役は善人だったりした方が見る方は面白いのだが、今回はにざ様の悪の魅力たっぷりと言うことでまあ良いか。それにしてもにざ様、悪役好きなんだなあ、ほんとに楽しそうだったわ。

錦之助が絵に描いたようなクズ男。金なし力なし。でも女にはもてる。妻がいるのに仇討ちの旅に出たはずが芸者といい仲。あっさりにざ様に返り討ち。端から見るとどうしようもないクズなんだけど、許されちゃう優男。こういうのやらせたら今右に出る者がいないんじゃないかという錦之助さん。

孝太郎がその妻で、身分が低く源之丞の家から認められない悲しさと、それでも気丈に振る舞い、最後は夫に代わって敵を討つ心の強さを見せる。
雀右衛門が芸者おつま。こちらも源之丞につくし、敵捜しに協力して、結局殺されてしまうかわいそうな女。本水の中での仁左衛門との立ち回りも見せ活躍。

秀太郎が源之丞の母で、武家の後室らしい凜とした様子に自分を犠牲にして孫の病気を治す慈悲深さを見せてさすがに締める。
彌十郎が悪人と善人二役で幅の広さを見せた。
吉弥が水右衛門に加担する女将。色気もあり、小狡さもある様子がうまい。
又五郎が誠実な下僕でニン。
最後は歌六が裁き役で締める。

今回、雀右衛門に歌六、又五郎と播磨屋組が脇を固めたことで、仁左衛門に余裕が生まれたように見え、周りに花を持たせる部分もありながらなおかつ仁左衛門ががっつり美味しいところは持って行くという舞台だったように思う。
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驚異の超絶技巧展 [美術]

三井記念美術館
http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

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3年前、明治の超絶技巧を集めた展覧会をやった三井記念だが、今回は明治だけでなく、現代のアーティストの作品も取り上げて、超絶技巧の継承にも目を向けた。

明治の方は、前回も並んだ作家が多い。七宝の並河靖之に濤川惣助、漆工の柴田是真。牙彫の安藤緑山。明珍の自在、陶器の宮川香山ももちろん。どれもあらためて観ても、どうやって作ったんだろう、と呆れるような凄い技術。

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並河靖之 蝶に花の丸唐草文花瓶
虫眼鏡が必要なくらいの細かい柄。これを、それも有線の七宝で。呆れてため息がでる。

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柴田是真 古墨型印籠
どう見たって墨でしょう、これ。ところが漆工なんだと言うから驚き。是真はこう言うだまし絵的な作品が得意でどれもしゃれていて楽しい。

現代作家も負けていない。現代なんだから、コンピューターとか使って作っちゃうのかな、と思ったがとんでもない。どれも気が遠くなるような手作業なのは明治と一緒。ただ使う材料などはやはり今風なのもあったけど。著作権もあると思うのでここには写真は上げませんが、三井の公式サイトをぜひ見てみて下さい。びっくりですよ。

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高橋賢悟 「origin as human」
これは撮影可能だったもの。生花を型取りしてアルミニウムで鋳造するのだという。それは細かい。気が遠くなりそう。

ただ、ふと思ったのは、明治の作品は多くが花瓶なり、香炉なり、そもそもは実用目的で作られていたが、現代のこう言う作品はいわばオブジェでほとんど使い道はない。そこになんとなく先行きの見えない感じがあり、そう「売れる」ものじゃないんじゃないのかな、と余計な心配をしてしまった。


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江戸の琳派芸術展 [美術]

出光美術館
http://idemitsu-museum.or.jp/exhibition/present/
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尾形光琳と、光琳に私淑した酒井抱一とその弟子の鈴木其一の展覧会。

抱一は光琳に直接師事したわけではない。だが光琳の作品に傾倒し、光琳に憧れて光琳に倣った作品を描き続けた。

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風神雷神図屏風 酒井抱一
光琳、宗達が描いた風神雷神図を抱一も描いた。ほとんど同じだけど少しずつ違う。

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八ツ橋図屏風 酒井抱一
根津美術館所蔵の光琳の燕子花図屏風は、橋を描かず燕子花だけを一面に置く。光琳に比べると抱一の方がバックの金箔も控えめで、全体の色もややソフト。保存状態の関係かもしれないけど。光琳の方がシャープな印象。

抱一は今のところ多分日本の画家ではいちばん好きなんじゃないかな、と言うくらい好きなので、どの作品もどの作品も素敵でため息。抱一の絵は光琳や宗達の京琳派をさらに風通し良くして粋にしたような洗練を感じる。

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四季花木図屏風 鈴木其一
其一はなんとなくだが、光琳より宗達に親近感があったんじゃないかなあ、と思う絵が多い。師の抱一から受け継いだものをさらに写実よりもデザイン性の強い風にしていったように感じる。この屏風などは、全く違うんだけど、宗達の蔦の細道図を思い起こして観ていた。

個人的には、光琳と抱一の紅白梅図が並べて観られたのが最大のツボ。
屏風のような大きなものから掛け軸、扇面のような小品までどれも美しく、見応えのある展覧会。
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運慶展 [美術]

東京国立博物館

春には奈良で快慶展、秋は東京で運慶展。「運慶・快慶」となんとなくセットにされて覚えていたけれど、別にいつも一緒に共作していたわけではないんだな。

今回は奈良の興福寺中金堂再建記念の展覧会と言うことで、興福寺に縁の仏像を中心に、31体現存すると言われる運慶作の仏像のうち、22体が揃う。
父の康慶の作品に始まり、運慶が21才頃に作った最初期の仏像も。

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八大童子立像のうち恵光童子・制多伽童子
鎌倉時代・建久8年(1197)頃
和歌山・金剛峯寺蔵
八体のうち六体が運慶作だそうで、今回その六体とも展示。
どれも童子らしい幼さの残る、しかし力強い表情が魅力的。

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無著菩薩立像・世親菩薩立像(むじゃくぼさつりゅうぞう・せしんぼさつりゅうぞう)
運慶作
鎌倉時代・建暦2年(1212)頃
奈良・興福寺蔵
美術の教科書にも載ってたなあ、と思いながら実物の意外な大きさにも驚く。2メートル近い。リアルに刻まれた表情は力強い世親、慈愛深い無著と対照的。
今回は特にこの両像を取り巻くように四天王立像を配置。これは最近の調査で運慶作ではないかと言う可能性が出てきたとのこと。そう思って見るとさらに興味深い。

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興福寺南円堂四天王の一つ、多聞天立像
確かに運慶作と言ってもいい力強さと、衣装の細かい装飾まで見事に表現された技。

後半では、運慶の息子らと周辺の仏師達の作品が並ぶ。
中で、十二神将立像が42年ぶりに一堂に揃うのが見もの。これも運慶作の可能性があるらしいが未確認とのこと。

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十二神将立像(じゅうにしんしょうりゅうぞう)のうち 亥神
京都・浄瑠璃寺伝来
鎌倉時代・13世紀
格好いいなあ、十二神将。仏像の中でいちばん見ててアガル。それぞれ身につけてるものが違うのも楽しい。頭に付いてる干支もチャーミング。

だがこう言う格好いい仏像の中にあって、ユーモラスさでダントツなのはこちら。
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天燈鬼立像・龍燈鬼立像(てんとうきりゅうぞう・りゅうとうきりゅうぞう)
康弁作(龍燈鬼立像)
鎌倉時代・建保3年(1215)
奈良・興福寺蔵
いや、これあかんやろ。可愛すぎるわ。何なのこの顔。この体型。これほんとに灯籠として使ったのかしら。康弁は運慶の息子の一人。

父の康慶から息子、弟子達までの「慶派」の流れを間近に見られる。個人的には、快慶の作品の方にたおやかさを感じて好きだけど。(と言うほど詳しくもないが)

今回に限らず、東博の展示は照明が凝っていて、会場全体は暗めにして像にスポットライトが当たるような感じで仏像が浮かび上がる。賛否両論あるようだが、ドラマティックな感じはする。
なんにしろ、普段所蔵されてるお寺に行ってもそう近くまでは寄れないが、触れそうなくらい近くで、しかも360度観られるのはありがたい。
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上村松園―美人画の精華―展 [美術]

山種美術館
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2017/uemurashoen.html

館所蔵の松園作品全18点を一挙に展示、同時に浮世絵から昭和までの美人画の数々を並べる。

考えてみると不思議なことに、松園が描く女はほぼ江戸時代かそれ以前の女だ。着物を着て髷を結う。でも浮世絵の美人画とは全く違う。清楚で品があって美しい。松園ご本人が「一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところのものである」と語っているとおりである。

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上村松園 《つれづれ》
本を読む若い女性。顔だけでなく、着物や髪飾りも松園の美学。

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上村松園 《砧》
能「砧」に基づく、夫の長期の留守の寂しさに耐える女。でも感情を露わにはしない。ひっそりと悲しみを押し殺しているような。

そう、松園の女達は感情をむき出しにはしない。笑顔すらそっと微笑む程度。
描かれているのはほとんどが歴史上の人物などではなく、市井の女性なのだが、町娘のような女でもどこか現実味がない、手の届かない、空想上の女に見える。その現実味のなさこそが、実在しない理想の女という風に見えて、見るものの心を惹きつけるのかもしれない。

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上村松園《蛍》
これなんか、どこにでもいそうな女性のありふれた日常の一瞬を切り取っている。凄い美人でもないかもしれない。でもやっぱり理想化された絵という印象。

この展覧会では、松園以外の作家の作品も展示。浮世絵の春信や歌麿、近代の春草や清方、深水、現代の珠子や遊亀。。。技法や画風の違いはもちろん、「美人画」の捉え方の変化も感じられる展覧会。
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月岡芳年 月百姿展 [美術]

太田記念美術館

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8月の妖怪画展に続いての芳年特集。今月は月をテーマにした「月百姿」全点を展示。
こちらは芳年最晩年の作品。芳年が達した芸境を見ることができる。

実在の人物、歴史上の人物、物語の一場面、、、月をモチーフにしながら、月が大きく描かれたものもあればほんの小さく見えるばかりのものもある。そういった月の取り上げ方もそれぞれ美しく、楽しい。

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玉兎 孫悟空
これは月がいちばん大きく描かれた一枚。まん丸なお月様にうさぎと孫悟空の取り合わせが楽しい。


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はかなしや波の下にも入ぬへしつきの都の人や見るとて 有子
これは水面に映る月。波に揺らぐ様子が繊細で美しい。

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烟中月
火消しの背中を大きく描いて、炎の中に浮かぶ月はうっすら。粋な構図。

取り上げられている場面には、能や歌舞伎にも出てくる話があったり、源氏物語や源平の物語など有名なものもあれば知らないものもある。昔の人はこれらの絵を見て、あれね、ってわかったんだろうなあ。

妖怪図の方がインパクトは強いけど、じっくり見たい絵はこちらの方が多かった。
最終日に駆け込みで行ったけれど観られて良かった。
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秀山祭九月大歌舞伎 夜の部 [舞台]

歌舞伎座
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一、ひらかな盛衰記(ひらがなせいすいき)
逆櫓
船頭松右衛門実は樋口次郎兼光  吉右衛門
漁師権四郎     歌六
お筆      雀右衛門
船頭明神丸富蔵   又五郎
同 灘吉九郎作   錦之助
同 日吉丸又六   松江
松右衛門女房およし   東蔵
畠山重忠    左團次

9年ぶりの吉右衛門の樋口。もうどこをとっても素晴らしいの一言。
前半、松右衛門としての台詞は世話物らしいくだけた調子で梶原に呼び出された件を物語る。明るく屈託のない様子。眼目は二度目の出で、樋口と顕すところから。戸口から外をうかがいながら「権四郎、頭が高い」の圧倒的な威圧感。それがまた権四郎に頭を下げての「親父様……」でまた少し世話に戻って許しを請う語り口に真摯な情がこもり、侍の樋口と、婿の松右衛門が行ったり来たりしながら心情を表していく、その表現の的確さと深さ、人間のあたたかさ大きさ、ただ聞き惚れる。
後半の立ち回りは、さすがに体の衰えも垣間見えるが、堂々たる威丈夫ぶり。捉えられた無念、畠山の武士の情けに感じ入る広やかさ、そして若君を助ける権四郎の情への感謝。そこにいるだけで、ただただ大きくて立派でかっこいい。

歌六の権四郎がまた素晴らしい。一徹で孫への愛情が深く、故にお筆が許せず怒りにまかせて若君を討とうとする…その怒りと悲しみの深さ激しさが胸を刺す。それが松右衛門が樋口とわかっての納得と、それでも諦めきれない悲しみが、笈摺の始末のくだりにあふれ出す。

雀右衛門のお筆、ひたすら若君大事の忠義心にあふれる。忍の一字のつらい役どころ。槌松を死なせてしまった申し訳なさと、なんとかして若君を取り返したい気持ちのせめぎ合いに苦悩する様子がひしひしと伝わる。しとやかな中に心の強さを見せる武家女らしいキリッとした雰囲気もあって素敵。

東蔵のおよしも人の良さそうな、女房で母で、また父の世話をする娘で、かいがいしい様子に子供が死んだと知った嘆きの哀れさが大げさでなく伝わる。

とにかくこの四人のアンサンブルが素晴らしく、チーム播磨屋の面目躍如。
いつも同じ顔ぶれってつまらない、とも思うけれど、やはりおなじみだから生まれる空気感もあって、今回のような舞台はこの顔ぶれだからこそとも思えた。

昼の幡随院と言い、夜のこれと言い、今この舞台を見られたことに感謝。

あと、船頭に逆櫓を教える場面では遠見の子役を使った。この子役さん達が達者だったことも記憶しておきたい。

二、再桜遇清水(さいかいざくらみそめのきよみず)
桜にまよふ破戒清玄
新清水花見の場
雪の下桂庵宿の場
六浦庵室の場
清水法師清玄/奴浪平  染五郎
桜姫    雀右衛門
奴磯平   歌昇
奴灘平   種之助
妙寿    米吉
妙喜    児太郎
大藤内成景   吉之丞
石塚団兵衛   橘三郎
按摩多門    宗之助
荏柄平太胤長   桂三
千葉之助清玄   錦之助
山路    魁春

吉右衛門が松貫四の筆名で書いた清玄桜姫ものの狂言。初演再演では自分が演じた役を染五郎に譲った。新作とは言えオーソドックスな歌舞伎で、知らずに見たら古典と思うかもしれない。あくまで歌舞伎は江戸の空気を伝えなくては、と言う吉右衛門らしい作品ではある。

染五郎が奴と破戒前後の清玄という実質三役を生き生きと言うよりノリノリでやっていて、なんだかとても楽しそう。吉右衛門の実演は見ていないのだが、染五郎への当て書きじゃないのかと思うくらい。特に最後の破戒した清玄の鬼気迫る様子は見もの。

雀右衛門の桜姫と錦之助の清玄が似合いのカップル。しかしまあ、お姫様の無邪気な恋は災いを呼ぶのは常としても、さすがにこの僧清玄からの祟られ方は、身から出たサビとは言え可哀想。

魁春が桜姫に仕える腰元で、ある意味この人の策略がすべての元凶と言えなくもないのだが、しれっとやっちゃう感じが魁春さんらしいと言うかなんというか。この人って意外に巧まざる可笑しさがあるんだよね。

歌昇・種之助がそれぞれ奴で活躍。
児太郎と米吉は僧清玄に仕える小姓で、破戒した後も世話をする健気さ。でもあまりのお師匠様の破戒ぶりに行く末を儚んで身を投げちゃうと言う、哀れな二人。でも可愛かったな。

最後の「ええ、ここで終わるのか!」な点を始め、突っ込みどころはいろいろあるが、染ちゃんにはぜひ持ち役にして納涼ででも再演してもらいたい。


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